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37-2 精霊の護り手に懐くもの

 次の日にも、その子はやっぱり来ていた。

 よく観察すると、物陰からファルを目線で追いかけているようだ。

 憧れというか、なんというか。

 そんな感じの目付きで。


 魔物にも、やはりロス信仰みたいなものがあるのだろうか。

 あるいは神聖エリオンは、俺のように魔力ではなくファルスの祝福を放射しているのかもしれない。

 あれって魔物から見えるのかな?


 俺は祝福の力を持った精霊の鎧を展開してみた。

 すると魔物は逃げないで、じっと視ている。

 そして霊翼をパンっと出してやったら、シュパっと逃げていった。


 俺は思わず笑ってしまった。

 本当に犬の習性そのままだなあ。

 棒切れを頭の上に持ち上げると、犬から見て急に相手が大きくなったように見えるというあれだ。


 でも、すぐに戻ってくる。

 どうやらファルを探しているようだ。


 しょうがないのでファルを連れてきてやった。

 その子はじっとこっちを見つめている。

 なんだか、とてもうずうずしているようだ。

 でも何か踏ん切りがつかない感じで。


「あの子はファルと一緒に遊びたくないのかなあ」


 ちょっと悲しそうにファルが溢した。


「まだおチビみたいだし、そのうちに寄ってくるんじゃないかな。

 あいつは、お前の事が目当てらしいぞ」


「そっか。じゃ、待ってる」


 それから魔物の子の方に向き直ってファルは言った。


「おーい。

 後で一緒に遊ぼうねー。

 今はバイバイ」


 そう言ってから、ファルは走って行ってしまった。

 魔物の子は、それをちょっと切なそうに見送っていた。

 それでも、こっちには入ってこなかった。


 その日から、奴は俺をロックオンするようになった。

 朝に箒を持っていると、ちょこちょこと後をついてくる。

 かなり近くまで寄ってくるようになった。

 害を加えられないというのが、わかるのだろう。


 日本にいた頃、マンションに凄く警戒心の強い人間嫌いの犬がいたのだが、エレベーターで一緒になった時も俺が触ろうとした事が一度もないので、十数年もの間、俺はそいつから一度も吠えられた事はなかった。

 きっと最期までそうだったろう。


 その魔物の子も無闇に逃げなくなった。

 極力、うちの子に接するのと同じように笑いかけてやるようにする。


 ロスコーのブラウンゴブリンに言わせると、俺の魔力は優しい感じで尖がっていないので、そう怖くはないのだと。

 初めの頃に荒野を旅して心が荒んでいた時なら、それも違っていたかもしれないとも思うが。


 もしかすると、あのカメラポッドの魔力が俺の物と同じなので、少し心を許してくれているのかもしれない。

 だいぶ遊んであげてオヤツもやったしな。


 園の中に入ると、そろーっという感じでついてきた。

 他の子がいるので人見知りして、おっさんの服の端を掴むようになった。

 トレーナーなんで掴みやすいし。


 そのまま、あっちこっち案内してやるような感じで園内をぶらぶらした。

 いろんな人と挨拶したり立ち話をしたり。

 魔物っ子はそれを見上げながら、じっと俺の事を観察していた。


 食堂で一緒に御飯も食べて、料理長のランドさんが優しく頭を撫でてくれたが嫌がらなかった。

 きっと全身から御飯の匂いがするからだろう。


 初めてケモミミ園に来る子は大概こんな感じなので、彼らも手慣れたものだ。

 この子がケモミミではないのを不思議がるくらいのもので。


 子供達が色々な道具や玩具で遊んでいるのを興味深く観察しているようだ。

 目には知的好奇心が溢れていた。


 そろそろいい頃合いかなと思って、ひょいっと抱き上げてみた。

 こういう事はタイミング一つなので、何十人もそうしてコミュニケーションを取ってきた俺は、もう手慣れたもんだ。


 魔物の子供は驚いたようだったが、特に暴れたりはしなかった。

 そしてファルにするように、優しく優しく、魔力を少量注いでやった。

 すると魔物の子は、ちょっと嬉しそうに俺の鼻をきゅっと摘まんだ。

 俺も思わず笑顔になる。


 しばらく連れ歩いていて、ハッと気がついたら魔物の子は、いつの間にか他の子と一緒に遊んでいる。

 害は無さそうなんで、もうそのままにしておいた。


 食事の傾向は見させてもらった。

 見かけた小動物さえ捕食していなかったから、子供達に危害を加えたりはしないだろう。

 肉も食べないようだったし。

 それに、ここでは御飯にだけは不自由しないしな。

 食事の肉抜きについても料理人さん達に配慮を御願いしておいた。


 どうやら言葉は喋らないようだ。

 新しく来た子達の中には、最初はそういう感じの子もいるので、うちの子達も皆いちいち気にしたりはしない。

 だから、あっさりと馴染んだようだ。


 真理や警備の連中には、その辺の話も言ってあるので大丈夫と思うが。


 初めて見る物尽くしで、魔物っ子も笑ったり驚いたりと喜怒哀楽はかなり激しい。

 もうすっかりと慣れて、夜もケモミミ園の中に留まるようになった。

 もう大丈夫だとは思うが、念のため俺の部屋で寝かせておいた。


 一旦安心すると巣だと認識するのか、ちょっとやそっとじゃ起きないほど寝こけている。

 夜中に掛け布団を直してやりながら、可愛い寝顔を見下ろしていた。


 うーん、本当に何者なのか。

 明日、ギルドへ行って聞いてみるかな。


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