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37-1 可愛い訪問者

 ある日、日課のケモミミ園の門前や庭の掃除をしていると、また子供がやってきた。

 七歳くらいの女の子だ。

 ん? このパターンは……。


 また精霊の森からやってきたのかなと思ったら、どうやら違うようだ。

 これは……人化した魔物だ。

 魔物の子供の雰囲気?

 なんとなくだが、わかってしまった。

 まあ、それはいつもの事なのでいいのだが。


 エルフや、あの異空間にいた精霊系の生物のような、精霊が受肉した生き物でもない。

 只の魔物だ。

 しかし、どうやら敵意は無いようだった。

 レーダーは中立を示す黄色を表している。


 しかし一体、何をしにやってきたんだ?

 精霊じゃあるまいに、うちの事を知っているとは思わないのだが。

 なんか子供達が楽しそうな雰囲気だから?


 しかし、子供の魔物なんて普通は人化できないはずなんだがな。

 鑑定すると『プリティドッグ(子供)』とある。

 初めて御目にかかる魔物だ。

 やっぱり子供だった。


 試しに話しかけたら、飛び上がって逃げていった。

 あー、魔物だものな。

 俺の自然放射魔力が視えるのか。

 それは周りの人間と見比べて、強烈に光輝くように見えるらしい。


 バルドスの爺のところのジェニーちゃんに聞いたら、人間とドラゴンのハーフだけど自分もそう見えるのだと教えてくれた。

 まるで黄金の蛇が神々しく畝るように見えるらしい。

 精霊カメラマンが撮ってくれた写真にも、確かにそいう物が映っていた。


 悪しき魔力を持つ者は、どす黒いオーラのようなものを放っているらしいが、おっさんは大丈夫だそうだ。


 この世界に来て最初の頃、殆ど魔物から襲われなかったわけだ。

 奴らから見たら、人から見たゴルゴンのような不気味な怪物に見えるのかもしれない。

 凄い魔力を帯びていて強そうなのだし。

 それも魔法を使えない当時は只の見掛け倒しだったけどね。


 そいつに関しては、ロスコーでその話を聞いていなければ、ずっと知らなかった事かもしれない。

 まあ御蔭で助かったわけなのだが。

 まだ魔法も使えない最初の道中で、魔物の群れに襲われまくっていたら堪らんわ。

 車中泊していた事さえあるんだからな。


 それにしても、この魔物は扱いに困るな。

 敵意が無い子供を討伐してしまうのも、ちょっとなんだし。

 特に人化するような、おそらく知的タイプの魔物はな。

 おまけに一目見て害意がないのがわかってしまうような感じなのだからなあ。


 かといって、小さな子供がたくさんいる幼稚園の周りを魔物にうろうろさせておくのも困るしなあ。

 仕方がないので、しばらく様子を見るか。

 まだチビだし、あんまり強くはないだろう。

 熊みたいに親が出てくると困るのだが、それも見当たらないようだし、それに親だってそう大きな魔物ではなかろう。


 警備の冒険者の他にもゴーレム兵がいるので、どうっていう事は無いはずだ。

 一応写真には撮っておく。



 ケモミミ園の関係者を集めて、さっそくミーティングを開いた。


「なんだか、魔物が人化して園の周りをうろうろしているようだ。

 まだ子供の魔物だし、そう害は無いと思うんだが、みんなも注意しておいてくれ」


「魔物が人化しているのですか? 子供?」


 エドが不思議そうに首を捻った。


「ああ、そうだ。

 だが全く敵意は感じられない。

 ただ、うろうろしているだけなんだよなあ。

 まるで何かうちに用でもあるみたいな雰囲気で」


「そんな話は今までに聞いたことが無いですね。

 まあ、気を付けさせてはおきますが」


 エド達も顔を見合わせて思案顔だ。

 曲がりなりにも相手は魔物なのだ。

 写真付きの資料を渡しておき、その場は解散とした。


 魔物はまだ居たので観察していたら、向こうも門の影に隠れながら、じーっとこちらを見ている。

 ささっと箒で掃きながらそちらへ行くと、すーっと逃げていく。

 そして俺が下がっていくと、また戻ってくる。

 なんじゃらほい。


 えらく警戒しているようなんだけど、それでもうちを覗いていなくちゃいけないみたいな雰囲気だ。


 相手は魔物なのだ。

 試しに、ちょっと餌付けを試みてみた。

 生肉とパンに果物を置いておいた。


 後で見たら生肉だけが残っていた。

 うーん、魔物なんだよね?

 食べたのが実はうちの子だとか?


 だが監視映像で確認したら、ちゃんと魔物ちゃんが美味しそうにもぐもぐしている。

 果物も丁寧に皮を剥いて食べていたようだ。

 ますますわからん。


 真理に頼んで話しかけてもらったら、俺の時ほど警戒してないみたいだが、やっぱり逃げた。

 うーん、こいつも魔法の塊だしな。

 でも真理の方が俺よりも優しい放射のはずなのだ。

 あの性格なんだからな。


「なんだか、よくわからないわね。

 何が目当てなのかしら」


「俺の魔力が目当てじゃない事は確かだ。

 御飯が目当てでもないと思うんだが」


「飼ってほしいとかじゃなくて?」

「だったら、もっと擦り寄って来るんじゃないのかなあ」


 結局、様子見というわけか。


 その後も、その魔物の子は柱の影から、まるで観察日記をつけているかの如くに覗き込んでいる。

 たまに餌付けを試みてみたが、大概は何でも食べるようだ。

 生肉は食べないんだが、まだ子供のせいか?

 名前からして犬系の魔物のくせに可笑しな奴だ。

 一応は犬という事で素材には配慮をしておいたのだが。


 まあ、それほど気にしないでおいた。

 今のところ実害も無いし。

 多分正体は小さな魔物なんだろう。


 一応マーカーとカメラポッドをつけておいたので、何かあれば警報が鳴るようにはしてある。

 だが、なんやかやで気になるので、ついつい見てしまう。

 カメラ越しに見ていると、これがまた中々に愛らしい。


 無邪気に飛んでいる昆虫を追っかけていたり、獲物を捕らえて御飯にしたり。

 獲物は、もっぱら昆虫や植物系の食材だ。

 ケモミミ園に来る前のうちの子達とそう変わらないな。


 微睡(まどろ)んで蹲っていたり、欠伸して伸びをしたり。

 不思議と眠る時に魔物形態へ戻らないようだ。


 そして気が付いた。

 こっち、つまりカメラを見ている事が多い。


 あ、カメラも俺の魔力で動かしているからな。

 向こうからは丸見えなのか。

 だが、危害を加えられないのがわかっているらしい。

 近くへ寄らせると、ちょいちょいと手を伸ばしてカメラを捉まえようとする。


 それから、ちょっと鬼ごっこして遊んでみたり、オヤツをあげてみたり。

 なんていうかこう、その子と少し仲良くなった。


 俺はカメラ映像を魔法PCで見ながら、ついつい笑ってしまっていた。


「もう園長先生ったら、一人でにやにや笑っていて気持ちが悪いですね」


 職員さんに見られていて、そんな風に言われてしまった。

 あっはっは、眼鏡型のグラスアイで映像を見ているようなものだから、傍から見たらそうなるか。


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