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3万ポイントの宴  総合評価3万ポイント到達記念SS

 3万ポイント、それは至福。

 3万ポイント、それは祝福。


 今ケモミミ園の子供達は浮かれまくっていた。

 なぜなら、彼らは最強のスタンプカードを手にしていたからだ。

 それは「キッチンエリ・スタンプカード」だった。

 しかもポイント満タンのVIPカードなのだ。


 それはキッチンエリで御菓子や御料理を注文すると、お買い上げ大銅貨一枚分ごとに1P貯まるというもの。


 3Pで一番安い御菓子一個を貰えるところから始まって、やがては王侯貴族向けの最大3万ポイント貯まるVIPカードも発行した。

 もちろん、それらは全部俺の入れ知恵だ。


 何故、うちの子達がそんなものを持っているのかというと、最初にアルバ大神殿がそれを寄付してもらったのだ。

 寄付してくれたのは、当然あの大人買い貴族のブルーム伯爵だ。


 ジェシカは、それを精霊達に御褒美としてやった。

 始めは精霊達も狂喜したが、自分達が全員で行けない事にすぐ気が付いた。

 それで協議の結果、仲のいいあの子達にあげようという話になったそうだ。

 わざわざミレーが届けにきてくれた。


 子供達は狂喜して、ミミと尻尾を眷属にして踊り狂った。

 興奮のあまり、そのうちに破いてしまうのではないかとヒヤヒヤしながら見ていたが、しまいには大事そうに『神棚』に飾り、ファルが巫女さん姿で御供えされる始末だった。


 それを見て、よく考えたら神の御使いである神聖エリオンがいる幼稚園(実質は孤児院)というのも凄いシチュエーションだなと思った次第だ。

 それは地球の児童養護施設に、幼児スタイルのイエス・キリストとかがいるようなものなのだから。


 いやいいんだけど、お前達。

 神様の御使いというものは、神棚の前に御供えするものじゃないぞ?

 当の本人は、頭を撫でられたり御菓子を御供えされたりで大変御満悦だったのだが。

 まあ、みんな楽しそうなので何よりだ。


 ポイント・システム自体は俺が構築したのだが、景品はエリが考えている。


「なあ、3万ポイントの景品って何なんだ?」

「エヘヘヘヘー。それは内緒~」


 何か不気味な笑いを浮かべて、勿体を付ける『大師』がいた。

 その呼ばれ方が世界に広まりつつある事に、まだ本人は気付いていないらしい。

 いつ、それをばらしてやろうか。

 それを聞いた俺の義妹が、思いっきり全身で身悶えする様を想像して、ちょっとほこっとした。



 そして、ついにVIPカードが神棚から降ろされて、その特典が使用される事になった。

 既に日取りは決めてあったのだが、みんなで押しかける前に、先にエリのところへ知らせに行く。


 3万ポイントの景品。

 それは、なんと御菓子のフルコースだった。

 最高級料理のフルコースのように、この世界では王侯貴族でさえ滅多に口にする事が出来ないような、地球レシピの極上菓子のエリちゃんアレンジである。


「御兄ちゃん、材料はあるかな?

 最高級の奴が沢山欲しいの。

 精霊の森の、あの子達にも作ってあげたいし。

 あと本来のカードの持ち主であったブルーム伯爵も御呼び出来たらいいな。

 そっちの招待はゲートの魔法で御願いね」


 いつもは自立を促すために材料は自力調達させているが、今日は特別なイベントだ。

 俺は厳選材料をエリのアイテムボックスへ大量に放り込んだ。


「あと、どうせなら王女様方も呼んであげたいんだけど」


「それだと、キッチンエリじゃあ場所が狭いな。

 王宮の中庭にでも繋ぐか。

 ちょっと王宮まで行ってくるわ。


 いやそれか場所はケモミミ園にしよう。

 セキュリティやスペースの関係もある。

 さすがに王宮の庭をいきなり使用できないだろうし」


「い、いや、御兄ちゃん。

 うちの店のスタンプカードの景品が、なんでそんな大事に……」


 有無を言わさずに王宮へ転移すると、王女様方が御茶をなさっておいでだった。


 それに王妃様もおいでだった。

 かつては「跳ねっ返りシャルロット」などという異名を取った「Aランク冒険者シャルロット」様。

 それは称号にまでなっているらしいし。


 どれだけ跳ね返っていたんだよ。

 元は公爵家の御姫様だったんだよね。

 公爵家の人間って大概は王族だから、並みの貴族の御令嬢よりも格が上の筈なのだが。


 正確には、今も胸元にはそのAランク冒険者である証が煌いている。

 Aランク以上は実費でその証を胸元を飾るネックレスをギルドで作ってもらえる。

 Aランクはミスリル製だ。


 前にあったスタンピードでは、活躍してSランクに昇進する機会を狙っていたらしい。

 その機会が無くて少し残念がっていた。

 いやはや。


 旧名シャルロット・フォン・エミルハーデ。

 アルバトロスの兄弟国サイラス王国はエミルハーデ公爵家の美しい姫君であった。


 多くの男達が彼女を奪い合ったという、その美しさは今も変わらない。

 この方、再生のスキルを使っていらっしゃるんじゃないの? と疑ったりした事もあったほどだ。

 ちょっと前まで、三十路の長男の方が母親よりも遥かに老けて見えたというのは内緒だ。


 Sランク以上のネックレスはオリハルコンだ。

 オリハルコンは入手困難なので付けている人は少ないと言われるが、その話を王妃様から教えてもらったので、アルスやアントニオと御揃いで俺も親方に作ってもらったのだ。

 オルストン家には御祝いという意味でも贈ってみた。


 日頃の感謝を込めて、ギルマスとサブマスにも同じ物をプレゼントした。

 これは現役を退いてから作る人もいるのだ。


 もう一人レッグさんの奥さんも同じチームでSランクだったらしいので、その分も作った。

 チーム・アーモンに居た頃は、彼女がアルスの母親代わりだったらしい。

 チームに所属した当時はアルスも既に成人していたが、日本でいえば高校生くらいの歳だった。

 

 本日もエミリオ殿下は、姫様方に捕まってしまって着せ替え人形モードらしい。

 ちょっと浮かない顔をしていたので俺の襲来を大変喜んでくれた。


「アルー、助けてー。

 姉様達が酷いんだよー」


 見れば、もう全身ピンクのフリフリ・ファッションで飾り立てられていた。

 当然可愛いスカートを履かされている。


 うわあ。

 これはさすがに勘弁だなあ。

 俺だったら、せめて赤ビキニで許してほしいものである。


「ははは。

 殿下、今からエリ主催のおやつ会なのですが、御一緒にいかがですか?

 3万ポイントのVIPポイントカードの御招待ですよ。

 さすがにその格好では何ですので、着替えてから参りましょうね」


「グランバースト卿!

 それって私達も行っていいんですよね?」


 すかさず王女様方からも熱いコールがかかる。


「大丈夫ですとも。

 エリから御招待がかかっていますから。

 今日はスペシャルだそうですよ」


「わかりましたわ、グランバースト卿。

 では私達も仕度してまいりますわね。

 さあみんな、お早くなさい」


「はーい、御母様」


 うん、わかっていました。

 王妃様も最初から予定していますから御安心のほどを。


 わくわくの止まらない王家の女性達をケモミミ園に送る。

 当然、護衛である王国騎士団の連中も一緒だ。


 キッチンエリからは、『従業員枠』でエリーンの奴もついてきていた。

 まあ来ると思っていたしな。

 このスペシャルスイーツ・パーティへ、こいつを呼ばずにどうするというのか。

 そもそも奴の給料は俺が払っているのだから何も問題はない。


 ブルーム伯爵のところへは、ファルと精霊連を一緒に連れて御伺いに行った。

 御誘いはファル本人から。


「ブルーム伯爵、一緒にキッチンエリのスイーツパーティへ行こう!

 みんなで行けば楽しいよ」


「おお! 精霊やエリオン様と御一緒にスイーツパーティですか!

 是非行きたいです。

 えーと」


 家族の方をちらと見ながら。

 もう娘さんが行きたいオーラを全開にし、体全体で表して放出している。


「ええ、もちろん御家族でいらしてください。

 ただし王妃様や王女殿下達にエミリオ殿下も御一緒ですが」


 それを聞いて伯爵は驚いたようだったが、すぐに頷いた。

 ポイントカードも、元々はこの人から頂いた物なので、もちろん大歓迎なのだ。


「では参りましょう」

「しゅっぱーつ」


 元気に掛け声をかけて、ファルが伯爵の手を引いてゲートを潜った。


 現地では王女様方がミミもふりに興じており、チビ達もここぞとばかりに王女連に甘えまくりだ。

 王妃様が胡坐をかいて五~六匹抱え込んでいた。

 今日はもう、御菓子を腹一杯食べる気満々のゆったりファッションというか、それはジャージ!


 彼女にとって最近のマイブームらしい。

 密かに王侯貴族の間で、気楽なこれが流行っているのだとか。

 いや、それの発売元はアルフォンス商会なんだけどね。

 一国の王妃様がそれでいいのか?


 王女様方はもう少し控えめに、みんなスエットの上下だ。

 何故かハミル殿下は体操着とブルマーで、あわあわ言う子は体操着の上下だ。

 きっと、それらを自力で再現してみせた葵ちゃんの仕込みなのに違いない。

 まるでなんかのアニメの外人少女キャラみたいだ。


 俺も面倒なんで、もうTシャツと短パンに着替えた。

 ファルは御気に入りのムームーだった。

 レミはTシャツワンピみたいなのを着ている。

 他の子はみんな御揃いのスモックだ。


 エミリオ殿下もスモックを着せられてしまっていた。

 うん、可愛いよ。


 さすがに全身フリルよりはマシだと思ったのか、殿下も文句は言わない。

 というか、友達みんなと御揃いで嬉しいのだろう。


 戯れに騎士団長にもスモックを着せてみたが、止めた方がよかったな。

 その場に居る全員が苦笑いする羽目になった。

 なんたって髭の大男なんだからなあ。

 奴は筋肉も、これまた凄いのだ。


 あと、海賊王とその嫁を迎えにいってきた。

 嫁さんの実家でやる行事だからな。


 そして王太子殿下のフィアンセ殿とシスコン兄A(ミハエル)を連れてくる。

 こっちは嫁入り先の行事だし。

 それは俺が仕込んだ安全保障込みの物件なので、絶対に招待を忘れてはいけない。


 肝心の王太子殿下はというと、残念ながら仕事に埋もれているようだ。

 ジェニーちゃん一家と、孫命なジジイも呼んできた。


 久しぶりに身内に会う人もおり、和やかな時間がふわりと流れる。


「さあ皆さん、御菓子のフルコース始めますよー」


 エリの掛け声に、みんな思い思いの席についた。

 アルスに頼んでトーヤが女将さんをいつのまにか連れてきている。


 大きく開けておいた、神殿に繋いでおいたゲートから入ってきたジェシカが女将さんの横に陣取った。

 その反対側に陣取るのはエディだ。

 この二人にとって女将さんは御母さんのような人だからな。


 各所に広げられたローテーブルに並べられたのは、ケーキやスコーンなどを並べたりするのに使うティースタンド達だ。

 山吹色に輝いているそれは、当然の事ながらオリハルコン製であった。


 無論、その全てが俺謹製の品だ。

 貴族の中には貴重なオリハルコンの浪費に目くじらを立てる人なんかもいるかもしれない。

 少なくとも、そういう人は本日の御客様にはいないけど。


「いつか武を越える」という、自分の目標に邁進する俺にとって、そういう常の精進は絶対に譲れない線なのだ。


 そこに並べられるのは豪華なチョコレート菓子達。

 そして俺がネットでさばくったスイーツ・デザイン、そして作りこんだ材料の数々、それを元にエリがオリジナルで作り上げた味と形が極上の波を成していた。


 俺でさえ、ただ唸る事しかできない。

 スイーツには煩い葵ちゃんも大絶賛の逸品だ。


 このVIPチケットを譲ってくれた大神殿の精霊達は約定により、基本は大神殿から出てこられないので、ゴーレム達が御菓子をせっせと運んでいく。


 ゴーレムも、だいぶ造形が人間に近くなってきているが、まだまだ精進だな。

 さすがに御菓子の量が無いので、俺のコピー品を精霊の森の駐留ゴーレム軍に送りつけた。


 ゴーレムは万が一に備えて精霊の森にも置いてある。

 現地精霊は発狂的に喜び、なんと次々とテレポートしてきた。

 おまけに大神殿にいた残りの精霊達まで。


 あの神殿に設けられた結界は本当に役に立っているのか?

 食欲によって能力が瞬間的に限界突破したのかも知れんが。


 まあ、今日はいいか。

 大司祭アルフォンスが特別に許可しよう。

 ケモミミ園は顕現した精霊の山となり、園児達は大喜びしていた。



 次に、まだ御店には出せていない、色取り取りで形も様々なケーキの嵐が続く。

 全身に繊細な装飾を施したプチケーキ。

 他に金太郎飴のような、内部がスペシャルデコなロールケーキもあった。


 そして巨大なタワーケーキが鎮座ましましていた。

 これは地球のバベルの塔を模したものだ。

 あの御馴染みの崩れかけた奴だ。

 そういや、以前エリにも見せてやった事がある。

 あの人間の傲慢さが神の怒りに触れる伝承が、心の琴線に触れるほど気に入ったらしいな。


 御菓子の家のバベルの塔版といってもいいかもしれない。

 何かこう幻想的ですらある。



 おチビ猫用のスペシャルカップケーキもある。

 ネットのレシピ画像から厳選した物を、ミスリル製の本場英国の物に近い感じの趣のあるティースタンドに並べ立てた。


 おチビがその前に陣取って、お目目をクルクルさせる。

 毛蟹みたいに目が回っちまわないといいが。


 そしてデザートプレート。

 そこには特製プリンが色々並ぶ。

 エリーンが、その前で陣取っていた。


 その小さななりに、色・形・味・舌触り・歯ごたえ・食感と、あらゆる要素を詰め込んだ、至高の逸品であるドラゴンタルト。

 口の中を甘美な魔物が暴れ回る。

 これが、おっさんの一押しかな。


 俺があちこちから仕入れまくった特殊な香料や、いろんな材料から作り上げた超最高なゼラチンから選りすぐった特製ゼリー。

 寒天や葛などのゴーレムに厳選採集させた素材を、徹底的に精製加工した素材を使用してある。

 日本の市販品じゃこうはいかないぜ。


 その他、徹底苛烈に収集された厳選素材で作られた、生クリームとチョコレートで飾りつけた生菓子類もあった。


 無論、御店のスタッフの手が手が足りないので、うちの進化しまくったゴーレムさんが御手伝いをする。

 エリの指揮の下、ガンガンと御菓子の群れが作り出されていく。


 俺は王宮の王太子殿下のところや、久しぶりにエルミアの孤児院にも顔を出し、御菓子をお裾分けしていった。

 いやそれより、もうエルミアの子も来られるようにゲートで繋いでしまった。

 エルミアの子を王都へ連れてくる許可は昔に貰ってあるしな。

 このアドロスなら何の問題も無い。


 そしてなんと王太子殿下は、可愛いフィアンセに会いたくて、のこのこやってきていた。

 いいのか、仕事は。

 もしかして、またミハエルを捕まえて押し付けたのかな?


 そういやここへ来ていたはずの奴の姿が見えないような気が!

 あいつも、この件に関しては安全保障が絡むので兄には逆らえないらしい。


 やがて人も精霊も皆食い潰れてしまっていて、ケモミミ園には幸せな空間が漂っていた。

 そのうちに、いかにも体が重いですみたいな格好でトロンとした目付きをしていた精霊達が顕現を解いていった。


 エルミアの子達も御腹いっぱいで、背中合わせになって支えあっていたり、大の字になっていたりして心地よく果てていた。


 俺も久しぶりにエルミアの神父様と色々な話をしたりして楽しんだ。

 

 その他の人達も随時送っていき、ついでに王宮各所にも今回の御菓子を御裾分けしていって、俺自らポイント制度の宣伝をしていった。

 映像で紹介される未曽有の高級御菓子の群れは多くの王宮人士の興味を引いた。


 やがてキッチンエリには、ポイントカードを握り締めた貴族本人達が大挙して詰めかけたという。


 日頃、応援ありがとうございます。

 節目の総合評価3万ポイントになりましたので、記念に書いてみました。

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