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34-2 お見合い準備

 なんだかんだ言いながら、流れで見合いを実施するという話になった。


「この件はアルバトロスの国王を通している正式な話で、我が国の国防にも直結している話だ。

 我がザイード王国とても無碍には出来ない。

 それどころか、むしろ俺自身にとって一番の関心事といっても過言ではない。


 強面だった帝国が大人しくなったので、我が国と反対側にある隣の国が色気を出してこないとも限らない。

 あいつらも結構こすっからいところがある。

 奴らに裏で帝国と手でも組まれたら、我が国は目も当てられない事になる。


 もう一方の、下方に広がるエルドア王国のドワーフとの連合は望むべくもない。

 しかし、あんたはそのドワーフの王とさえも昵懇(じっこん)の間柄で、その上全世界を驚かせている奇天烈な快男児だ。

 自分が組むのに、これ以上相応しい相手はいないと思っている。


 だが、あの国の跡継ぎは野暮ったい男だと聞いているのだ。

 うちの妹に相応しい男なのかどうか。

 まあ、それ以外には特に悪い評判を聞かない男なのだが。

 むしろハイド王国の身勝手すぎる事情に振り回されて、独身のまま三十路を迎えた大国の跡継ぎに諸国も同情的だ。

 ハイドは今回やった結婚式で、長年に渡ってアルバトロス王国にかけた面倒にようやくケジメをつけたわけだ。

 その次の慶事として、今回の話こそは、まさに望ましいとしか言いようがないわけなのではあるが」


 公人と私人の狭間に揺れる兄心。

 昨日は飲みながら、そんなぶっちゃけた話をしてくれた。

 俺から見たら、その様はむしろ好ましいな。


 彼はいずれ王になる身なのだから、国の事を一番に考えるのは筋だ。

 なんたって帝国と対峙している国の次期国王なんだからな。

 帝国も今は大人しくなったが、先の事はわからない。

 その帝国の向こう側に在るアルバトロス・ハイド・サイラスとの四か国血縁同盟は喉から手が出るほど欲しかろう。

 だが、それで家族をないがしろにするような情のない奴と俺は組みたくない。


 あとはカルロス君。

 君に任せたよ、魔法使い(三十歳)。

 生憎な事に、この魔法溢れる世界において彼は本物の魔法が使えない人なんだけどね。

 それを補って余りある素晴らしい資質の持ち主なのであるが。


 とりあえず御見合い写真でも作るかなと、妹王女を連れて海で撮影会と洒落込んだ。

 相手は『魔法使い』な事だしな。

 お色気路線なんかいいかもしれない。

 ハッと気がつくと、何かを察知したものか、付き添いでついてきた兄太子がこっちを睨んでいる。


 ちっ。

 この物語、マジでシスコン野郎がうざいな。

 もう諦めろよ。

 この見合いは正式に国同士でやるんだから、もう簡単に破談になんか出来ないぞ。


 この件をあっさりと息子に任せた、この国の国王様。

 もしかしたら、跡継ぎたる兄に少し妹離れさせたいのかもしれない。


 草原の王女様は自由奔放な性格だ。

 机に齧り付きの文官肌の王太子様にとっては却って新鮮に映るかもしれない。


 もちろん召還したのは精霊カメラマンだ。

 浜辺に相応しく、なんか亀っぽい感じのユーモラスなスタイルの奴を呼び出した。

 表情もおとぼけな感じの奴で、声の調子もそんな感じなので、被写体である御姫様の方もノリノリだ。

 この人の場合、元々ノリがいい気もするんだけど。


「はーい、いいですよー。

 ハイ、そこ!

 手を組んで、掌を頭の左側の斜め上で。

 天に掌を向ける感じで。


 そう。

 そのまま目線こっちに向けて笑ってー。

 はい、自然な感じでいいですよー。

 うん、可愛いよー」


 まるでグラビア写真を撮るかのような雰囲気で御姫様に声をかけているのは、もちろん顕現した精霊だ。

 そのノリに引き込まれて、彼女の方も素晴らしくノリノリである。


 奴ら精霊カメラマンは、もう全員がプロ。

 女の子の撮り方もバッチリだ。


 さすがに一国の姫だ。

 写真を修整する必要はない。

 俺は次々と撮った画像を紙に転写していって、その中から御見合い写真用に選んでいく。


 三日がかりで撮りまくり、そして厳選して選び抜いた『見合い写真集全60P』の大作写真集が完成した。

 地球でも、ここまでやる奴らはそうそういまい。


 周辺諸国の安全保障は我がケモミミ園の安全に直結する。

 その辺の話は帝国相手に繰り広げた乱痴気騒ぎで懲りたのだ。

 ベルンシュタインめ、大帝国を気取っているくせに、わざわざ棄民都市にある幼稚園なんかへ攻めてくるんじゃねーよ。

 本当にもう、異世界は油断も隙もあったもんじゃない。

 この見合いは死んでも成功させねばならん!


 次はプロモーションビデオの作成だ。

 女優さんは、またしても結構ノリノリな御様子だ。

 御国柄、自由奔放にやってきた御姫様だけの事はある。

 監督が楽を出来ていい。


 騎馬民族っぽい民族衣装を着て草原を軽やかなステップで駆ける姫君、また馬に乗って草原を駆ける雄姿など動きのあるシーンは写真以外にもビデオで動画を撮っておいた。

 あとドレスアップした姿や、笑顔で国民に手を振っているところなども撮影した。


 まあ、こんなところかな。

 水着とかは後の御楽しみという事で、ここは敢えて封印しておく。

 一応は『王家向け見合い写真』なんだしね。


 早速、王国に帰り編集する。

 葵ちゃん監修で。

 一応、完成した写真やビデオは関係者には先に見せておく。


「これは、なかなか大作ですな。

 大変、見応えのある良い見合いの絵姿だ」


 煩型の宰相も感心して褒めてくれた。


「ふむ。

 これがザイードの姫か。

 中々健康的な感じの娘で、大人しめのあやつには丁度いいかもしれぬな」


 国王陛下も合格判定を出したようだ。

 プロモーションビデオも鑑賞してもらって、見事にゴーサインが出た。

 早速、王太子の執務室へ行って写真を見せた。


「へえ、これがザイードの姫君ですか。

 いや可愛いですね」


 じっとそれを見つめながら、彼は今何を想うだろう。

 国の都合で、跡継ぎなのに嫁さんの一人もいなかった。

 父親が側室を持っていなかったので、そういうのも憚られたみたいだし。


 それからビデオの上映会だ。

 カルロス君ときたら、食い入るように見ていらっしゃる。

 思ったよりも食いついているな。

 これは期待が持てるかもしれない。


 それらはザイードのアルバトロス大使館を通して正式にザイード王家へと届けさせた。

 俺は再度国王陛下と見合いの開催について会談した。


「御見合いの場所はどうします?」


「お前に一任しよう。

 どうせ、もう見合いの準備は出来ておるのだろう?」


 国王陛下も御機嫌そうに目を細めた。

 跡継ぎが「魔法を使えない魔法使い」のままでは、さぞかし落ち着かなかったろうな。

 帝国に色々やられてそれどころじゃなかったのだろうし。


「それはもうバッチリ。

 先日、ハイドに嫁いだ妹君が一足お先に堪能していましたよ」


「ならばよい。

 あれも、たまにはゆっくりさせてやろう」


 そして、その弟が忙しさのあまり、また虫の息というわけかな。

 まあ自分の事じゃないのだから、いいのだけれども。


 ミハエルにドリンクの差し入れは必須かなあ。


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