2-8 ダンジョンで御飯
それから近くの大きな部屋みたいな空きスペースに陣取る。
「ここは昔、魔物が湧き上がるモンスターハウスだったのでしょう。
今では休憩スペースとして使われています」
よく見ると、他に二組ほど冒険者がいた。
御昼はテーブルと椅子を出して御馳走を並べていく。
まず俺とエリーンとエドから食べる。
冷たいジュースに、ハムを添えたサラダ。
揚げ立てそのままの唐揚げと柔らかいロールパン。
そして卵焼きにカップスープ。
そうたいした物ではないのだが、ここダンジョンでは十分に御馳走の部類に入るだろう。
普通は質素な冒険者飯なのだ。
それは堅い焼き締めパンと水、干し野菜そのままと、保存性を重視した堅めの干し肉といった感じらしい。
他に干した果実があれば上等か。
水魔法の使い手がいないと水にも事欠くし、そもそも下の方まで行けないわな。
栄養バランス的に考えればそう悪くない食事なのかもしれないが、俺は絶対に食いたくねえ。
他の冒険者からの視線が刺すように痛いな。
いや、お前らも御馳走くらい持ってきたっていいんだぜ?
こんなものは殆どが普通の朝食メニューみたいなもので、別に御馳走でもなんでもないけどなあ。
だがエリ-ンはいちいち感激しながら食いまくっていた。
「ダンジョンの中で、こんな美味しいものが食べられるなんて!」
そして催促するように、こっちをじっと見る。
「シュークリームは後のおやつの時間にしよう。
食後はプリンだよ」
紙皿にプリンを出してやる。
エリーンは、プニューンと揺れるそれを最初は不思議そうに見ていたが、一口食べて驚愕したようだ。
もう夢中でかき込んでいる。
例によって無言の御代わりを要求された。
瞬く間に三個目を食べ終って、次の御代わりを要求したところでエドに怒られた。
「いい加減にしなさい、エリーン。
デニスとロイスが御飯を食べられないでしょう。
この後にすぐ魔物が出てきたらどうするんです」
リーダーのエドから説教を食らったので、彼女も渋々と残りの二人にテーブルを明け渡し、俺もエド達と一緒に見張りに立った。
これも冒険者としての練習なのだ。
その後ちょっと食休みさせていただいて、それからゆっくりと歩く。
ダンジョン探索が食後の運動かよ。
我ながら優雅なもんだね。
そして出てくるコボルトを今度は剣で倒す。
こいつらは、まるで犬そのもののような頭をした連中だから犬派の人間にとっては厳しい相手だが、生憎な事に俺は猫派なので容赦なく倒した。
いや犬だって本物なら大好きなんだけどね。
お散歩中のワンコと遊ばせてもらうのは大好物なのだ。
まずは普通の剣を使って身体強化のみで相手をした。
次に魔法剣各種で試す。
そして初級魔法各種で倒したり、ナイフ・斧・石を投げてみたり。
剰え、素手でも倒してみた。
後は棍棒で叩いたり剣の鞘で戦ったり。
結局今の自分なら、この程度の魔物ならどれだけ出ようが何をしようが無双できる感じだ。
掠り傷一つ負わないし。
どちらかといえば、狼みたいに機動力があるタイプの方が苦手だ。
あと戦闘に夢中で気付いていなかったが、剥ぎ取りは他の人がやってくれていたらしい。
それも契約内容に入っている。
ここまで結構な数の魔物は倒したけれど、ランクの低い魔物ばかりなので、いくら倒してもDランクには上がらないだろうと言われた。
そうか~、そいつはちょっと残念だ。
まあ冒険者資格にはランクに応じた有効期限があるから今回倒した魔物の御蔭で、Eランクの俺はもう六か月ほど延長して資格を保持出来る。
これがFランクの場合は三か月だから、盗賊退治でEランクへ上がれておいた恩恵が生きている。
「あのう、シュークリームは?」
エリーンがじっと俺を見ている。
おっと、うっかりしていた。
そんなに熱い目で見つめられてもな。
見つめているのは俺じゃなくて幻のシュークリームなんだろうけど。
「ゴメンゴメン、忘れていたよ。
もう帰るから一個だけね」
手渡すと、迷わずその場で齧りついている。
「うおー、これも甘い~」
そして瞬く間に食べ終わり、またこっちをジト目で見てその場から動かないので、御代わりを与えつつ歩きだす。
結局、四個目を要求したところで、また「エリーン、いい加減にしなさい。これじゃいつまで経っても宿に帰れないでしょう~」とエドに(以下略)。
街で夕食を取りながら残りの予定を打ち合わせた。
最終日は王都への移動日だから残りは実質四日だ。
行けるとこまろで行って様子を見てキリをつける。
今回は特に探索の目標があるわけじゃあないからそれでいい。
強いて目標と言うのであれば、接敵する魔物の種類を増やして俺が出来るだけ多くの経験を積むという事かな。
もう魔物は随分と倒したので王都へ帰る時も門で並ばなくていいからな。
Dランクへの昇格はまた今度でいい。
まずはダンジョンや魔物との戦闘に慣れよう。
一人で転移式のダンジョンへ入れるように。
さすがに転移魔法の習得を、今回みたいに他の冒険者と一緒にやるのは憚られる。
そして遅くとも三日目の朝からはダンジョンより引き返す。
最悪五日目の十四時くらいから急いで帰れば間に合う。
今日の夕方は少しダンジョンの街を回ってみた。
娼館や賭博場などには興味があったが、明日から本格的にダンジョンへ潜るのだ。
ここは通い慣れたラスベガスじゃないんだから、余計な事は止めておこう。
来たければ、また今度来ればいいのだ。
俺には車だってあるんだし、今の身体能力ならば王都から二十キロくらいの場所など走ってきたってどうっていう事はない。
異世界十九日目がやってきた。
いよいよ本格的なダンジョン探索だ!
一階はあまり魔物が出ないので走って通過して行く。
二階もそれほど魔物が出ないので、通りすがりに魔物を撃ち倒しながらさっさと行く。
前にうっかりと俺がスライムを食らってしまったので、急ぎである今回は、ここの名物である殺人スライムの警戒はデニスに任せた。
もちろん自分で見つけたら、即火炎放射器の餌食さ。
これがスルメだったら炙って食べられるのにな。
一時間で三階の狼ゾーンにまで来れた。
走りながら接敵する。
そいつらを風魔法で次々とぶっとばしていく。
こいつらは機動力があるので、銃で個別に狙うよりも広域の攻撃が出来る魔法の方がいいようだ。
出会う端から吹き飛ばして、ここも一時間で抜ける。
四階は蜂のゾーンだ。
デ、デカイな。
なんと大きさが四十センチくらいはある。
俺は蜂が大嫌いなんだよ。
特にスズメバチが。
俺の親父はスズメバチの子であるヘボが大好きで、よく幼馴染軍団の先頭を切って狩っていたらしいが。
あれは彼の御仲間であった俺の従兄弟達も好んでよく食べたらしい。
そんなもの糞食らえだわ。
こいつらのヘボなんて絶対に要らねえ。
そもそも、こいつらってヘボの時代はなくてダンジョンから成虫の姿で湧いてくるよね。
っつうか、もしこいつらのヘボがいたとしたらカブトムシの幼虫以上のサイズじゃないか?
絶対に全長三十センチ以上ありそう。
誰が要るか、そんなイカレたもん。
並みサイズの普通のヘボだって要らねえのによ。
愛知県の山奥でヘボ飯を売っているのを見るだけでもウンザリするわ。
こいつらも容赦なく火焔放射器の魔法や渦系の風魔法で撃ち落とす。
まあこうやって魔物と戦うために、今日ダンジョンにいるのだからこうでなくては。
朝の六時から潜り、今は九時だ。
ちょっと休憩する事にした。
張り切って駆け抜け続けたので気分的に疲れた。
強化され若返った体はそう疲れないんだけど、やはり心はおっさんなのだ。
休憩の準備をしてクッキーとコーヒーで御茶にする。
プリンは午後のおやつにする予定だ。
魔物の巣窟に些か刺激的なコーヒーの香りが漂うが、ここには自分達しかいないし魔物は雑魚しかいないようだ。
エドからも許可が下りたので、マットとピクニックシートを引いて、つい三十分も楽しんでしまった。
最初に一人でグリオンの魔物と対峙した時に比べれば、こんなものは行楽以外の何物でもない。
おやつに夢中なエリ-ンが一緒なので余計にそう感じる。
五階はヘビ魔物だった。
斑模様の生えまくった外見が気色悪い。
胴体の直径が二十センチで長さは五メートルほどもある。
人間を一人飲み込むと御腹一杯って感じのサイズだな。
これがもし大砲ならば、砲身長割ることの砲口のサイズという公式から計算して、いわゆる二十五口径というクラスの短めの砲身だな。
かなりサイズがでかいし、地球の同クラスの生物とは異なり魔物なので、出現する雰囲気がB級映画っぽい演出を纏っていた。
頭でっかちで、その上ズラリと生やした牙の群れが、主にそういう空気を形成している。
素早いし接近されて巻きつかれると厄介なので、風魔法で首を落としまくった。
だが、わらわらと次から次へとミミズの如く湧いてくる。
これでも、こいつの肉は人気商品らしい。
スープに焼き物あたりが人気メニューだそうだ。
まるで香港みたいだ。
あそこは三種と五種の蛇のスープが人気なんだったっけ。
香港は中国への返還前に一回行くチャンスがあったんだが、生憎と行き損なったな。
あの時は香港行きのツアーが物凄く人気だった。
あの頃は特に、共産主義国である中国に返されたら今までの香港とはまったく違う場所になるという風潮だったので、その前に行くしかないという事で日本では超人気で、凄まじい旅行価格の高騰を招いていたっけな。
六階は大蜥蜴のゾーンだ。
こいつは保護色系だ。
俺にとってはレーダーで丸見えなんだけどな。
蜥蜴だけあって、こいつもなかなか素早い。
しかし、こいつは狼みたいに壁を這ったりしないし腹の皮は薄いそうなんで、一匹残らずアースランスで串刺しの刑に処した。
床中に、びっしりと隈なく岩槍を生えさせてやったので、姿なき敵は一網打尽となった。
死んだら、さすがに姿を現した。
カメレオンは本当に保護色で姿を消す生き物ではないので、こういう能力に関しては優秀な魔物だな。
どっちかというと、狼よりもこいつの方が壁を這うイメージがあるのだがね。
ちょっと早いのだが、もう昼飯にする。
今日は唐揚げの代わりに生姜焼きにした。
もちろん、ここで料理をするのではなく出来合いの物だ。
エリ-ンがじっと見てくるので、二個までと念を押してからプリンを出してやる。
彼女も今日はじっくりと食べていた。
ここまで罠らしい罠がなかったので聞いてみたが、十階を越えないとそういう罠はないらしい。
おまけに最近は宝箱もそんなに見かけないと。
それは残念だな。
宝箱は男のロマンだ。
本日は宝箱の罠解除を習いたかったのに。
それにきっと宝箱に付き物である、あの名物魔物がいるのに違いない!
もし奴の気配と遭遇出来たら、敢えてノーガードで箱を開けて罠に嵌まり、頑張って箱の中でプロレスするぜ。
七階は足から足まで一メートルくらいある大蜘蛛だ。
タランチュラっぽい見かけなので、きっと毒持ちだな。
こいつも銃と火炎放射器であっさりと倒せた。
クロウラータイプのタランチュラっぽい感じなのに、ゴキみたいに素早いのがなんなのだが。
大きさの割には胴体が小さいから、比較的小柄な魔物のように思うのだが、毒持ちで素早いので厄介な魔物だ。
ズンズンと進むのだが、何故かスライムが多くて閉口した。
上から降ってくるのがまたね。
こいつら、どこへ行っても湧いてくるんだよなあ。
大雨の日の雨漏りみたいな連中だ。
どうやら、それがこのダンジョンの名物『殺人スライムの雨』らしいし。
連中が持っている『天井の殺し屋』の称号だけでもうんざりするのだが、それが雨となって降るとはな。
そして八階へ降りるあたりで、不意に誰かに呼び止められた。
「おーい、あんたら毒消しを持っていないか?」
見ると、通路の隅っこに真っ青な顔をして寝かされている男が二人いて、これまた二人ほど男がそれに付き添っている。
「ポイズンスライムにやられちまってな。
蜂にやられたんで毒消しは使っちまった」
なら、何故先に進んだんだよ!
「俺は回復魔法持ちだ。
診よう」
「助かる!
恩にきるよ。
俺はロバート、こいつはトニー。
そこで唸っているのがミレーとロイドだ」
「俺はアルフォンスだ。
商人をしている」
ここはまだ、ダンジョンの上層なのだ。
そうたいした毒ではなかった。
ハイポイズンヒールの出番すらない。
こんな軽微な症状はさっと治療して、そいつらから情報を聞く事にした。
「このあたりじゃ滅多に出ないポイズンスライムにやられたんだ。
ちょっと手持ちの金が苦しかったので無理して進んだらこの有様だ。
最近は少し魔物の出がおかしいところがある。
お前らも油断しないようにな」
俺は思わずエドを見たが、彼も首を傾げている。
「最近はあまりここへも来ていませんので、もう少し情報を集めてくればよかったですね。
訓練という事でしたので、ちょっと油断してしまったかな」
さっきのメンバーには毒消しのポーションをいくらか渡して、もう一旦上へ戻るように言ってから別れた。
現在時刻は十四時三十分だ。
半端な時間の休憩になってしまったが、あと三階層分だけ進むことにした。
八階は蝙蝠、しかもでっかい小笠原級だ。
もっとも、こいつは小笠原オオコウモリとは違い、食べても美味しくないそうだ。
小笠原さんはフルーツを食べているフルーツバットだものね。
こんな何の効用も無さそうな連中は風魔法&火炎放射器無双で終了だ。
数で襲ってくるだけの連中だ。
超音波で攻撃してくるわけでもないし。
まあ、空を飛んで数がいるだけで厄介なんだけれど。
でかい牙を生やした凶悪な連中だし。
生憎な事に天井まで煌々と照らしてくれる派手な照明器具が大量にあるので、彼らのアドバンテージである闇は連中に味方してくれなかったようだ。
九階は大蠍ゾーンだ。
これまた一メートルくらいあるデカイ奴で、かなり迫力があるぞ。
さすがに気色が悪い。
昔アメリカで買った土産物の蠍の標本も結構でかかったが、その比じゃあない。
こんなものに毒尻尾で刺されたら人間なんかイチコロもいいところだな。
しかし動きはのろいようだ。
見掛け倒し系の蠍だな。
甲殻系なので体は硬いが、素早い分さっきの蜘蛛の方がよっぽど手強い。
こいつらもアースランスの餌食だ。
十階は百足で、これもでかい。
ざっと三メートルはあるな。
だがデカイだけだ。
以外と素早いが、魔法各種であっさりと仕留められた。
魔法演習にはもってこいの相手だった。
だが、でかい上に強力な毒持ちだ。
力も強そうだったし、普通は上の階層では結構な脅威なんだろう。
こういう毒系魔物は良い薬の原料になったりもするようだ。
俺なら傷薬用の油漬けか、ややマニアックな焼酎漬けあたりにするか。
なかなか壮観な眺めの瓶詰になりそうだ。
俺なら拡大コピーで大きめの瓶なんか作り放題だけどね。
今十七時三十分になった。
「一日で案外と下まで来れましたね。
二日でここまで来れればと思っていたんですが、アルフォンスさんが無双していましたからね」
「なあに、御付きの人が色々と見ていてくれるから気楽なもんだ。
案外と野営に相応しい場所ってあるものなんだね」
俺達は、また旧モンスターハウスのような場所を野営場所に選んでいた。
昨日の物よりはずっと小さい場所だ。
「まあ、ここはよくこなれた迷宮ですから。
この場所で天幕を張りましょう。
一張りだけ出してもらっていいですか?」
「いえいえ。
天幕は自分用のもあるんだけど」
いやね、ちょっと自分のテントを使ってみたかっただけなんだ。
「いえ、何かあった時のために固まっていましょう。
さっきの方が言っていた事も気になりますし」
「了解。では」
そう言って天幕を出し、マットやシートも出した。
そしてテーブルとチェアを並べた。
「ちょっと料理をしても大丈夫かな?」
俺の問いにエドは少し考える風でいたが、首を振った。
「いえ、やめておきましょう。
さっきの話もありますし。
匂いで魔物を引き寄せるような事になってもいけない。
他の冒険者も来るかもしれないですし。
火を炊いて炊事をするのはダンジョンではマナー違反ですから。
匂いの強い食べ物も同様です。
まあ普通は堅いパンと干し肉なんですが」
そうか、じゃあカレーも駄目だな。
だが問題ない。
御湯も温かい料理もどっさりと用意してある。
そして、俺はあるものを出した。
「それはなんです?」
「シャワーだ」
「シャワー?」
そう。
スタンド式の簡易シャワーだ。
ボックス式で外から見えないようになっていて、蛇口を捻ると暖かいお湯が出る。
実は、俺のインベントリから器用に繋いでお湯を出しているだけなので、特にギミックは何もない。
使った排水も同様に処理している。
エドは呆れたような顔をしていたが、チームで紅一点のエリ-ンは目を輝かせていた。
皆で順繰りにシャワーを浴びて夕食の準備をする。
匂いが出るので石鹸類は使用していない。
それでも御湯が脂を洗い流してくれるので、結構さっぱりするもんだ。
夕食はハムステーキをチョイスする。
これはステーキよりも匂いがしない。
すでに焼いて持ってきた奴だしね。
スープはコンソメは匂いがキツイ気がするのでカップスープにした。
本当は栄養満点のポトフを出したかったんだがな。
パンにサラダ、後はスパゲティのミートソースも少し出した。
ビールを飲みたかったのだが自粛する。
この遠征は俺の訓練のために来ているんだからな。
せっかく高評価をしてもらえているのに、酒なんか飲んでいたら俺の株が下がっちまう。
明日の話をレクチャーをしてもらってから大人しく寝る事にした。
四人は二時間交代で見張りだ。
時間は砂時計で測るらしい。
御疲れ様。
俺はレーダーを警戒モードにして、あっという間に夢の住人となった。
異世界二十日目。
朝の五時に起床してトイレ(隅っこで!)。
ウォータージャグの水で顔を洗い、朝食を摂る。
朝はオムレツにヨーグルトもつける。
さっそくエリーンがヨーグルトに嵌っていた。
それから、いよいよ十一階へと進む。
ここはオークだ。
ここからはEランクゾーンなのだ
きたか!
ガタっ。
女騎士はどこだ!
ついに「くっころさん」に出会える。
さっそくレーダーに反応有り。
そして二体のくっころさんがやってきた!
ストーンバレットモードにセットした魔導ライフルを構えて撃ちまくる。
穴だらけになって派手に倒れるオーク達。
おお!
さすがは雑魚だけの事はあるな。
まあこの魔法銃って、元ネタとなった本物の銃より遙かに威力があるし。
二十ミリ機関砲並みの威力なのだから装甲車だってイチコロだぜ。
これならキングコングでも斃せるかもしれない。
キングコングも俺が中学生の頃のバージョンだと、攻撃ヘリから撃ちまくった二十ミリ機関砲らしきもので、あっさりとやられていたな。
あの頃のコングはCGではなく本物のロボットを使っていた。
むしろ技術的にCGで映画なんて作れなかったからな。
そして倒したオークは回収しまくった。
あちこちに、そこそこ簡易な罠があるが、デニスがいるので簡単に回避した。
ここでは落とし穴がメインだな。
罠感知があれば簡単に見つけられる。
俺もスキルで回避は出来るので、回避の練習だけはしておいた。
こういう事がメインカリキュラムのダンジョン教習なのだ。
少し罠解除の練習もさせてもらったし。
もう、ぐいぐいとダンジョンを突き進む。
十二階はホブゴブリンだ。
こいつの方がオークより上の扱いなのか?
ゴブリンのくせに体格も大柄な人間並みにあるしな。
しかも、かなり屈強な体をしている。
強さを確認するために、他を魔法銃で倒して一匹だけ残してから剣でやりあってみたが、確かにオークよりも強い。
しかも、こいつは冒険者から奪ったのか剣を持っていた。
オークは力任せで振るう事が出来る棍棒くらいしか持っていない。
ホブゴブリンは雑魚魔物の中でも上位種なので、それなりに知的レベルが高いという事か。
俺が白兵戦の練習をしていたので、二階分で三時間ほどかかってしまった。
ここいらで、ちょっと御茶休憩と洒落込んだ。
ここでは地球から持ち込んだ袋入りや箱入りの御菓子類を出してやったら、またエリーンがしっかりと味わっていた。
十三階はホブコボルト。
こいつらはホブゴブリンとそう変わらない。
だが犬系魔物のせいか人型なのに四つ足で走る事があり、さすがに結構早い。
まるで猿だ。
その辺りの事情からホブゴブリンよりもワンフロア上の扱いなのか。
四つ足だと背が低くなるので、白兵戦にはちょっと向かない相手だ。
今のところ、人型魔物は魔導ライフルの餌食でしかないのでガンガン撃ち倒して進む。
十四階はハーピーが出た。
こ、これはまた……実物は、なんともグロいな。
顔がまるでガルーダじゃないか。
やたらとでかい足の鉤爪が凶悪そのものだ。
翼長六メートルくらいないか?
ここはこいつが飛び回るから、そのサイズに合わせて広めの空間になっている。
もう目障りなんでエアカッターでバラバラに刻んだ。
どうせハーピーなら、もっと美女っぽい感じでオッパイのエロイような奴が出てこいよ。
十四階の終い頃に、いい休憩場所を見つけたので昼休憩を取ることにした。
今日のランチメニューは五平餅だ。
地元愛知県の観光地名物の定番料理なのに、これがある事さえ忘れていたよ。
そういや、これにも買い物衝動が膨れ上がったので買って来たんだった。
僅か数百円の投資で、こんな異世界で美味しい郷土料理がずっと食べられて本当に幸せさ。
これだからセブンスセンスの言う事に逆らってはいかんのだ。
若干香ばしい匂いが広がったが、エドも文句は言わずに黙々と食っていた。
結構気に入ったんだろう。
食後の御茶タイムの御菓子はエリーンの希望でプリンを採用した。
そこへ突然、何故か人が転がりこんできた。
冗談抜きに覚束ない感じの足取りで文字通り転がり込んできたのだ。
身なりの良さそうな人だが、なんだかボロボロだ。
五平餅が食べたいのかな?
「おお! 冒険者か!
頼む、一緒に来てくれ」
ほお、こいつは嵐の予感がするぜ。
俺の中で『あいつ』が騒ぐ気配がする。
この絶妙なタイミングでこういうハプニングが起こるという事は、明らかにタイミングを計っただろう奴の仕業であるのに違いあるまい。




