28-4 伝説の結婚式
結婚式はなんと、文金高島田と綿帽子だ。
もう稀人式にやってくれって言われたら、これしかないよな。
初代国王の故郷である日本の伝統スタイルで、最近は芸能人の間で流行っているので庶民にも人気だと言ったら、花嫁であるメリーヌ王女が超乗り気になっていた。
髪結い師の人達が大変だ。
当然、エルフさんが講師として派遣された。
着付けの問題もあるので彼女らを大量に召還した。
エルフ達はネットから落とした映像や、俺がスキルでプリントアウトした画像を元に奮戦した。
髪結いの練習のために、美容師さんなんかが練習で使う髪付きで頭だけのマネキンまで作ってみたのだ。
そしてシド殿下の和服姿は格好良すぎて思わず嫉妬した。
金髪青い目で足も長い。
それで着物も似合うなんて反則過ぎる。
着物なんて胴長短足用の装備なのだから。
だが作務衣なんかと違って足が隠れてしまうので外人さんでも着物はなんとか様になる。
日本に来て着物を着たがる外人さんは多いが、わざわざ短足仕様の被服である作務衣を着たがる人はそういまい。
いるとしたら、それはアニメなんかの影響だな。
あれは、はみ出てしまった足の長さを必ず持て余すから。
この異世界では俺専用装備かな。
なんとか俺に付き合えるのは山本さんくらいなのだが、生憎とあの人は俺よりも身長に比して足が長い。
シド殿下の着物の着こなしは、エルフさん達による着付けの腕前のせいもあるのだが。
着付けの出来る葵ちゃんもスタンバっているが、彼女は結婚式プロデュースの方がメインなのだ。
これを見て、何故かアルバトロスではなくてハイドにて「神前結婚式」がブームになってしまう。
もちろん、その神というものは主神ロスだけれど。
そのブームは、エルフさんが後になって王都シンフォニアに呉服店を開くほどの盛況となった。
彼らに弟子入りするハイド人が後を絶えず、エルフ新町のエルフさん達はハイド呉服の父として崇められる事になる。
結婚式では、正月使い回しの巫女服姿をしたファルがアルバトロス・ハイド両国の大神官と共に祝福を与える。
この国では、神聖エリオンを実際に目にするのは初めての人ばかりなので、これまた大注目のイベントなのだ。
舞い踊る、ファルが呼んだ顕現した精霊達。
俺も自分の加護のリストから連中を呼びつけておいた。
奴らの餌係は当然この俺だ。
レインも結婚式に参加したがったので精霊の森とゲートで繋ぐ。
いきなり式場に展開された不思議な空間に、参列者達の間から困惑と驚愕が入り混じったざわめきが捲き起こる。
無論、ハイド側には事前に通達してある。
彼らは本家神聖エリオンの到来を、今か今かと興奮のうちに待ちわびていた。
「私はレインボーファルス・アルファであるレイン。
またの名を神聖エリオン。
私の『御父さん』であるヤマト・フォン・アルバトロスの遠い子孫へ祝福を。
私の可愛い娘ファル、こっちへいらっしゃい」
ファルは、たたーっと可愛らしく母親の元へ走り寄ると、いつものようにレインボーファルス形態となってレインの頭の上の定位置に駆け上った。
そして親子で歌いだす祝福の聖歌。
武の子孫への慈みと、在りし日の船橋武への想いを込めてレインが歌う。
これが人里で神聖エリオンの二重奏が始めて披露された瞬間であった。
正確には、人里へゲートの魔法で繋がった精霊の森で行われたのだが。
その鮮烈なまでの祝福の波動の連打に、驚愕に目を見開き固まる参列者の人達。
ファルも母親に歌い方を教わったので、以前に比べると格段に上手になっていた。
舞台袖から、恭しくレインに向けて首を垂れるエルフ達。
そんなエルフ達に慈愛をこめた眼差しを送るレイン。
そして多くの興奮が厳かな式場に満ちた。
両国の関係者、また招かれた各国の関係者も、新しい時代の幕開けをひしひしと体で、いや魂で感じる事になった。
世界中からハイド王国に精霊達が集まってきて乱舞した。
御祝儀の魔力も目当てなので。
どさくさにまぎれた奴らも混じって、ハイドの王都シンフォニアの空に精霊のロンドを奏でまくった。
それは新しい伝説の始まりだった。
そして結婚式を執り行なうのは、かつての武の戦友であるバルドスの爺である。
「ちなみに、この宮司さんは伝説に登場する初代国王の盟友たる白銀竜バルドスです」
さらっと紹介したのは俺だ。
そして皺だらけの顔でにっこりと笑うエンシェントドラゴン(人化中)。
彼の紹介も行われ、その生ける伝説に誰もが目を剥いた。
この世界で最も由緒正しい宮司さんだからな。
式場には孫のジェニーちゃんの姿もある。
当然、正月から着ている巫女さんスタイルだった。
それも結婚式用に更にグレードアップされていて、エルフさんがきっちりと仕上げてくれた。
人々が畏怖の目を大好きな御爺ちゃんに向けるのを見て、彼女が叫ぶ。
「おじいちゃん、すご~い」
それをドラゴンイヤーで拾い上げたものか、爺がなんか調子くれているようで、超古龍なドラゴンにしか発する事の出来ない特別な調子で式辞を読み上げた。
もう稀人式でもなんでもなくなっている。
聞いていて凄くありがたい感じはしたけれども。
更には、初代国王の妹からの直接メッセージの御披露だ。
真理さんにも御祝いのビデオメールを御願いしておいたのだ。
それを紹介するのは、こっちの真理だ。
真理は自らをも、こう紹介した。
「私は初代国王に作られた、千年もの時を過ごした魔導ホムンクルスです。
初代国王の相棒を務めておりました」
それらの儀式は今回の結婚式が、伝統に裏付けられた新たな盟約である事を更に深く関係者に対して知らしめた。
やがて日本の真理さんからのメッセージの再生が始まった。
「皆様、御初に御目にかかります。
アルバトロス王国初代国王、ヤマト・フォン・アルバトロスの妹、船橋真理でございます。
この度は本当におめでとうございます。
兄、船橋武の子孫が、このような形で地域の平和と安定に貢献している姿を見て、感激に堪えません。
御二人も大熱愛の末のゴールと聞き及んでおります。
どうか末永くお幸せに。
稀人の国から愛を込めて」
短いが心の篭った挨拶に、参列者からも感嘆の声が上がった。
日本人の挨拶の品のある所作に感銘を受けた人もいるようだ。
無論、こちらの言葉で真理が意味を伝えていく。
その姿と声の近似に、人々はまた伝説をひしと感じ取るのだった。
何故か神使姿のトーヤもいた。
御嫁入り道具として「ミシン」を献上するためだけに。
呼び出しの、ドワーフ国最年少国家特級技師の肩書きに場内が響く。
あれっ、何だ?
そんなに騒ぐような事なのか?
「元々ドワーフとは通常の取引をするのさえ中々大変な相手。
人前に、あの国の国家特級技師が現れる事など、まずありえません。
しかも、こんな獣人の子供が最年少国家特級技師だとは!」
驚く俺の耳元で囁いてくれたのはハイドの宰相さんだ。
俺の扱いは国賓に近いものになっており、宰相自ら俺の世話役になっている。
この国王結婚式は絶対に失敗出来ないものな。
「いや、あれはあの子が実力で勝ち得たものですから。
ドワーフの一方的な都合で勝手に任命されたのです。
しかも、お……国王自ら」
うっかり、親方自らとか言いかけてしまったのは内緒だ。
それを聞いて、宰相はなおさら目を瞠る。
まあ、あのミシンを見てくれたら今にわかるよ。
そして戴冠式が始まった。
そちらもバルドスが担当してくれていた。
ファルも一緒に祝福を与えている。
ハイド・アルバトロス・サイラスの国王達、各国の大使、国内有力貴族などが見守る中、ハイド王国に若き新国王が誕生した。
日頃ご愛読ありがとうございます。10月9日から投稿を始めて、本日で4か月目に突入しました。
今のところ皆勤賞です。
頑張りますので、これからも宜しくお願いいたしします。




