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28-3 ハイドの王宮へ

 とりあえず王都の中へと入り、中心街・王宮前・その他の場所に十分な転移ポイントを作って、また王都の外へ出た。


「え? どうしてまた街の外へ?」


 真理が不思議そうに訊いてくる。


「何を言う。

 せっかく海運が盛んなこの国に来たんだぞ。

 海運が盛んという事は、海の強力な魔物と戦っているという事。

 つまり、漁もまた盛んなり。

 このまま海までいくぞ」


 何を当たり前の事を聞くんだと、俺は軽く憤慨する。

 呆れ顔の真理は放っておいて、ささっと車ごと飛び上がった。


「うみって、なあにー」


 レミが可愛く、こくんと小首を傾げて訊いてくる。


 そうか、まだ海は見た事ないよな。

 赤ん坊を卒業したら即ストリートチルドレン・デビューなんだもんな。

 そもそも内陸の子は海を知らない子が殆どだろう。

 日本と違って、電車や車でおでかけしたりしないからな。


 プール用に子供達の水着は作っておいたし、夏には皆で海水浴に行くか。

 去年は帝国が攻めてきていて、それどころじゃなかったし。


「楽しいところさー」

「ふうん」


 なんだか知らないが、レミも楽しみにする事にしたようだ。


 おチビは二人とも、また窓に張り付いている。

 それから色々な風景が窓の外を流れていったが、二人ともいつのまにか寝てしまっていた。


 ちょっとチビ達を寝かせておきながら、俺も空中ドライブを楽しむ。

 今日は無粋な飛行魔物も出てこない。

 海に向かっているせいだろうか。

 あいつらは海上にも結構な数がいるはずなのだが。


 大きな港を見つけたので覗いてみる事にする。

 下りる前にチビどもを起こして声をかけた。


「ほうら、海についたぞ。

 でっかい港だ」


「みなとー」

「うみー」


 初めて見る風景に、おチビ達も熱中している。

 下でも、初めて見る空飛ぶ自動車に港では野次馬が集まっていた。

 そんな物がいたら日本だって人が集まっちゃうけどね。


 そいつも外国じゃ、そろそろ実際に飛んでいる頃だ。

 まああれもビジネス的に考えると、量子コンピューターや本物のAIなんかと並んで、中々本格的に実用化しない物の代表格だがな。


 たぶん実際に運行したら悲惨な事故だらけになる。

 だって航空機扱いなのに飛行機免許じゃなくて自動車免許で運行し、まったくの航空素人が乗って飛ぶんだぜ。

 落ちたら操縦者と同乗者は確実に死ぬし、下にある人や物にも大被害が出る。

 保険料の算定が大変だぜ。

 ドローンだって落下して人の頭に落ちるから、厳しい規制が敷かれているというのに。


 今は試験車両が飛ぶだけだからいいけど、大勢が好き勝手に飛ぶようになったらなあ。

 地べたを走っているだけでも、みんな我儘ばかり言ってルールもマナーも守らないから悲惨な事故が絶えんというのに立体交通化なんてした日には。


 人間は欲深く我儘なのだ。

 愚かすぎる人間社会は、空飛ぶ自動車を運行出来るほどの公共心や譲り合いの精神を微塵も保てない。


 自動運転は、下手をするとそれ以上に事故が起きる。

 人間同等の能力を持たせたってたぶん事故は無くならないのに、今のレベルのAI風情の能力じゃなあ。


 俺は些細な事には構わずに堂々と港へ乗り付けると開口一番にこう言った。


「蟹はどこだ」

「蟹?」


 そこにいた漁師さんらしき人が訊き返してきた。

 これまた筋骨隆々な御方ばかりで、腕の太さなんて俺の太腿くらいはありそうだ。


「そう。

 毛蟹漁が盛んだと聞いてきたんだ!」


「けがに!」

「毛蟹!」

「ケガニ~!?」


 な、なんか反応が変だな。

 なんだか妙に驚かれているし。


 うん、そうだよ?

 毛蟹、美味しいよね……。


「いや、あれはそうおいそれと獲れるものでは」

「しかし慶事に使う物だから、王宮が討伐隊を出しているのでは」

「いずれにせよ、港になんか並ぶ代物ではないのでは」


 なんだ、それは。

 とう……ばつ……たい?


「そうそう。

 その昔、アルバトロスの初代国王が、この国に毛蟹を狩りにきたという伝説が!」


 マジですか。

 え? 狩り……だと?

 思わず真理を見るが、なんか意味ありげに笑っている。


「すぐにわかるわよ」


「港に毛蟹は売っていないのかあ……。

 楽しみにしていたのに。

 じゃあ、代わりに何か美味い海の幸をくれ」


「それなら、うちで買ってくれ」

「うちのも新鮮だぞ!」

「うちも見ていってくれやあ」


 どいつもこいつも、顔や体に歴戦の傷痕を刻む勇者揃いだ。

 一見すると一癖も二癖もありそうな連中に見えるが、こう見えて只の漁師さんばかりだ。

 鑑定すれば、皆善良な市民だった。


 見かけは海賊船長にしか見えんのだけれど。

 ちょっと海賊帽を被せてみちゃ駄目かな。


 新鮮な海の幸を一通り見させてもらって、かなりの量を買わせてもらった。

 地球と違う種類もあってよくわからないのだが、どうやらマグロは無かったようだ。


「マグロ?

 ああ、それはサイラスの方で獲れる奴じゃないか?

 確か、アルバトロスの初代国王が……」


 うん、それは知ってる。

 その伝説、御本人の妹には馬鹿受けだった。


「やっだ、御兄ちゃんったら。

 マグロ好きにも、ほどがあるわあ。

 よく晩御飯にもマグロが並んでいたわね。

 ボーナス日には、近海物の生マグロの赤身に、中トロ大トロまで並べて。

 いけない、あたしもなんだかマグロが食べたくなってきちゃったわ」


 スーパーに行けば、より取り見取りでマグロを買える生活かー。

 羨ましくて泣けてきたっけな。

 まあ、これで俺の用事は済んだ。



 王都の王宮前に戻り、スマホで連絡を入れた。

 準備はいいと。

 下見といっても俺の方の準備だけなので、他の人は本番目前の態勢なのだ。


 俺達はハイドの王宮へと迎え入れられた。

 ここはアルバトロスとは違い、かなりモダンな作りだ。

 よく知らない人だと王宮だと思わないかもしれない。

 大掛かりな商業ギルドだと言われれば、知らない人なら納得してしまうかもしれない。


 海運国家として開かれたイメージを打ち出したいのだろう。

 多くの大陸外の国とも付き合うのだから。


 帝国なんかは逆に、新興国家のくせに威厳を取り繕う感じに仕立ててある。

 いずれにせよ、王宮が工房な国よりはきっとマシだと思う。

 あれは絶対に駄目だ。


 出迎えてくれるのは、なんとシド殿下その人だった。

 もちろん顔見知りなので何も困らない。

 だが。


「おっす!」


 はい、おチビさんの得意の挨拶が出ました。

 やられた側のシド殿下はもう大爆笑だ。

 やべえ……。


「ああいやグランバースト卿、どうか御気になさらずに。

 このところ、式の準備でてんてこ舞いでして。

 今日も緊張しまくっていましてね。

 いや、ちょっとツボに入りました」


「い、いやあどうも~」


 おチビさんが、なんか物凄いドヤ顔だし。

 恐ろしい子だわ。

 でも王子の侍女さん達も笑っているし、まあいいかな。


 そして予定通りにメリーヌ殿下を御迎えに行く。

 特別にゲートを開かせてもらう。


 ハイド側は王女を緊張させぬように、シド王太子と御付きの人だけで迎える。

 このあたりは大陸同士を繋ぐ大掛かりな貿易のビジネスをしているだけの事はある気配りだ。


 見つめる二人の間に艶かしい雰囲気が漂う。

 それから山本さん、エリ、葵ちゃん、そしてアルスとエルフ軍団がやってくる。


 アルスは、寄り添う御二人に目線で礼をした。

 二人も同じように返す。

 分解寸前であった魔力嵐の只中にあった空中庭園では、二人を守るアルスが天下無双だったらしい。

 このおっさんも戦うのを嫌がった、あの強者バランがアルスの相手をするのを嫌がって引いたと聞く。


 アルバトロス国王夫妻とエミリオ殿下も一緒だ。

 生憎と王太子様ならびに国家情報局長は完全にダウンのようだ。

 体は再生されたのだが、精神的に休養が必要らしい。

 よくぞ正月が終るまでもったものだ。

 今は仲良く兄弟二人揃って寝込んでいる。


 国王陛下曰く。


「お前らもまだまだじゃな。

 もういっぺん最初から鍛え直しじゃ!」


 自動的にエミリオ殿下が、結婚式出席のための兄弟代表に就任した。

 ハイド国民にはその方が大歓迎だった。

 朴念仁の王太子や、表向きは評判の悪い第二王子なんか御呼びではないのだ。


 この国でもエミリオ殿下は人気だったりする。

 特に、メリーヌ殿下とシド殿下の間を幼い王子が取り持った物語が庶民の中では大人気だ。

 何よりも可愛いしな。

 どこへいっても可愛いは正義なのだ。


 そして国を挙げての前夜祭が行われた。

 貴族達は王宮で祝宴のパーティを、そして国民達も広場で踊りまくった。


 長年、割を食わせ続けたアルバトロス王国に対してハイド王国は最大限の配慮(せいい)を見せ、とにかく結婚式は派手に盛り上げるべく尽力した。


「結婚式は(アルバトロス王国の)花嫁が主役」という訳だ。


 何よりも、メリーヌ王女は絶世の美少女なので少し押すだけで世間は勝手に盛り上がるから、ハイドの担当者はまだ楽が出来ているように思う。


 ロスの感謝祭に加え、今年は派手に催しをやるのだ。

 商人達は大張り切りで、国民もこの何十年かに一回のイベントを何日かに分けて行われる前夜祭も含めて楽しみまくっていた。


 ハイド王国、なかなかいい国だな。

 俺達も、色々と挨拶が終わったら街へと繰り出す予定なのだ。



 そして俺がエミリオ殿下を街へ連れ出すので、それがまたハイド国民からは好評だ。

 普通は国賓級の御客様でこういう事はない。


 今回は俺が引率なので、エミリオのためにアルバトロスの王国騎士団は来ておらず、護衛を任されているハイド騎士団は冷や汗ものだったようだが。


 ミレーヌ王女に関しては、アルバトロス王国側からは「もう嫁に出した娘」扱いなので、既に正式にハイド王国騎士団の管轄なのだ。


 もちろん俺は派手な爆炎スタイルを披露している。

 一緒に強面スタイルの精霊を三体ほど引き連れていた。

 そういう訳で、いろんな意味で大注目だった。

 そして人々が俺を指差して囁く。


「あれが、あれが、あれがアルバトロスの【魔王】か」

 

 おい! 精霊を略すな、精霊を。

 ちゃんと精霊を顕現させて引き連れているだろ!


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