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24-6 みんなで楽しく

 御昼時になったので、皆と一緒にアドロス中央広場の屋台街へ跳んだ。

 というか、今日は歩いてゲートを通り抜けただけなのだが。

 ここはその昔、俺が盗賊ギルドのチンピラを痛めつけていた場所だ。

 今日の屋台はクリスマスSPなのだ。


 俺はレミとファルを連れて、SPカップケーキの屋台へ向かう。

 こいつはレミ用に特別に出店してもらったのだ。


 本日の目玉はデコレーションカップケーキだ。

 土台はフルーツケーキで、真ん中で切ってジャムを塗ってある。

 表には白いクリームが塗られており、手で持てるように下の部分にはクリームは塗られていない。

 殆ど一端のショートケーキだな。

 上にはベリー類や南方産のマンゴーっぽい果実が飾られており、そして色とりどりのチョコチップがちりばめられている。


 レミは最初じーっと値踏みするように見ていたが、一口カプっと頬張って満面の笑顔を見せてくれた。

 ちゃんと美味しかったようで、よかったよかった。

 ファルはとっくに口の周りをクリームだらけにしている。


 実はあちこちに精霊達が混じっている。

 御小遣いをやって、子供の姿で参加してもらっているのだ。

 精霊がそこにいるだけで祝福が与えられるような現象があるので、イベントに花を添えてもらったのだ。


 はっと気が付くと、俺の後ろに子供(姿の精霊)の群れが大量に顕現していた。

 俺の自然放射魔力に寄ってきちゃったのね。

 仕方が無いので魔力を大放出してやる。


 たっぷりと魔力を貰えたので、今度はおやつの屋台に向かって一斉に散っていった。

 相変わらず現金な奴らだ。

 全員ファルにすりすりしてから立ち去った。

 本能的に精霊達を撫でてやるファル。


 そういや、この異世界のクリスマスなんて、本来ならこの子が主役みたいなもんだった。

 時折、そういう事を忘れている自分がいる。

 ただの、うちの可愛いチビのような気がして。

 最近は人化しっぱなしなので、当初のペット枠から外れて久しい。


 次に行ったのがクレープ屋台で、ファルは両手に持っていた。

 イチゴとチョコだ。


 レミは生クリームのグレープソースがけをチョイスした。

 案外とレミはブドウちゃんが好きなのである。


 おっさんは、おかずクレープでサラダ巻きをがっつりと。

 海苔巻きのサラダ巻きのクレープ版だ。

 まぐろのオイル漬けは多めで。


 そう、とうとうマグロを手にいれたのだ。

 缶詰のツナオイル漬けはあるんだけどなあ。

 やはり生のマグロから手間暇かけて丹念に作られた逸品は違う。


 日本でも超高級ツナ缶は目の玉が飛び出るほどの値段がして、しかも数量限定なので発売後に一瞬にして売り切れる。

 唸るほど金を持っている奴らが配布開始を待ち構えているものらしい。


 マグロの入手先はエミリオ殿下の婿養子予定先からだ。

 もちろん武の故事に倣って、漁師さんの案内で俺が海の上を疾走して獲ってきた。

 当然、「マグローっ」と叫びながら漁をするのが御作法だな。

 あれもマグロ漁のやり方としては案外と悪くないものだ(ホンマかいな)。

 いや手でさっと捕まえた方が身も傷みにくいだろ。


 御腹の膨れたレミがうつらうつらし始めていた。

 もう御昼寝の時間だ。

 班毎に子供達の回収作業が進んでいく。

 本番である夜に備えて、みんなしっかりと寝かせておくのだ。


 こんな世界で夜に子供を外に出すと厄介なので、晩の時間はおうちパーティで。

 そのため庭に大型ツリーを用意してあるのだから。

 夜は殿下達がこっちへ来るだろうし。 


「やっと寝てくれましたね」

「まだ夜がありますからね~」


 そういう事なので、暇になったケモミミ園の職員さん達と軽く御茶を嗜んだ。


「いつも済まないねー」

「それは言わない約束でしょう~、おとっつぁん」


 そんな感じに、職員さん達といつもの軽口を叩き合いながら、ついでに夜の段取りとかの確認をする。



 それから大神殿へも顔を出しておいた。

 ここも一応クリスマスの飾りつけはしてある。


 神殿内なので、やや小ぶりのツリーになったけれど。

 今晩は精霊達にも活躍してもらう手筈なので、御機嫌取りに魔力を振りまいておく。


 今日はジェシカもサンタ姿だ。

 大神官らしくスカートは若干長めだが。

 ブログに載せる用にミニスカ姿の物も別で撮らせてもらってある。

 ちょっと恥ずかしそうにしていたので、なかなかいい写真になった。


 可愛いサンタ大神官は信者さんにも好評のようだった。

 これは今日明日だけの特別なサービスなのだ。


 元々クリスマスは異世界地球では一種の神事のような物で、サンタさんも本来はキリスト教のセイント(聖人)に列せられているはずだ。


 あの馬鹿騒ぎが好きなアメリカ人も、敬謙なクリスチャンは基本的に家族と静かに過ごすと言われている。

 日本人がアメリカで本場のクリスマスを楽しもうとすると、日本と違って街が物凄く静かで、あれっと思うような事もあるらしい。

 

「今夜は頼むぜ~」

「御任せください」


 むろん大神殿の事だから、頼み事を聞いてもらうのはタダじゃないけど。

 まあ、この国の神殿はまだマシなほうだからなー。

 ジェシカの比較的優雅な暮らしぶりを見ていれば、マリーナの場合と同等には扱えない。


 とりあえず、そう深くは突っ込まない。

 俺だって、そうそう神殿の不正なんかに構っていられるほど暇じゃないのだ。

 正月明けにまだ重要案件が残っていて、その後は幼稚園の初卒園式と、一大事業である小学校開校が待っているのだから。


 頭を撫でてもらおうと顕現してきた大神殿付きの精霊達をもふって、魔力とおやつもやってからケモミミ園へ帰った。

 彼女の家族も同然である精霊達と一緒に食べるようにと、クリスマスケーキもたくさんジェシカのアイテムボックスに突っ込んでおいた。


 その後で帝国大神殿の方にも顔を出した。

 もうクリスマス行事のための精霊出動の打ち合わせは終わっている。

 大司祭代理のマリーナを補佐するために出張中のシルヴィが真っ先に寄って来た。

 この子に魔力をちゅうちゅうさせてから、ここの精霊達にもケーキなどの差し入れを行う。


 レーダーで見ると、それと併せて俺の魔力で面白いくらい精霊が釣れているな。

 ケーキとは別に今食べるおやつの御菓子も出してやった。

 すると、次々と顕現してくる子供姿の精霊達がいた。


 ここの精霊は元々魔力をあまり貰えていなかったせいか、如何にも精霊みたいな物凄い姿ではなく、幼気な子供姿で出てくる。


 マリーナにも、もうアイテムボックスを渡しておいた。

 御菓子や御飯をいっぱい詰めて。


 それからマリーナに挨拶をしておく。


「顔色がよくなったね」


「御蔭様で。

 あのままだったら、そのうちに耐えられなくなっていたかもしれません」


 嬉しそうに精霊達の頭をもふりながらそう言う彼女に頼んでおいた。

 今夜は、ここの精霊にも仕事を任せてあるのだ。


「じゃあ、今夜は御願いね~」

「御任せください」


 帝国大神殿を辞して、それからブラウン伯爵のところへも顔を出す。

 彼も随分と血色がよくなったようだ。

 一時の焦燥が嘘のような、いい顔をしている。


「ブラウン伯爵、御久しぶり。

 元気そうだね」


「御蔭様で、それはもう。

 ヤマモトは元気にしてますか」


「うん。元気元気。

 美人のエルフさんに囲まれて鼻の下を伸ばしているよ」


 そいつは俺も一緒なんだけどね。


「それはよかった。

 そうそう、クリスマスですか。

 あれはいいですね、実に楽しいです。

 御蔭様でラッピングの商売も順調ですよ」


 ブラウン伯も嬉しそうに体を震わせた。 

 この武功に偏っていた帝国にも、順調にクリスマスが根付きつつあるようだ。

 それから商材の補充をしてあげて、エリの特製クリスマスケーキもたくさん御裾分けした。

 どうせブラウン伯の事だから、きっと使用人達にも分けてやるんだろうから。



 ケモミミ園のクリスマスパーティ準備も着々と進んでいる。

 日本の御菓子メーカー製品のパーティバージョンも色々と作ってみた。

 日本から持ってきた御菓子を分解した材料とかから色々と加工したものだ。

 パッケージとかも、アイテムボックスの機能でネット画像から精細に再現した。


 もう子供達もぼつぼつと起き上がってきて、我慢出来なくてつまみ食いを始めている奴も出始めている。

 何しろ細胞分裂のスピードが大人とは決定的に違うからな。

 獣人という、体力自慢な種族であるのもある。


 あと飢えていた時代が長いので、食える時に食うという習慣がなかなか抜けない。

 そんな慌ただしい生活も、大人になったらきっと懐かしく思うことだろう。


「「「御邪魔しまーす」」」


 王子王女連が、気が逸ってもう御到着あそばした。

 御付きの人や騎士達も全員サンタ姿だ。

 侍女さんなんかも、全員ほぼ貴族の子女だから、なんだか凄く気品のあるサンタ軍団だ。


 俺が作ったクラッカーが思いっきり鳴る。

 いきなりの耳慣れぬ大音響に、鋭敏なミミを抑えている子もいた。

 そいつを耳元で鳴らされて、怒って追いかけている子も。


 まあ、こういう事はいつもの風景だ。 

 それを見守っている真理も楽しそうだ。


「お前、武とクリスマスはやらなかったの?」


「やるにはやったわよ。

 でも、まあ内輪でね。

 建国したばかりで、国をあげてまではとてもじゃないけれど。

 みんなが御飯を食べられれば、それだけで幸せだったのよ」


 そう言って真理は夢見るように、また懐かしむような顔で昔の生活に思いを馳せた。


「そうか。そうだよな」


「でも、ミレーユ様がクリスマスってなあに? って聞くから、一生懸命やっていたわね。

 ここまで美味しい御馳走は望めなかったけれど。

 それでも、みんな幸せだったわ。

 もう一度クリスマスがやれるなんて思いもしなかった。

 あの人が死んで以来だもの」


 うーん、コメントのしようもないな。

 千年近くもぼっちか~。


 そして、どこか遠くを見るような目で宙を見つめる真理。

 楽しかった、武がいた時代を思い出しているのだろうか。


 ん? これって……なんだか、本当に遠くを見ているようだ。


「千里眼か」


 自分も多少は使えるからわかるのだが、これはまさしく千里眼を使っている時の顔だな。

 まさか人造生物である魔導ホムンクルスが、生物固有の能力であるESPの千里眼を使えるとは。

 さすが武の創造物だけあって、こいつも大概だな。

 俺が使っていた様子から見取ったのか?

 しかし、一体何を見ているんだ。


 すると、真理はいきなり立ち上がると「ちょっと行ってきます」と言い残して、転移魔法で虚空に消えた。


「え? 真理、こんな時にどこへ行くんだい」


 俺は慌ててアルスに声をかけた。


「俺も、ちょっと一緒に行ってくる!」


 そして真理の転移ををトレースしてジャンプした。

 アルスがレミを抱っこしながら、一緒に手を振ってくれているのを横目で見ながら。


 メリークリスマス。

 本日はイブSPで二本立てです。

 二本目は20時公開です。



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