24-5 クリスマス開幕
一部酷い内容もあったのだが、クリスマスの準備はなんとか間に合った。
関係者の苦労と努力を大いに称えたい。
今日はクリスマスイブなので、朝から園児達が張り切っている。
張り切り過ぎて本番である夜になって電池が切れていなきゃあいいんだが。
「うおー、クリスマスイブー」
「ごちそう、いっぱいたべるのー」
「ケーキ~」
多くのミミが歓喜に踊っていた。
みんなで準備もいっぱいしたからね~。
子供達のテンションが高い。
もっとも、この世界にキリスト様はいないんだけどね。
その代わりに、この異世界においてはイエスキリストに相当するような、神の子たる神聖エリオン様はみんなと一緒に大はしゃぎだ。
この世界ではファルスマスとでも呼んでおいた方がいいのかね。
まあ、とりあえずはクリスマスという事で。
クリスマスムードに湧く、アドロスの商業ギルドは朝から非常に賑わっている。
彼らもクリスマスの準備に大忙しだ。
屋台は昼前から出る。
御昼御飯は付き添い付きで園児達も広場へ行く予定だ。
かつては、たまに余り物を貰うだけだった屋台御飯も、今では担当職員に買ってもらって好きな物を食べられる。
広場の一角には、安全な転移の受け入れのためのステーションを設けておいた。
準備は万端だ。
さっそく新魔法の御披露目といくか。
「ゲート」
今回の魔法は、このイベント専用設計の特別な奴だ。
ゲートは少々危険な魔法なので、念入りに使用の許可を取っておいた。
こいつは使い方を間違えると、ワープゲートのような物を通って大軍勢すら空間を越えて運んでしまえる魔法なので。
そういう意味では、本来なら俺には必要ない魔法なのだ。
自分で転移して、アイテムボックスからゴーレム軍を出せば、どんな国でも制圧可能なのだから。
このようなイベントくらいしか使い道はない。
これについて確認を取りにいった時、ミハエル殿下が物凄い顔をして睨んでいたのだが、まあそれはいつもの事だから気にしない。
これでケモミミ園・アドロス中央広場・王宮の中庭・王宮前広場・エルフ新町が全て繋がる。
もちろん、通行許可が下りるのは関係者だけなのだが。
ゲート接続地点には分厚いオリハルコン製の大きめのポッドがあり、いざとなったら物理的にもシャットダウンが可能だ。
その内壁には超強力バリヤーを展開してしまう事も可能だ。
あのバランのような奴が襲来しても、その中に閉じ込められるようにという配慮なのだ。
実際にはどうなんだろうなあ。
空中庭園事件の際にバランのスキルを拝んだ事のある方々に見てもらったが、皆激しく唸って首を捻っていた。
奴と対峙した当事者であるアルスは首を竦めていたし。
バランは、それほど凄い奴だったらしい。
何しろこのポッドは、これだけ莫大な量のオリハルコンでこしらえた、通常ならば天文学的な費用がかかる耐爆壕のように頑丈な代物なのだ。
人の身でこれをどうにかしてしまえるような奴がいたら、それはもう豪い事なのだから。
あ、これを作った本人である俺は別勘定ね。
ドワーフの親方なんかはどうなんだろうな。
これを壊せたら素材のオリハルコンを全て持って帰っていいと言ったら、もしかしたら本当にやってしまうかもしれんな。
あいつらって、自力でオリハルコンを加工できるし。
万が一の場合に備え、ゲート魔法の緊急閉鎖の機能も組み込んである。
警備は騎士団だけに留まらず、冒険者、精霊、ゴーレム、エルフさんと多彩に渡る。
もっとも、警備の人もみんな結構浮かれていたのだが。
更に試練の山のバルドス一家も遊びに来た。
ちょこっと御山からケモミミ園にまでゲートを繋いでおいたので。
バルドスは王太子の儀の見届け人なのだから、さすがにミハエルからも駄目とは言われなかった。
「何これ、おもしろーい」
ジェニーちゃんが楽しそうに、あっちこっちを行き来していた。
子供達は班分けして、引率の職員や警備員と一緒に回る。
みんな、まずは王宮中庭行きのゲートへ殺到した。
ちゃんと順番に並んでいたけどね。
前にアントニオの結婚式の時はファルとトーヤ以外は式場その他へ入れなかったから、他のみんなも王宮へ行きたかったんだね。
やっと行けたから、よかった、よかった。
王宮庭園に溢れる、ケモミミ園児の群れ。
御出迎えしてくれるのは王子様と王女様達だ。
「「「エミリオー」」」
敬称で殿下くらいは付けさせないといかんかなとは思ったのだが、まあ今日は無礼講という事でいいか。
ケモミミ園児達とエミリオ殿下が抱き合って笑う。
この子は将来婿入り先で、きっといい王になるだろう。
そう思わせるような気分のいい光景だった。
王宮の人達はそれを生暖かく見守ってくれているようだった。
このあたりの事は、この国もなかなかの物なんだよなあ。
王女様方もチビ達のミミとかをもふりまくりで、ちょっと幸せそうだ。
超美少女であるシルベスター王女は特に人気で、小さな子供達からむしゃぶりつかれていた。
中庭にはたくさんの貴族や商人、そして外国の賓客などもいるので、ちゃんと子供の島は専用で作ってある。
なんだか、テーブル席で御花見をしているような感じだ。
はっ、そういや今年は御花見もしないとな。
どこかに桜の木が生えていないものかなあ。
たっぷりとおやつ会を楽しんで、園児&王女王子の軍団を連れて、まずはエルフ新町へ向かう。
みんな、あちこちへ散らばっていって大はしゃぎだ。
初めて見るエルフさん、しかもミニスカサンタ姿に王族も大興奮だった。
「ねえ、グランバースト卿!
私達もあの可愛い格好をしてみたいです」
「もちろん、出来ますとも」
このアルさんに抜かりはない。
そう思って御姫様方の侍女さんに御願いして、ちゃんとそのサイズで作らせておいたのだ。
御姫様達は御付きの人と一緒に、そそくさと着替えに行った。
ついでにエミリオ殿下も当然のようにミニスカサンタコスを着せられていた。
「どうですか~?」
「いや、みんな可愛いですよ~」
御世辞抜きで可愛すぎる。
よし、ブログの今日の表紙はこれに差し替えだな!
特にシルベスター王女の輝きは半端じゃなかった。
まだ十三歳なのだが、メリーヌ王女も同じ歳の時には諸国の貴公子も大注目で色々と引き合いが殺到していたみたいだし。
うーん、挿絵が無くて残念だわ。
真理やエリ達も一緒に着替えてきたので、シルベスター王女と三人で写真を撮った。
真理が一番左で、その右がシルベスター殿下、そして真ん中がエリだ。
ちょっとエリが仲良しのシルベスター王女に甘えているような感じになってしまった。
色々と経験を積んで、最近はすっかり頼もしくなったエリだったが、まだまだ子供なのだ。
他の人達も色々組み合わせて写真を撮った。
ファルやレミもサンタ衣装にしてみた。
うん、なかなか可愛いぞ。
でも来年からサイズはもうちょっと考えよう。
普通の服と違うので、そのあたりを適当にしすぎた。
何せ、子供がいっぱいだからなあ。
だぶだぶサンタも結構可愛いけど。
そして、本日一番のゲストの登場だった。
「おう! こっちだ」
もちろん、俺を呼んでいるのは例のドワーフの大王だ。
今日は女将さんも御一緒である。
来賓の王族というよりは、職人さん御夫婦の海外旅行みたいな風情なのではあるが。
「やあ、女将さん。
いらっしゃい」
「どうも。
御招きに与りまして」
あ、いけねえ。
つい王妃様じゃなくて女将さんって言ってしまった。
この面子じゃ誰も気にしていないみたいだけど。
「親方~」
「お、トーヤか。
クリスマスも中々だな」
可愛らしい狐っ子の弟子に声をかけられて、筋肉達磨が目を細めた。
「うん、楽しいよ~。メリークリスマス」
ちゃんと可愛いサンタ姿のトーヤもはしゃいでいた。
向こうでは、なんと筋肉達磨の集団によるアカペラコーラスが始まった!
しかし、これがなかなかどうして、結構いい感じで様になっている。
さては葵ちゃんプロデュースなのか?
おまけに監督はアルスらしい。
彼も腕組みをして、楽しそうに見ている。
向こうではドワーフ女性陣による、普通のアカペラも始まった。
王宮からは貴族の子弟達もやってきて、エルフさんの美しさにもうメロメロだ。
将来の商売の布石として、希望者にはゲートの王宮ポータル経由で特別に招待してやったのだ。
招待されていなくても、馬車や馬を飛ばせばすぐに来れるような距離だけど。
実際に『えるふのクリスマス』の噂を聞きつけて、招待者以外で来ている人達も少なくない。
この街の将来の展望を測るために、とにかく色々な事をやらせているのだ。
よし、俺もなんかやろう。
「さーて、お立会い。
世にも珍しい、精霊魔王の大道芸だよ~。
さあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい」
そして俺はジャグリング用の四色ボールを取りだした。
ネットで見た華麗な技を次々に披露する。
まずはボール三個から。
それの難しい技まで一通り終えて、次は四個で。
「園長先生すご~い」
ニヤリ。
こいつは大成功だ~。
もう御気付きだろうか。
そう、不器用な俺にこんな凄い技なんて出来ようはずがない。
ネット動画や実際にやってみせてくれている動きを、魔法と合成するキャプチャー魔法の一種なのだ。
応用すれば、剣技などの武技を魔法で再現したりできる。
見取りでは武技なんかのコピーが出来ないから、こういう物を作ってみたのだ。
例によってズルをするために。
最近はグスタフだのバランだの、洒落にならないくらいとんでもないような奴らと対峙する羽目になっていたからな。
備えるだけは備えておかないとね。
本来なら、そうやって使うのが本筋なのだが、俺はほぼ大道芸の習得に使うためだけに使っているのだ。
いつか魔法なしで大道芸をマスターしたい!
パワーだけなら、有り余っているんだけど。
,
続いて、クラブをボールのように投げまくった。
クラブというのはボーリングのピンみたいな形をした、大道芸の空中へ放り投げるための道具だ。
実にカラフルな道具で、こいつを投げると空中でクルクルと回って、それはもう大変に綺麗なのだ。
ところが、あの筋肉大王と来た日には。
「俺にもやらせろ」としゃしゃり出てきた。
「おうおう、これだって簡単じゃあないんだぞ。
練習も無しでいきなりやれるもんなら、やってもらおうじゃないか」
そういう訳で、大道芸の道具を山ほど出してやる。
だが、あの筋肉達磨と来た日には、実に見事にこなしきった。
しかも物凄いスピードで投げまくって、周囲の貴族や大商人などのVIPな人々から大喝采を浴びていた。
目で追い切れないほどの超高速で、カラフルなクラブがまるで回転するプロペラのように舞い飛んでいた。
圧巻、これはまさしく圧巻という他はなかった。
これには、さすがの俺も舌を巻いて驚愕した。
そして、お次は口から火を吹きながらの芸だ。
親方がテキーラを吹いて、女将さんが火をつける。
この二人は相変わらずのおしどり夫婦ぶりだ。
女将さんもバトンを投げ始めた。
そして他のドワーフ達も次々と参戦していく。
みんな体格がいいから、非常に見栄えがする。
やがて、あの国では毎年宴会芸を磨くための大道芸の大会が開かれるようになる……のか!?
何故こいつらは、初めてやる事をこうもあっさりとこなすのか。
本当に恐ろしい奴らだ。




