24-2 エルフさんのクリスマス
可愛いミニスカサンタに会いたくて、ついつい通ってしまったエルフ新町。
ここは元々、俺が適当にでっち上げて急場凌ぎで作った街なのだが、エルフさん達が色々と手を入れて、今ではとてもそうは見えない。
いわゆる、これがセンスというものだろうか。
エルフさんには、そっち方面の仕事も考慮したい。
見るエルフさん、見るエルフさん、みんな楽しそうだ。
何しろ女性が八十パーセントの男女比率なのだ。
みんな超美人だから見ているほうも楽しいんだが。
しかも、結構エロフ生活が長かったせいか、皆さん胸のサイズがエルフサイズを完全に越えていらっしゃる。
園長先生が鼻の下を伸ばしていると、サンタ姿のアルスがやってきた。
「やあ、園長先生。
クリスマス、こんなもんでいいのかなあ」
「いいんじゃないの?
凄く雰囲気が出ているよ、出過ぎなくらいに」
こいつには、ネットで拾った資料をタブレットに落として渡してある。
しかも初めて持ったタブレットをさらっと使いこなしていたし。
自慢じゃないが、タブレットなるものを買ってから慣れるまで少し時間がかかった園長先生だったのだ。
エリやケモミミ園の連中もそうなんだけど、この世界の奴らは地球の技術をさらっと使いこなし過ぎだ。
それらをここへ持ち込んだくせに、自分では未だによく使いこなせてない俺の立場は……。
エルフ新町のあちこちに飾られているのはレインボーファルス。
レインとファルの姿絵である。
親子が揃った二重奏のシーンもある。
プロマイドとかも、たくさん渡してあるしね。
町の中央には、レインとファルを立体キャプチャーした彫像も建ててやってある。
ファルスこそが彼らの心の拠り所なのだから。
エルフさんのクリスマスとは、神聖エリオンを祭るという形でもいいかもしれない。
あ、他の人族の国でもそう変わらないのかもな。
「まあ園長先生、ちょっと味見をしていってくださいな」
食堂っぽくした感じの食事配給所の前を通りかかったら、調理をしていた白いコック服姿の美人エルフさんからお声がかかる。
「どれどれ。
お! いけますね」
エルフさんの料理はなかなか素晴らしいのだ。
伊達に長生きしていない。
エリがこの世界の素材に落とし込んで作ったものとか、日本から持ち込んだ調味料など、あと蟹やその他海産物、ドラゴンなんかの素材も持ち込んである。
当然、山本さんの技法とかも導入された。
山本さんはエルフさんの指導に来ていて、鼻の下を伸ばしっぱなしだった。
俺の鼻の下も伸びていたけど。
「こっちも味見を御願いします」
和服姿のエルフさんが、暖簾を潜って妖艶に声をかけてきた。
特に店を営業しているわけではないらしいが、気分で色々と和風に飾ってある。
仕草までも見事に様になってる。
日本でも西洋系の外人さんの女の人は、足が長いくせに着物とか浴衣とか着ていても結構似合う。
まあ長くて綺麗な足は隠れてしまうわけなのだが。
お、おお。
御料理でない方を、つい頂きたくなってしまう。
たとえ相手が元エロフさんとはいえ、さすがに領主としてそれは出来ない相談なのだが。
この街は男の理性を吹き飛ばす魔性の街だなあ……。
「うん。なかなかですね」
主に眼福だった。
和食とエルフがこんなに合うなんて思わなかった。
是非、小料理屋でもやってほしいな。
アルバから通う貴族の若い子弟とかが続出しそうだ。
いや……筋肉達磨どもが押し寄せてくるかもしれん。
結構、この町の装飾や設備のために奴らを連れてきたのだ。
代金はミシンで払い込み済みだし。
それに、この世界のドワーフとエルフは仲がいい。
さすがにエルフはドワーフどものように飲み散らかしたりしないが、肝臓の強さは人族の比ではない。
よくドワーフと一緒に飲んでいるようだし。
あれは俺以外の人族には、まず真似が出来ん芸当なのだ。
ここは一大飲み屋街にしてもいいかもしれない。
その他エンタメ要素も入れて。
なんらかの高速交通機関を用意して客を集めてくるかな。
アドロスとはまた違った趣にしてもらうのもいい。
あの街は冒険者のための街なので一般の街とはまったく様相が異なる。
あれは西部の開拓されたばかりの街とかゴールドラッシュに沸く金鉱の街なんかに近いのかもしれない。
どちらかといえば、ここはシンシティなどという今ではエセにしか聞こえない物騒な肩書を持つ現在のラスベガスのような雰囲気かもしれない。
あそこもたまに凄まじい銃撃事件の舞台になったりするし、うちも帝国辺りから攻められたりもしている。
どっちも警備員が強力な銃を持っているのが共通点だな。
ラスベガスとて元はダム工事村みたいな生い立ちを持ち、かつてはギャングが街を仕切っていた。
今では逆に砂漠の中の巨大タウンに成長したラスベガスにダム湖の水が食われて干上がりかかってしまっているようだが。
その湖が干上がった跡から、かつての『シンシティの名残り』が発見されたりするのは御愛嬌だ。
なんたってマフィアのボスの弁護士をやっていた人間が市長を長らく務めていたくらい怪しげな街だからな。
いっそこのアドロスの街をマカオやラスベガスみたいにするのはどうだろう。
世界中からショービジネスや俳優を目指す者が集まる町。
賭け事に、美味い食い物に最高の酒。
世界で一番美人が集まって、金の唸る町。
ハリウッドみたいに映画産業を興してもいいかもしれない。
エルフは精霊魔法を使える。
映像技術は精霊共に叩き込んであるし。
あるいは秋葉原化という手もある。
そう言ったら葵ちゃんが目の色を変えて理想を並べまくっていた。
もう口から泡を吹いていた。
そういや、この子は絵細工なんていうアニメみたいな物を作っていたな。
あれこれと多芸な子なんで、すっかり忘れていたのだが。
そうか、やはりディープなオタクさんだったのか……。
せっかくのエルフの町なのだから、出来ればとびっきり華やかにいきたいもんだな。
アドロスと王都とも交通機関で繋いでしまってもいいかもしれない。
精霊列車というのもいいかも。
エルフのためなら、あのがめつい精霊達も喜んで力を貸してくれるだろう。
ふらっとエルフの代官のところへ顔を出して、軽く一杯やりながら、そんな話をちらとしてみた。
「そうですか。
また精霊達と共に在れるというのなら、それもいい。
我々はもう神からも精霊からも見放された存在なのだと思っていました。
やると決まったなら努力は惜しみませんよ」
おお、この気が長くて自ら新しい行動には中々出られないような人達が、ちょっとやる気だ。
俺も頑張って工作するか。
とりあえず「精霊バス」でも作ってみる事にする。
エアカーみたいなものより、ちゃんと車輪で走る方がこの馬車が主流である世界では受け入れられやすいだろう。
まずはどんがらの製作から。
こいつは前に作ったバスからの使い回しだ。
ミスリル製の回転子を作って各車輪部に取り付けてみた。
単に精霊魔法で動かす力を受ける羽根車みたいな構造だ。
構造は簡単で、水車なんかのイメージかな。
各車輪にモーターの付いた4WDの電気自動車みたいなものだ。
ブレーキもミスリル製のディスクを、ミスリル台座のブレーキポッドで挟み込む感じで装備してみた。
そいつには魔力強化したブレーキパッドを取り付けた。
元は俺の車の物をベースにして創り上げた物だ。
細かい制御は全て精霊が人外の演算能力でやってくれるから、俺は稼動部分を精密にきちんと作っていくだけでいい。
あとはサスペンション。
こいつは馬車屋に頼んでおいた物もあるのだが、あれは馬車専用のような物になっていた。
あれはあれで、この世界の馬車の乗り心地や速度に改善を齎したのでいいのだが。
俺の場合は、持ち込んだ車の物をベースで使えるし、ネットを見ながら随時いろいろ作り溜めしておいたので、そこから改良していく事にしよう。
俺の車に使われている荒れ地用のサスペンションの方が、この世界では使い勝手がいいかもしれない。
ともすると街道ですら舗装がまったく無かったりするので。
ミニスカ・バスガイドの制服を作ってエルフさんに着てもらった。
いや、これが目当てだったわけじゃないよ。
うん、多分きっと……。
生憎とエルフさんは車掌さんじゃなくて運転手さんなのだが。
まあ、エルフさんが自分で運転するわけじゃないので、実質的には車掌さんみたいなものだけど。
一応不埒な客がいないよう、護衛のゴーレムを一体載せておこう。
俺でさえ、あのスラリとした御御足にクラクラきそうなのだから。
試運転もしてみたが、我ながらなかなかのものだ。
精霊もミニスカエルフさんと一緒で楽しそうなのは気のせいか。
もちろん俺は楽しかったけどね。
開業までには色々と改良しよう。
今回はバスによる高速大量輸送だけど、そのうちに王都までモノレールを配置したい。
いや、それは単に自分が乗りたいだけなんだけど。
異世界を駆け抜けるモノレール。
なんと楽しみな事か。
アドロスから王都までたった二十キロしかないので、愛知万博で使われていたような時速百二十キロ程度で素晴らしい乗り心地だったリニアモーターカーみたいな奴が理想だな。
むしろ魔法列車だと車輪付きよりも、車体が浮いている奴の方が作りやすいのだ。
その方式だとモノレールは作りにくいから、普通の高架鉄道にした方がいいかもしれない。
あの万博リニアは、俺の御気に入りなのだった。
浮いているから、まるで滑るような乗り心地なのだ。
低速リニアだから、びっくりするほど全然揺れない。
この世界のモノレールに時速五百キロなど不要なのだ。
中国のリニア鉄道は速いけど凄く揺れて怖いって、知り合いで乗った事がある人が言っていた。
まあ王都なんて、時速百二十キロでもアドロスからなら十分もあれば着いちゃう距離なんだしね。
プロマイドという言葉は、本来ならば『ブ』ロマイド(bromide)なのでしょうが、私の子供の頃はスターの写真のような物を『プ』ロマイドと通常呼んでいました。
今でも両方使われているようです。
今の若い人は「英語の語源がこうなのだからプとブが違うのはおかしい」と言われますが、昔は濁音のような物は発音がし難いと語源である英語は無視して日本語で発音しやすい物へと変わっていくのが普通でした。
なろうで御馴染みの「スタンピード」も、言いにくいのでスタンピートと言う向きも多かったように思います。
今でも検索すると、そういうスタンピー「ト」で、濁らない単語で出てくるものもあるかなと思います。
私の地元である西三河でいえば、たとえばトヨタ自動車さんの事を、通常は「トヨタさん」と呼びますが、あの会社を作った人は「豊田〈とよだ〉さん」です。
あれも事情があってそういう呼び方なのですが、ヤマハは山葉さんでスズキは鈴木さんが作ったという事で普通にそのままなのに面白いものです。
豊田市の下にある、徳川家康生誕の地として有名な岡崎市は「おかざき」であり、英語表記は「OKAZAKI」なのですが、街の名の有力な語源は「おかさき」となり、それが言いやすいように鈍って「おかざき」になったと言われます。
かつての旧岡崎図書館には「郷土資料室」という小さな部屋がありまして、そこにあった資料によれば、松平家の前に岡崎の砦(後の岡崎城)を築いた武将が、地形から見てその場所についてこう言ったと伝えられます。
「ここは龍の尾か先か」
その「尾か先」から取って、その砦のある地を「おかさき」と呼んだという伝承です。
つまり岡崎という地名の意味は「ヘッド オア テイル オブ ザ ドラゴン」という意味になります。
少し、なろうっぽい感じがしますね。
あくまで有力な説という事で、これが絶対だという訳ではありませんが、地元の郷土資料ではそういう事になっています。
今では、その「おかさき」の名を残した武将も、国道248号線沿いの幸田町にある御寺の苔生した墓の下で熟寝の夢を貪っていす。
「おかさき」という深い意味のある言葉と、言いやすいように訛ってしまった只の「おかざき」では全然意味が違いますよね。
岡崎という字が当てられているのは、城の建てられた地形から来ているのでしょう。
戦城という物は高い場所である岡(丘)に建てられるものであり、また「崎」という地名は水に関係する地名ですが、それに関しては岡崎の城が乙川と伊賀川に挟まれた場所にあったからだと思います。




