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22-3 宴は続く

 続いて運ばれてきたのはドラゴンの叩きだった。

 一般的な細かく叩いたアジの叩き風ではなく、無論カツオの叩きの方だ。

 料理人が四国の方なので、それは当然のメニューだ。

 これも中々のものだった。


 山本さん、作っておいてくれてありがとう。

 いやあ、こいつは日本酒に合うなあ。


 器も和風の中々凝った奴だ。

 こいつを作ったのは俺なんだけど。

 もちろん、ネットで見かけたデザインとアイテムボックスの能力で作ったんだけどね。

 美術は五段階評価で常に不動の二をキープしていたこの俺に、素でこんな良い物が出来るはずがない。


 グスタフとミハエル殿下が、オリジナル魔界の鎧の行く末に関して熱論を交わしている。

 生憎とその持ち主である俺は、美味い酒と料理に夢中なのであるが。


 更にはドラゴンの竜田揚げカレー味が間髪入れずに届く。

 名前からしてドラゴン料理に相応しい料理だ。

 しかもカレー味だ。

 俺はもう一回ビールを貰う事にした。


 なんだかんだ言って、さっきから香ばしい匂いがしていたので、三人共半分そっちに気を取られていたのだ。

 熱々のドラゴン肉を、はふはふ言って頬張りながら話の続きをやる。


 はっと気が付くと子供達もピクニックテーブルを出してきて、お外で御昼御飯だ。

 全員おミミをわふわふさせて、大人気メニューであるドラゴンの竜田揚げに齧り付いていた。


 ほっこりしながらグラスを傾けていると、なんか急にグスタフが愚痴を垂れ始めた。


「くそう、俺の人生は散々だった。

 所詮、俺は貴族の三男さ。

 だからこそ死ぬほど頑張ってきたというのに」


 そこからはグスタフの愚痴大会だ。

 ミハエルと共に、奴の愚痴をたっぷりと聞かされる羽目になった。


 ちょっと堪らないので、やむなくハンニバル大王とドワーフ軍団を召喚した。

 相変わらずミシンに取り付いていたのだが、「飲むぞ!」と言って強引に攫ってきたのだ。

 しかし、何か余計に収拾がつかなくなってきた。


「へえ、あのドワーフの大王様なのかあ。

 こいつはまた凄い筋肉だ」


「お前の体も、中々のものじゃないか。

 武具防具の作成に秀でた儂らドワーフなればこそ、鎧の上からでもそれがよくわかる。

 少々鍛えたとて、簡単にはそうならんものよ。

 どうだ、もし行くところがないなら、うちで鍛冶でもやるか。

 なあに、魔界の鎧付きでもまったく構わんぞ」


「あっはっは。

 そいつは凄いな。

 それに鎧の上から筋肉を褒められたのは初めてだ。

 いっそ、そうするのも悪くないのかもなあ」


 しかもグスタフの奴め、何故だか知らないのだが、妙にあの親方と気が合っているようだ。

 滅多に人を褒めないという、あのドワーフからも(主に筋肉が)気に入られているみたいだし。

 何だ、それ。


 そして、まだまだグスタフの愚痴は続く。


「この体になったために真面な生活には戻れない。

 結婚する予定だった婚約者の彼女とも別れた。

 家族と一緒に居るのも、家族に危険が及ぶかもしれんから家には帰れん」


 だったら、うちに来るなよな。

 うちは子供がいっぱいいる幼稚園兼孤児院なんだぞ。


 もう、その鎧のせいでグスタフは散々な人生だったらしい。

 魔界の鎧と、奴自身が着ているチート鎧も含めて。


「俺はAランク、そしてSランクを目指していた。

 そうなれば上級貴族として帝国に魔界の鎧に対する対処を求める事も出来たからな。

 それが毎回毎回邪魔が入り、中々Aランクへ上がれなかったんだ。

 お前と、あのアントニオの奴なんかも含めてな。

 それに今はもう皇帝も代替わりして、あの鎧に関わっていた連中もいなくなってしまったのさ。

 畜生」


 もうグスタフの愚痴が止まらない。

 また何故か筋肉達磨達が肩を組み、顔を真っ赤にしてコーラスしているし。

 やめろ、暑苦しい。

 もっとも、そいつは園児達には受けていたのだが。


 そして特製おだまき蒸しがやってきた。

 これは実家のうどん屋さんで人気だったそうで、さすがはプロの味だった。

 うまあ。

 手作り蒲鉾がまたいい味を出している。


 俺はまた日本酒に戻していた。

 こういう呑み方はあまり良くないのだが、今の体だとなんていう事はない。

 でも、何故かちゃんといい具合に酔えるんだよなあ。

 こういう具合も、きっと『あいつ』の仕業なのに違いない。

 ありがたいけどな。


 続いて天麩羅が揚がってきた。

 カリっとしていて中身はふっくらで、これまた最高。

 さすがは天麩羅うどんが実家の看板メニューだっただけの事はある。


 子供達が次々と轟沈し、職員や警備隊の手によって園内に運び込まれていく。

 しかし、宴はこれから(たけなわ)なのだ。


 何しろドワーフを大量に呼んだのだ。

 ミハエル殿下が一人で辛気臭い顔をしていても、もうどうにもならない。

 彼もやけになって、とことん飲む事に決めたようだ。

 どの道、この問題の先行きを見届けない事には、彼も帰るに帰れないのだから。


「私だってね、私だって色々と思う事はあるんですよ……」


 あ、王子様の愚痴も始まった。

 この人もかなり溜め込んでいるみたいだしなあ。

 さすがは縁の下の王子様だ。


 箸休めに御作り蒲鉾とだし巻き卵をいただく。

 白菜っぽい漬物が付け合わせに付いてきた。


 蒲鉾にはドラゴン模様が入っている。

 二種類あって、もう一つは俺の爆炎のエンブレムだ。

 これもなかなかに見事な造形で、味は無論最高だ。

 ああ、今年は御節料理が楽しみだなあ。


 帝国の海は北方海産物の宝庫で、素晴らしい漁場があるのだ。

 岩礁なども険しく、また海に魔物も多いため漁は困難を極めるが、我がゴーレム隊は果敢に攻めるのだ。


 あの舎弟皇帝にも、ちゃんと料理を御裾分けしている。

 あと日本の調味料や山本さんの料理に和菓子、それとエリの洋菓子などもつけてやった。


 帝国も前任者が色々やらかしたので、各国との交渉について晩餐のメニューの充実は欠かせない。

 その点において大いに面目を保ったようだ。

 役に立って何よりさ。

 まあ、タダじゃないんだけどね。

 そのうち、きっと対価は取り立てに行くから。


 それから、オリジナル味付けのドラゴンベーコンが出て来た。

 こいつはどちらかというと、ピリ辛いような甘辛いような比較的名古屋的な味付けだ。


 これは山本さんが名古屋人である俺のために、わざわざ考えてくれた物なのだ。

 感謝しつつ摘まむ。

 こいつはいい。

 酒も大いに進んだ。


 メインは肉スープのつけうどんだ。

 これは一番最初に開発していた奴だ。


 あれでトーヤが釣れたんだっけな。

 俺も結構好物なんで山本さんにも作ってもらったのだが、こいつはまるで別物の料理だ。

 また当たり前の事なのかもしれないが、うどんそのものが違うのでね。

 これまたじっくりといただく。


 いつもなら、うどんの御代わりにいくのであるが、今日は他にもいっぱい飲み食いしているので御代わりは無しにしておいた。

 日本にある家の近所の店だと、うどんが全部で三玉までついてくる。


 さすが、日本人のプロのうどん屋さんが作ってくれた手打ちうどんは堪らん。

 見事にツボを突いている。

 やはり讃岐うどんは日本を代表するうどんだな。

 なんというか、流通している物量的に食べ慣れているのだ。


 〆のデザートは抹茶風アイスでさっぱりといく。

 なんか飲み会のホストである俺が一番満足しているなあ。



 結局グスタフは何故か、ここケモミミ園に居座った。

 そしてミハエル殿下も、それには賛成だった。


「こんな危険物を野放しにするよりは、よっぽどマシだ。

 こいつは、お前が責任を持って管理しろ」


「なんでだよ」


「お前が親鎧の持ち主だろう。

 子鎧の面倒くらいちゃんと見ろ」


「どういう理屈なんだよ!」



 意外な事にエルフさん達が、彼のいい相談役になったようだ。

 たまたまエルフ新町から来ていたエルフさんがいて、彼の話を小耳に挟んだのだ。

 エルフさんに話を聞いてもらっていて、何故か号泣しているグスタフ。


 やれやれ。

 亀の甲より年の功か。

 まあエルフさんは苦労した人達だからなあ。

 やはりそのあたりは、苦労人は苦労人を知るという事なのだろうか。


 何故かアルスまでが乗り気なようだ。


「彼の事は俺に任せてくれないか!」


「お、おう。

 じゃあアルス、彼の世話は君に任せた」


 いつにないような、こいつの迫力に押されてしまった。

 なんじゃらほい。

 いつもは軽いノリなのに、こいつも時々変なテンションだよな。

 まあアルスも空中庭園事件とやらで、魔界の鎧との縁も浅くはないのだし。


 結局、グスタフはここで人生を再出発する事に収まった。

 またうちの管轄で変な住人が一人増えたな。

 とりあえずアルスの世話の元、グスタフはエルフ新町に住む事になった。


 ミハエル殿下も頭が痛そうにしながら帰っていった。

 魔界の鎧絡みだから放ってもおけない話なので、この話がまとまるまで、ずっとついていたのだ。 

 年末年始は大掛かりなパーティも多く、彼の管轄も相当忙しいはずなんだが。

 兄と揃って、疾風のミハエルが目の下に隈を作る日も遠くはないな。


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