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20-3 出会いは衝撃と共に

 やがて現れたヤマト様御一行? は家も無く彷徨っている子供達に出会う。

 さすがこのシーンは、みんなストリートチルドレンが本職だっただけあって違和感が全く無い。

 う、うーむ。


 ヤマトが文言を唱え、錬金術を使う。

 魔法効果の演出で舞台に見事な本物の家が建つ。

 さすがに日本の学芸会じゃ無理な芸当だな、これ。

 床もちゃんと大重量の家に超余裕で耐えられる強度を誇る物だし。


 そこへ領主の家来達が因縁をつけてくる。

 十人のヤマトは手を伸ばして魔法を使う仕草をする。

 獣人の子は魔法を使えないそうなので、このシーンで実際に魔法をやらせられなくて残念だった。


 そして本物の風魔法を使って、綺麗に吹き飛んでいく家来達。

 飛んでいく役の奴らも実に楽しそうだ。

 そのあたりは、皆園長先生が作った必殺の舞台用魔道具の成果だ。

 怪我など無きように安全第一で設計されておりまする。


 そしてヤマトが仕事に行っている間に、領主の家来達が仕返しにやってくる。

 肩を寄せ合って固まる子供達。

 だが、そこへ現れた者は。


「待ちな!」


 紅蓮の風『達』が高い場所から颯爽と登場する。

 これまた、やっぱり十人いる。


 ミレーユ軍団の大将はカミラだ。

 何故か女の子の方が迫力がある。

 現実の初代王妃様も相当気風のいい方だったようだし。


 観客も十人キャストのシステムにだいぶ慣れてきたみたいだ。 


 舞台上に魔法で捲き起こる風が逆巻く。

 バックの背景も、舞台装置に仕込まれたアイテムボックスに収納されていた、真っ赤に燃え上がるよう描かれた物に取り替えられた。

 真っ赤なセロファン製のゼルがスポットライト前面に差し込まれて、舞台が更に赤々と照らされる。


 客席の椅子には、地球の4Dシネマのように椅子に仕込まれた音響効果が仕込まれており、臨場感は抜群だ。

 客席にも風や熱風が届くよう、専用の魔法装置が仕込んである。


 敵の家来役の子供達は「おーたすーけ~」と叫びながら、空中で風に巻かれながらも、なんか楽しそうだ。

 それを見たエミリオ殿下がうずうずしているっぽい。

 今度王宮へ行った時にでも、これで遊んでやるか。


 いや、いっそ元祖のあの御遊びをやってみるか。

 やるのは御代官様じゃなくて王子様だけどな。

 もちろん、エミリオ殿下の方が帯を解かれて、くるくると回る役の方だ。

 稀人の国での定番の御遊びだと言えば、きっとやりたがるだろう。


 やがて領主の家来役の子供達が「あーれ~」といいながら風魔法に乗り、楽しげに、くるくると回りながら舞台袖に消えていく。

 プロデューサーの葵ちゃんも楽しそうだ。


 やがて帰ってきたヤマトが、いきなりミレーユにぶん殴られる。

 なんでも、これが有名な史実だそうだ。

 この国の歴史で最初の正式なエピソードだ!


「てめえ、子供達を放っておいて何してやがった~」と殴られたのだ。

 武……。


 もしかして、これが出会いの最初のエピソードだから、この国の王家では王妃王女達が強いのか?

 というか、二つ名持ち冒険者の初代王妃が強すぎ……。

 武なんて、俺と一緒で所詮は只の一般人だからな。

 きっと武が創設したアルバ冒険者ギルドから、史上初のSランク資格が初代王妃様へ献上されたのに違いない。


 シーンは進み、舞台には苦しむ人々の姿が見える。

 そして、それに手を差し延べるヤマト。


 やがて舞台は城攻めに変わる。

 クライマックスには、「本当に城を燃やして」ド派手な演出を入れておいた。

 どうも俺はラスベガス風の派手な演出に毒されているようだ。


 客席からは驚きの声が上がっていた。

 まあ、確かに普通は日本でも幼稚園の学芸会でここまでやったりはせんけどね。

 練習で最初にやった時は、小さい子はみんなこのシーンで結構泣いた。


 ラスベガスでも、ホテルで開演しているアトラクションの演出で派手な炎がドンっと上がったりすると、小さい子とかは抱き上げてくれているパパにしがみついて思いっきり泣くからな。


 だが子供って、そういう事にもすぐ慣れるもんだなー。

 客席の反応を見ながら、うんうんと頷いてる子や、楽しそうに城の落城を見ている子もいた。

 まあセットの大道具の板で出来た城だけどさ。

 実際に燃やす物なので、さすがにここで本物の城は建てなかった。

 周りは魔法で色々と防御してあるから安全だ。


 そして新しい城を魔法で(史実では武の魔法錬金術で)建てた。

 当時は物騒な時代だったので、王宮なんていう生易しい物ではなくて城を造ったのだろう。

 それはまだ小さい物だけれども、その掲揚された国旗には赤地に鷹が描かれている。


 アルバトロス。

 それは主神ロスの戦う鷹を意味する。

 ロス大神殿のロス像には、今もその肩に乗る雄々しい鷹が主神と運命を共にしている。


 アルバトロスという国名は、その鷹に由来するのだ。

 その名はアルフォンス。

 ロスがこの世界の神話の中で、そいつの事をアルと呼んでいたらしい。

 そう、俺の名はそいつに由来するのだ。


 この国では割とありふれた名前だ。

 タカヒロという自分の名前から取って来ただけの名前なんだけどな。

 タカヒロだからタカから鷹、よってアルフォンスだ。


 かといって、そうおいそれと鷹のエンブレムが許されるわけではない。

 特にこの国の国旗を表すかのような爆炎のエンブレムは。

 ここの王家は、よほど俺の事を買ってくれていたらしい。

 後でそう教わった。



 最後はみんなで、笑顔でミュージカル風にダンスをしてみせた。

 ここまで仕込むのが実に大変だった。

 狼の歌姫も楽しそうに笑い、歌いながらクルクルと踊っている。


 壇上の子供達が笑顔で手を振って、やがて緞帳(どんちょう)が下りる。

 たくさんの拍手に送られて。


 そしてしばらく後に最後の合唱・合奏が始まった。

 みんな可愛いスモックに着替えて。

 曲目は「英雄達のロンド」というもので、この曲もやはり史実の中から出てきた由来を持つ物なのだ。


 周辺国の干渉を退け、戦勝の宴を開いた。

 広間にて楽しそうに踊っていたヤマトとミレーユ。

 そして国の重鎮達も。


 その夜に初代国王は初代王妃にプロポーズをしたという。

 グレゴリーが同名の戯曲を残している。

 これも多くの人々の支持を集めた作品だ。

 来年の劇の演目はこれにしてもいいかもしれない。


 今日も客席からは大好評だ。

 子供達も楽しそうに歌って演奏している。


 こうして学芸会は全てのプログラムを終え、成功裡の上に終った。


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