19-4 また来る日まで
例によって精霊達をもふって、レインボーファルスの親子としっかり戯れて、姫様方は大変満足の御様子だ。
エルフ達も満足したような顔をしている。
これ以上を求めたところで、あの長き虜囚の日々が消えてなくなったわけではない。
だが今はこれでいいと。
アルスもそんな彼らの事をじっと見守っていた。
いつも御気楽な感じのあいつにあんな風にしていられると、こっちもなんか調子が狂うなあ。
それから御昼寝から覚めたチビっ子軍団が、おやつタイムに突入だ。
ファルはおやつにするか魔力にするか迷ってうろうろしていたが、結局レミと一緒におっさんを引っ張っていった。
御菓子職人が二人とも非常に忙しそうだ。
俺も付き合って水菓子を頂く。
みんな和気藹々であった。
葵ちゃんに御茶を点ててもらって、みんなで茶道の御稽古をしてみた。
道具は俺が葵ちゃんに言われるまま、ネット画像などを元にでっち上げた。
チェックしてもらい何度も作り直したので、それなりに良い物に仕上がったと思う。
先祖の住んでいた国の文化に姫様達も興味があるようだ。
実を言うと、俺が御茶の作法を習ったなんて若い頃に只一度きりしかない。
しかもユースホステルの定番行事で。
参加者の中にはインドの人もいたし、たまたま縁あって揃った面子でやっているだけの小さな小さな催しだった。
何よりもペアレントのおばさんが先生なので、彼女が誰よりも楽しそうだった。
だから参加者のみんなも楽しんでいた。
葵ちゃんも嬉しそうだ。
そうしてくれていると俺もとても楽しい。
同じ日本人の人達がいてくれて和風のイベントをしていると、こんな異世界へ据え置かれていても心に救いがある。
ニールセンに、こてんぱんにやられてしまって俺も結構へこんでいたのだが、こんな風にしていると気持ちが軽くなる。
ケモミミ園へ帰ったら、本格的な縁側のある建物を作ろうかな。
きっと今よりも心が落ち着くだろう。
茶室なんかでもいい。
精霊達もオヤツをたらふく食べて、すっかり満足したようだ。
今回は、こいつらの御蔭で命拾いだったしな。
そ~ら、魔力の大判振るまいだ。
俺の魔力放射を受けて精霊達も乱舞する。
そして俺の子飼いともいえる衛星パイロット達が集まってきた。
「ありがとうよ」
ふと、そいつらの事が愛おしくも思えてくる。
ふわ~っと柔らかく魔力を分けてやると、夢中でむしゃぶりついてきた。
こうしていると精霊も可愛いもんだ。
また他の子供達を連れて、ここへ遊びに来たいな。
そして、もう帰る時間になったのでレインのところへ行ったが、彼女も少し寂しそうだった。
「こんなに楽しい時間もいつか終ってしまう。
どうせ、この子をここに置いておけはしないのだけれども。
そして私もそちらへ行くことは出来ないのだから」
それから、そっとファルに頭を添えるようにしていた。
「まあ、またすぐに遊びに来るよ。
もう餓鬼共が文句を言ってしょうがないんだ。
ここへ連れていけって煩いんだよ。
またみんなで遊んでやってくれ」
「そうね。
稀人さん、いえ日本人は楽しいわね」
武の事を思い出したものか、目を細めて想いに耽る様子のレイン。
どうしたのかなという感じで、それを見上げているファル。
ファルも母親の傍にいる時はレインボーファルスの形態をとっている。
これは本能的なものなんだろう。
「そろそろ帰るよ」と言ったら姫様方がぐずった。
「えー、もうちょっと~」
いつもは、こんな我儘は言わないのだろうけど。
エミリオ殿下は二回目なんで慣れたもんだ。
また遊びにくればいいんだしね。
レインも武の子孫の子供達とまた出会えて、とても嬉しそうだ。
精霊達は名残惜しそうに、俺やエリや山本さんの周りに集まっていた。
そして最後に魔力の大放出をサービスしてやる。
それを受けて歓喜を表す精霊の乱舞で今回は幕引きだ。
山本さんもラストにおやつをパーンと出してやり、それを食べた奴から精霊達は具現化を解いていった。
何かこう花火大会終盤の打ち上げラッシュのような風情があるな。
「じゃあ、レイン。
またな」
「ええ、またね。
じゃあファル、いい子にしているのですよ」
愛おしそうにファルを前足で優しく撫でながら言い聞かせるレイン。
「わかった、御母ちゃん。
またね」
最近は、ファルもレインのことを母親だと強く認識しているようだ。
近頃この子は服を着たまま形態チェンジをするようになった。
アイテムボックスのような能力があるのだろう。
レインボーファルスの能力についてはよくわからないのだが、結構チートでもおかしくはない。
姫様方の強い要望で、帰りは精霊に森をかきわけてもらいながらの帰還となった。
この演出は相変わらず大好評だった。
この日の出来事は、この子達の御嫁入りと共にその国で物語として紡がれていくのだろう。
そして、いつか伝説となる。
ついでに空へと上がり遊覧飛行をして、そこから王宮へと転移魔法で帰還した。
手を振る王子様や王女様に見送られ、それからエルフ新町へ着いた。
そして着いた途端にエルフの群集に囲まれた。
皆が感激を隠しきれない様子で口々に礼を言っていた。
そう、魔法映像で現地の様子をエルフ新町へもリアル中継してやっていたのだ。
魔法で繋いでいるので、例の二重奏の祝福もそのまま伝わったらしい。
涙を流して、これでもう何時死んでもいいと言う者さえいた。
数百年以上、いや千年以上もの長い時を生きると、そんなものなのだろうか。
そういや真理も、日本の真理さんからメールの返事を貰って号泣していたっけな。
それは百年も生きぬ普通の人間には、絶対に理解する事は不可能な感情なのだ。
それから、アルス以外の面子を連れてケモミミ園に戻った。
これからまた忙しくなる。
もうすぐ学芸会をやるのだ。
幼くしてストリートチルドレンとして生きてきたあの子らの成長を、いろんな人達に見てもらわなくちゃなあ。
そういう意味において、学芸会は今一番ケモミミ園で力を入れている行事なのだ。
「おみやげー」
「こんどはぼくたちもー」
「あたちもいくー」
「ああ、みんなでいこうな」
春の遠足の企画も立てないと。
今度は新アトラクションの企画でも立てようか。




