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19-2 精霊の森再び

 今回は王女様達を連れていくのと、あと御菓子職人同伴で精霊共の活躍を労うつもりなのだ。

 前回はバランと直接戦闘になっていたら、あっさりとやられていたかもしれない。

 あいつは超特級の殺し屋だ。


 所詮、俺は戦闘の素人なのだ。

 ただ力任せに暴れているのに過ぎないので、今回も精霊様々なのであった。

 裏の手奥の手で邪道に頑張っているだけだから、これからも精霊とは仲良くしておきたいな。


 俺なんて、近接ではゴブリン辺りを相手に無双するのが関の山だ。

 Sランク冒険者は魔物なんかとは訳が違う。

 ドラゴンを余裕で倒せる冒険者の手にも余る。

 だから高ランク冒険者試験は対人形式になっているのだ。


 そして精霊の森行きのメンバーは、御菓子職人エリとその付録のポールにマリー、ファルにレミ、山本さんと葵ちゃん、真理とアルスだな。


 今回はアルスの件もあるし、御姫様方も来るので他のケモミミ園の子は遠慮させた。

 レミは俺を救ってくれた功労賞で。

 これで十一人だ。

 この子がいなかったら、俺はあのまま死んでいた可能性が高い。


 あの呪いは強烈だった。

 念話一つ飛ばせない。

 ゴッドディスカーズを使うどころではなかった。

 使ったとしても効果があったかどうか自信はない。


 本日は、そのままケモミミ園から王宮へバスごと転移した。

 彼らは指定した王宮前広場で待っていた。

 王女様や公爵令嬢にエミリオ殿下、それに御付きの方達だ。


 ルーバ爺さんは俺の茶飲み友枠兼王族の世話係という事で。

 四名の王族に各護衛が二人ずつ、それにエルフを三名の計三十一名だ。


 今回は王族、しかも女の子連れなので、精霊の森まで転移魔法であっさりと行く。

 だが、お子様達にはそれが大変不評だった。

 何のためのバスなのかと。


 もう、みんな我儘なんだから。

 普通、王族はバスで遠足になんか行きません事よ。


 精霊達には、また出迎えの演出を頼んでおいた。

 例によってオールスター総出演で精霊の乱舞を披露してくれた。

 それらは初見参の王女様方には特に大好評だった。


 続けて御馴染みの精霊アトラクションも開催された。

 御付きの人達はヒヤヒヤしながら、王女様方を乗せて天空を駆け回る精霊達を見ている。

 精霊族たるエルフ達も感慨深そうにそれを見ていた。


 着いた早々に散々遊んだので、そう間を置かずにおやつタイムにした。

 もちろんレインも呼んである。


「あらあら、今日は可愛い女の子達がいっぱいなのね」


 レインもにこにこしているし、王女達も初めて見るレインボーファルスの成体に興奮している。

 レインは羽をふぁさっと広げてみせてくれた。

 それは薄い、まるで昆虫のような羽だが、キチン質のような感じはしない。

 なんていうか羽衣のイメージのようなものだ。


 雲のように軽くふわっとしているが、その強度は恐るべきものあろう。

 見ただけでそう感じた。

 多分、巨大なドラゴンの首をスパっと刎ねられるレベルの強度だ。

 

 レインも今は十メートルくらいのサイズだが、精霊質の肉体とでもいうのだろうか。

 魔力さえ健在なら体の大きさを変えられるような気がした。

 ああ、そういえばファルスとは膨らむものなんだった。


 とにかく美しい。

 体の表面もなんともいえない視覚効果がある。


 昔UFOの大編隊を見た事がある。

 表面を虹色にギラギラさせて、明らかに航空機とは別物の質感であった。

 遭遇したジャンボ機が凄まじい急ハンを切って避けていた。

 下から見ていたら、飛行機って空中であんなにクイックに曲がるものなんだって思った。

 まるで本格的なカナード翼機のような印象を受けるほどだ。


 あれとはまた違う生々しい生物感はあるのだが、それと同時に感じる幻想感がなんともいえない。

 普通とは違う質感という点においては、もうUFO並みの存在だな。

 なんていうか、透明ふわきらレインボー感?

 変な言い回しだけど、そんな風にしか表現できない。


 ファルは、ちょこんとレインの頭の上に乗って、レインボーファルス形態で鎮座ましましている。

 それを見てエルフ達は涙を流し、そして跪いた。


「話は聞きました。

 エルフ達よ、ごめんなさいね。

 私の力が足りなくて。

 でも母も私もあれが精一杯だったの」


「とんでもない!

 御会いできましただけで十分です。

 こんな我らに勿体ない御言葉。

 生きて……生きていてくださっていただけでもう」


 レインはエルフ達を目を細めて見ると、あの歌を歌った。

 拙いファルのものとは比べ物にならない、本物の祝福を。


 目を見開き、ただただその姿を見つめるエルフ達。

 そしてファルがそれに被せていった。

 母親から歌を習うように。


 ファルも今日はいつもより上手だった。

 これは後に「神聖エリオンの二重奏」と呼ばれた出来事であった。

 人も精霊も、皆感動に打ち震えた。

 全ての精霊達が具現化して踊り狂った。


 歌が収まり、ファルを頭に載せたままのレインが幸福そうにしている。


「キュウイーー」


 だが空気を読まずにおやつを催促する奴がいた。

 すると山本さんが笑って、御菓子を「出した」。

 これは!


 一面の和菓子、一面の和菓子、一面の和菓子……? 

 これはまた奇天烈なスキルを。

 あたり一面が和菓子の海になった。


「山本さん、これは?」

「ええ、私、自分が作れる和菓子なら好きなだけ出せる特技があるんですよ」


 それ……特技じゃなくてスキルだから。

 魔素から魔力を経ないで直接大量の御菓子に変えているようだ。


 そんな事が出来るのか。

 そいつは俺にだって出来ない芸当なんだけど。

 何も考えていないって、こんなにも強いのか。


 俺は頑固で理屈っぽい人間なので、魔力という物理的なエネルギーと物質が還元し合うみたいな概念しか持てない。

 だが、実際には魔法やスキルを使う人間の概念次第で違うという事か。

 なんというかソフト自体が違うというか。


 精霊達は「いただきます」も言わずに齧り付いていた。

 御菓子を出す大きさも自由に出来るらしい。

 しかも今のところ和菓子専用スキルのようだ。

 

 もったいない。

 設定次第で無茶苦茶チートだぞ、これ……。

 場合によっては【世界の生成】すら可能な能力なのではないだろうか。

 それは神の領域にある力の筈。

 地球の科学者にも、あくまで概念上の話でならば、そういう事を唱える人もいる。


 山本さんにとっては、そんな話はどうでもいいんだろうけど。

 まあ本人があれだけ満足そうなんだから、別にいいのか。

 

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