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18-5 エロフの街

 俺の見立て通り、ドランの野郎は貴族どもの尻を叩き、見事にエルフを集めまくっていた。

 中々有能な男だな。

 大使館には続々とエルフさんが送られてきていた。


 だが甘いぜ、ドラン。

 俺には百万体のゴーレムさんがいるのだからな。

 しかも全員、転移魔法の行使が可能なのだ。


 ちょっとエルフさんが初転移魔法にビビっていたが、そのような些事には一切構わず、俺はゴーレムに命じてピストン輸送でエルフさん用に作った街へ彼らを運びまくった。

 そして夕方までには、大使館へ次々と集められていた大勢のエルフさん達全員を、なんとか無事に新しい街へ輸送し終えた。


 とりあえずの御世話はゴーレム兵がやってくれる。

 当座住む家もベッドも食堂もある。

 うちの料理人達の職人技を、モーションキャプチャーして習得したゴーレム達に死角はない。


 とにかく着くや否や、エルフさんにはガンガンと容赦なく鬼のように仕事を割り振っていく。

 ここで可哀想な奴らだからといって遠慮なんかして甘やかしていたら、蹲っているだけの石潰しの大集団が出来てしまうじゃないか。


 それは立派な食客とかじゃない、只の引き籠りの居候なんだからな。

 しかも超長生きする連中だし。

 最初が肝心なのだ。


 とりあえず今は全員ここで暮らしてもらうぜ。

 他所へ行きたいというのならそれでももいいが、とてもそんな元気は出ない現状だろうしなあ。

 まあ御世話するだけはするけれど、後の自分達の事は頑張って自分達でやってくれ。



 そして夕方になり、皇帝ドランのところへ行って俺はドヤ顔を見せつけた。


「よう。

 エルフさんはもう品切れかい?」


「よくあれだけのエルフを短時間で連れていったもんだ。

 お前と戦争しても勝てる気がしない」


「いや、お前らって殆ど戦うまでもなく負けたよね?」

「少なくとも、俺はお前となんか戦っていない!」


 そうだよな。

 お前って戦争の間は見事に幽閉されていたもんね。

 まるで中国共産党みたいな言い草だな。

 日中戦争で日本と戦ったのは、当時中国を統治していた国民党だもんな。

 まあ国共共闘なんていう話も数年間あったらしいが、主体は国民党なのだから。


 中国共産党は国民党に負けて壊滅寸前で隅っこに追いやられていたのに、日本軍にボコボコにされた国民党の敗走で復活出来たので、当時の中国の偉い奴は日本の政治家が行って戦争に関して謝罪すると「いえいえ、日本の御蔭でうちは助かりました。だからどうぞ御気になさらずに」なんて言っちゃっていたらしいし。

 今の両国の険悪そのものな状況からは、とても考えられんような昔話だ。


 ドランの奴は、今まさにそういう立場だわ。


「まあ、それはいいや。

 エロフさんは確かにいただいたぜ!」


「それはいいが、あの連中を使って何をするつもりだ」

「それはまだ考えてない!」


 俺は奴に向かって、きっぱりと言ってやった。

 いやあ、だってなあ。

 あんなファンタジーな人達って色々な事が出来そうな気がするじゃない。

 主に、手先が不器用な俺をサポートしてくれるような方向で!

 その辺の恩恵を期待して、自分の家の近所に街を作ってやったのだから。


 それを聞いて、さすがにドランの奴も呆れたようだったが。


 それからエルフ街へ戻って、色々と指揮を執ってみた。

 まあ適当にだけど。


 勢いで始めたものの、なんかもう面倒になってきたしな。

 何しろ全員が死んだような顔になっているんだし。

 あの表情を見ているだけでゲンナリしてくるわ。


 とりあえず、こいつらを働かせないと食い扶持が大変だ。

 かなり長生きしそうな種族なんだし。

 後顧の憂いは断たねばならん。


 明日、彼らと面談しよう。

 とりあえず、俺は帰ってビールタイムにした。

 そして子供達が寄ってきてツマミを食われた。

 山本さんの蒲鉾は美味いからなあ。


 それから子供達を適当にもふってから寝かしつけた。



 翌朝、エルフさんの街へ行って話を聞く事になった。

 レミとファルがついてきたがったので両手にぶらさげておく。

 チビがいるので真理にも一緒に来てもらった。


 チビどもが初めて見るエルフさんの美しい姿に、うきゃあうきゃあ言って物凄くはしゃいでいる。

 そしてすぐに一人のエルフさんが気付いた。

 ファルが神聖エリオンという存在である事に。


 一人が跪き祈りを捧げると、それが次々と伝播して、あっという間に全員がファルの前に跪き、敬謙な感じに祈っていた

 その尋常ではない様子を見て、チビどもはホケっとしていたのだが、何かその荘厳な雰囲気に呑まれたのか、突然ファルがあの祝福の歌を歌い出した。


 それを耳にしたエルフ達は涙を流し、嗚咽する声が漏れていた。

 なんだかよくわからないが、色々と訳有りなんだろうか。


「まあ、なんだな。よかったら話だけ少し聞かせてもらいたいのだが」


 誰でもいいんで、とりあえず暫定で代官に任命した人に頼んだ。


「はい。

 私達エルフは元々はエルフだけの国で暮らしていました。

 それは、今ではベルンシュタイン帝国と呼ばれている国がある場所に在ったのです。

 その昔はこの国アルバトロスと、今で言うベルンシュタイン帝国の国境なんていうものはなかったのです。

 少し精霊の森と距離は離れていましたが、私達は寿命が長いので、あまり気にした事はありませんでした。

 我の心々は精霊の森と共にあると」


 彼は熱を入れて話してくれていたが、残念ながら当の神聖エリオン様はおやつタイムに突入していた。

 さっきのエルフの嗚咽中から、もう催促が厳しくて。


 レミにも出してやったので二人共口の周りがクリームだらけだ。

 最近は山本さんが来てくれたからおやつも和菓子が多いので、今日はケーキにしてやったのだが、ちょっと失敗だったか。


 ついでに俺もケーキとコーヒーを出した。

 本当はビールが欲しかったのだが、さすがにそれは自粛したのだ。


 床にマットやシートを引いて、ローテーブルを出して座布団の上で(くつろ)いでいた。

 その俺達の寛ぎまくった様子にエルフさんがちょっと困っていたので言ってあげた。


「あ、続けて続けて」


「はい。

 しかし千年前の暗黒の時代、ファルス、即ち神聖エリオン不在の時代が続いたのです。

 世界の荒廃は続き、我らエルフの信仰も薄れ、里を捨て散り散りバラバラとなってしまったのです。

 しかしてレインボーファルスの誕生により、世界は平穏を取り戻しつつあった。

 だが、我々エルフの失われた信仰はなかなか戻らなかったのです。

 人間と違って長く生きるエルフは、気持ちの切り替えが上手くいかなかった部分がありました。


 そんな中で、あの国は帝国を名乗り、長い年月かけて次々と周りの小国を併合していきました。

 その過程で我らエルフは散り散りになったまま、捕らえられ虜囚として辱めを受けてきたのです。

 皮肉な事に、捕らえられ自由を失った時、初めて失った信仰の大切さに気が付きました。

 そして今に至ったのです」


 はっ。

 いけねえ、寛ぎ過ぎていて途中で寝ていたわ。

 ほぼ睡眠学習と化していた。


 あ、チビ達もだ。

 それを見て苦笑するエルフの代官。

 俺から話を強請っておいてこれだもんな。

 しかも豪く深刻なネタだったのにね。


「あ、大体の話は聞いていたから。

 それでエルフの里はどうなったのさ。

 他にもエルフさんの仲間はいるの?」


「里はございますが、帝国からの迫害を恐れ、里は隠されています。

 元の位置からは移動しておるようで、私らにも里の在る場所がわかりません。

 今の帝国領土の中に位置しておるとは思いますが」


「なんとか里を探して帰るかい?」

「いえ……」 


 代官は少し沈痛な表情でこう哀願した。


「里に残った者達とは色々ありましたので、我々は今更里へは帰れません。

 ここにこのまま置いていただけるなら、そのように御願いしたいのですが」


「うーん。

 君達は何が得意なんだい?

 商売するなりなんなりしないと食っていけないぞ。

 幸いにして今は帝国も大人しいし、ここは大国の王都アルバの近くだ。

 馬を飛ばせばすぐの良い立地だから、御客さんには事欠いていないけどね」


「はい。

 工芸などは得意中の得意です。

 その辺りの事は、少しみんなで相談させてください」


「わかった。

 何かあるならいつでも相談に乗るよ。

 支援は惜しまない。

 君達はもう自由だ。

 この街は俺が作った街で、この公爵たる俺が領主なのだから、君達にはもう誰にも手は出させない。

 そうだ、これを持っていてくれ」


 彼にはスマホを渡して、使い方を教えておいた。

 とりあえず、ここはゴーレムに任せて一旦帰ることにした。

 俺がコピー能力で作り上げた食い物その他はゴーレムが大量に持っているので、当座の食い扶持は大丈夫だろう。


 まあ気長に考えてくれよ。

 俺が存命の間は自分で面倒をみよう。


 俺も世捨て人生活が長かった。

 だから、あのローリーの事も他人事とは思えなかったのだ。


 昔、凄い不景気の中、うちのマンションの空き缶置場で空き缶を漁っていた、まだ二十代くらいの若者がいて驚いた。

 彼は半ば薄汚れていたにも関わらず、礼儀正しくはきはきとしていて、笑顔で会釈をして挨拶もしてくれた。


 その利発そうな目と顔付きを見ただけで、彼が派遣会社で若者達のリーダークラス相当の人間であっただろう事が、大企業でそういう子達を何人も見て来た俺には一目で知れた。

 凄まじく景気が良くなかったので、非正規の彼は優秀であるにも関わらず契約を更新してもらえなかったのだろう。


「こんな立派な若者が、かつては日本のデトロイトとも謳われた、この比較的裕福な西三河地区でホームレス生活なのか!」


 暗澹たる想いはあったのだが、無職で引き籠りの世捨て人にはどうにもならなかった。

 だが、今なら誰かに何かをしてあげるくらい、なんとでも出来る。


 それでも自分で頑張らないと、世の中はどうにもならないのだ。

 しかも相手は若者ではなく、見かけが若いだけの思いっきり大年寄りなんだしなあ。


 エルフ達よ。

 このおっさん同様に、年輪相応の経験値だけでなんとか頑張れ!


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