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18-2 滅亡の鎧

 俺はミハエル王子を襲撃した。

 いや彼が自分の部屋で御茶を飲んでいたので、レーダーを見ながら転移魔法で入り、インビジブルモードでさらっと近寄って後ろから脅かしてやっただけなのだが。


 いかにも王子様然とした貴公子が、思いっきり御茶を噴くシーンは中々見れるもんじゃない。

 なかなかいい画像が取れた。


「お前か! 脅かさないでくれ」


 最近は君からお前扱いになってきた。

 一応、この国で俺は名誉公爵扱いされている筈なのに。

 

「あはは、悪い悪い。

 なあ一つ訊きたいんだけど、魔界の鎧って知っているか?」


 王子様がもう一度御茶を噴いた。

 この人って案外と美味しい人なのかもしれない。

 もちろん、タイミングは俺が合わせてやったんだけどね。


「そ、その名前をどこで。

 禁書庫以外で目にする事はないはずなんだが」


 あ、動揺している。

 彼が落ち着こうとして、また御茶を口に含んだタイミングを見計らって言ってやった。


「この俺のスキルリストでさ」


 今度は王子も御茶を噴かずに、口の端からたらーっと垂れ流した。

 本当に美味しいな、この人。


「どこでだ」


 お、食いついたね。


「そんな危険物を、一体どこで手に入れてきた!」


「ニールセンが使ったのさ。

 御蔭でこっちは死にかけた。

 ファルがいなかったらヤバかったかもしれない。

 目が覚めたら、そいつをスキルとして覚えていた。

 オルストン家の執事さんは絶対に使うなと。

 これは魂を食らうスキルだからとも」


「そ、そうか、あの瞬神が」


 そして、こっちを意味ありげにこちらを見て宣告してきた。


「本来なら、お前を幽閉するか、そう出来ねば殺してしまうかせねばならぬ。

 それほどの代物なのだ。

 それだけは忘れないでほしい」


 この御方、また豪い事を言ってはるな。

 で、どうするん?

 やるの。


「信じているぞ、グランバースト卿」


 あははは、無理っていう事だな。


「昔、何があったんだい?」


「その厄災のせいで、世界が一度滅びかけたとだけ言っておこう」


 う!

 思ったよりも、あかん案件やないですか。


「とりあえず、あなたに調べてもらった方がいいかなと思って」


「ああ、よく知らせてくれた。

 お前も何かあったらすぐ知らせてくれ」


 ん? これって使わなくても何かあるの?

 思わず心配になって聞いてみた。


「何かあるのか?」


「いや、ただ人は強い力を持つと、それを行使する誘惑に勝つのは難しいという事だよ。

 誰しもが君のように特別なわけじゃない。

 悪魔に魂を売ってでも力を手に入れたいと願う者は、君が思うよりも遥かに多いのさ。

 そんな力を手に入れて平然としている『お・ま・え』が、どこか変なんだよ!」


「し、失礼な。

 この園長先生は忙しいのだ。

 学芸会にクリスマス、御正月に、小学校開校準備と。

 そして初の卒園式と、それはもう行事が目白押しなのですじゃあ。

 そんな、おかしなスキルなんかに構っている時間なんぞ一秒だってない。

 使わなきゃいいだけなら何の問題もないの!


 あ、来年の春から園長先生じゃなく学園長先生と呼んでね~。

 セーフハウスにケモミミ幼稚園とケモミミ小学校、その三施設を合わせてケモミミ学園の名称に変わるから。

 あ、学芸会にはエミリオ殿下を呼ぶ手筈になっているので宜しくな」


 俺は、自分のお株を取られたかの如くにまくしたてられて憮然とした表情をしたミハエル殿下を残してケモミミ園に戻った。

 まだ心配そうな顔付きのレミのミミをじゃらして、後ろからくっついてきたファルに魔力を注いでおく。


 丁度オヤツの時間だな。

 最近は山本さんのおかげで、我がケモミミ園は空前の和菓子ブームだ。

 和菓子は武の好物という事で、普段はおやつなんか食べない真理までもが興味津々なのだ。


 今日のおやつも、透明な葛の衣に包まれた華やかな色合いの水菓子であった。

 ちょんっと可愛らしい指先で突いた御菓子がプルプルする度に、子供達の瞳もプルプルする。


 俺的には、中が粒餡の奴がいいんだけど。

 多分、船橋武の奴もそう。


 昨日は真理と一緒に御墓参りに行ってきたのだ。

 王家の方も誘って。

 せっかくなので、葵ちゃんに御茶を点ててもらって皆でプチ園遊会を楽しんだ。


 珍しく王太子殿下もおいでだったので、腕輪の管理者権限を行使して、ミハエル殿下も強制転移させてやった。

 転移させる前に一言先に言えと怒っていたが。

 そういや、トイレの最中だったりしたらマズイよな。


 みんな結構餡物は好きそうだ。

 やはり船橋武の直系の子孫なんだな。

 丁度いい機会なので、彼らにもアイテムボックス付きの転移の腕輪を進呈しておいた。


 ついでにスマホも渡しておいたのだ。

 もう王家の人間にも渡しておいてもいいやと思って。


 実のところ、俺の名誉公爵位は正規の血族公爵扱いという普通では絶対に有り得ない代物なのだ。

 それはつまり、取りも直さず王族扱いという事だ。

 俺みたいな人間は、どうあっても身内扱いにしておきたいのだろう。


 相手は武の子孫達なんだから、俺にも別に異存などない。

 あのバイトン公爵みたいな奴でさえなきゃな。

 大体、俺のうちがこの国にあるんだから、この人達と家族扱いの方が都合はいいだろう。



 その晩は、初めてスマホを手にした人達からの電話攻勢が、夜遅くまで続いたのであった。


失礼。今日お出掛けしてて、予約投稿してくの忘れてました~

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