表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/1334

18-1 久々にオルストン領へ

 すっかり体もよくなった俺は、色々な案件を片付けるために、あちこちへ行く事にした。

 まず、ある目的のためにオルストン領へ行く事にしたのだ。

 ファルとレミを一緒に連れて。


 レミはあの一件以来、俺にべったりだ。

 俺がまたどこかへ行って大怪我でもして帰ってくるのではないかと心配であるものらしい。

 最近は、なかなかレミに構ってやれていなかったので俺も嬉しい。


 今回は貴族風に先触れを出してやった。

 それは、うちの岩くれのような姿をしたゴーレムである。

 アントニオは微妙な顔をしていたが爺やさんは笑っていた。


 これも実はただのゴーレムではなく、精霊の力で俺とシンクロしている一種のマスタースレイブユニットなのだ。


「やあ、アントニオ君おげんこー?」みたいな御道化た挨拶で御邪魔した。


 奥さんも大きな御腹を軽く揺すって笑っていた。

 御母さんが笑っているのは胎児にとってもいい事だと思う。

 この一家、一年前は誰も笑っていなかったのだから。


 あと山本さんと葵ちゃんも一緒に行くのだ。

 御母さん向けに出産後の料理メニューのバリエーションを増やしてもらおうかと思って。

 和食パワーで体に優しいメニューを期待している。


 赤ちゃんの離乳食のメニューの相談もあるのだ。

 既に試食品はある。


 そいつはエリにも頼んでおいたので。

 今、彼女は年間でもっともケーキの売り上げが見込める見込みの、クリスマスに向けて張り切っている。


 何せ、この世界で初めてやる行事なのだから見込みもへったくれもないのだが、あくまで俺からの情報という事で。

 うちの周辺では王家も含めて派手にクリスマスを宣伝する予定なのだ。


 まず新しい風習は王都で広めないとな。

 どっちみち、この国でこういう物の基本はキッチンエリが中心なのだ。

 アドロスで初めての、王都アルバへの展開という話になるだろう。


 マルガリータさんの乳の出が悪い可能性も考えて、場合によっては粉ミルクの開発も考えている。

 まあ貴族だから乳母さんがいるとは思うのだが。


 哺乳瓶は構造的に作るのが結構難しいと思う。

 ああいう繊細で凄く専門的な物は、この俺の力をもってしても作るのが難しい。

 いっそ哺乳瓶メーカーが持っている詳細な設計図が欲しいわ。

 そういう物があると、結構「お任せ製作」で作れてしまう場合も少なくない。

 あと素材の材質の情報とかがあるとな。


 そういう能力で作ったサブマシンガンが今回俺の命を救ってくれた。

 一見地味だが、なかなかどうして馬鹿にならないスキルなのだ。


 あと詳細な、色々な角度から切った断面の拡大図とか。

 それくらいなら掲示板の物見高い連中に頼めばやってくれそうだ。

 試したいタイプの物を通販で彼らのところへ送って。


 さすがにキャンプへ、俺の家では未来永劫使わない予定だった哺乳瓶は持ってきていない。

 途中立ち寄ったコンビニなんかでも売っていなかったしな。

 あれも材質を含めて凄く種類や色々なタイプがあるのだ。


 それでもチャレンジはしてみたい。

 いろんなケースは想定しておくべきだと考えている。


 マルガリータさんは、例の御山で買ってきた安産祈願の御守りを大事そうに首から提げていた。


 ネットで知り合ったパターンメーカーの卵さんに赤ちゃん肌着のデータを見繕っておいてもらった。

 専門学校に通っている人なので、学校の友達も巻き込んで、かなり本格的にやってくれた。

 ネットにも赤ちゃん向けの無料型紙は溢れまくっている。


 うちの裁縫グループの子達も、それを見ながら目玉をぐるぐるさせながら目移りしていた。


 厳選型紙と布地やその他の素材、そして編み物関係なんかも用意したし、編み棒なんかはきっちりとした物を作った。

 というか困った時のミシン屋さん頼みで、きちんと測定を御願いして具合のいいものが出来た。


 編み棒は葵ちゃんからも及第点をいただいた。

 彼女、こういう物については妙に拘りがあるらしく、出来に関して中々点が辛いのだ。


 おっさんの子供の頃は、小学校で編み物が流行っていたから男の子も編み物をやっていた。

 俺も母親に習って手編みの編み物にチャレンジした事はあるのだが、不器用なのもあってすぐに放り出した。


 確か一番簡単そうなマフラーで挫折したんじゃなかったか?

 もうやり方も忘れちまったよ。


 あとは葵ちゃんや彼女の御友達の子の指導により更に進化したラッピング素材と見本の数々を、そしてミシンも改良版を数タイプ置いていく事にした。


 直線縫いの職業用、厚い革を縫える強力タイプや長物が縦に縫えるタイプ、それを横にしたタイプなど。

 それにしっかりと縫えるロックミシンを用意した。


 このあたりは、あれからなんとか頑張ってミシン屋さんに頼んでデータを作成してもらったのだ。

 この手の職業ミシンになると一般の家庭用ミシンとは違って、きちんと稼働する現物の入手が一際困難だった。

 二本針タイプのミシンなんかも是非とも挑戦したいものだ。


 さすがに刺繍ミシンは苦しい。

 コンピュータミシン系はちょっとなあ。

 まあミシン型ゴーレムなら、なんとかいけるかもしれない。


 もし船橋武が助手をしてくれるというのであれば、きっとそれらの骨董品系ミシンも作れると思うのだが、それはさすがに叶わない。

 そのあたりの仕事は、奴の助手であったという真理に頼むしかない。


 一般的な家庭用タイプは東南アジア辺りで今でも売られているはずなので、新品の足踏みミシンも入手してもらった。

 どの道こちらへはデータや写真で送ってもらうしかないのだが。


 足踏みミシンを欲しがる人は結構いるのに、新品を買おうっていう人はあまりいないんだよなあ。

 ネットでも新品の販売は見かけた事がない。


 迫力の動画を次から次へと超大量にアップしていたので、広告料が結構なものになっていた。

 そこからミシンデータの代金に充てた。


 今は葵ちゃんの魔導モータを改良して電動ミシンの開発に着手している。

 動力モータ以外の部分はミシン屋さん頼みだ。


 ミシン屋さんも本業があるので、のんびりやってもらってある。

 彼も日常業務以外の仕事を優雅に楽しんでくれているようだ。

 生業であるミシンに関しては、彼も王様から勲章まで頂いちまったからなあ。


 とりあえずは、アントニオ領において縫製工場を建設してみる案が浮上している。

 それならという事で試験工場を作ってみた。

 うちの幼稚園用の建物を流用して。


 あれも元々は工房として建てられた物件だったので、縫製工場に使ってもまったく違和感がない。

 俺も作業はもう手慣れたものなので、あっという間に建ててしまえた。

 見物していた領民の人達から素晴らしい拍手が沸き上がる。


 子供がいても働けるようにと託児所を作ってみる。

 縫製工場の隣にドンっとまた一つ建物を建てて。

 よく商業施設のキッズコーナーに設置されている、子供が遊ぶための大型グッズのような物も作ってみる。


 必要なら、うちのケモミミ園から人員を交代で、託児所で働く人の指導のために派遣出来る。

 反対側に倉庫をもう一つ建てて、工房との屋根付き連絡通路を作ってみた。


 原料を輸送し、製品の搬出をする馬車ターミナルも作ってみた。

 こいつはフードコートでやったので建設用のパーツは既に揃っている。


 なんだかパソコン画面で組み上げていくみたいに、本物の工場が出来ていくので面白い。

 ゆくゆくは大工さんが作ってくれるのだろうが、まあこいつは工場の見本品なのだ。


 見学していたレミとファルが大喜びだ。

 レミも大きくなった今では、こういう事が何なのか理解出来る。

 何しろ、毎日自分が暮らしている家と同型の建物なんだからな。

 あの時も建設風景は見せてやったのだし。

 他の子にも機会があれば、この種の作業を見せたいな。


 オルストン伯爵夫人もおっとりと御見えになっていたので、完成記念にファルたんの御歌タイムにしてみた。

 そう、生まれてくる子供のためにファルに祝福の歌を歌わせるのが、今回ここへ来た目的の一つだった。

 領民の人も話を聞いて、一目エリオン様を拝もうとたくさん集まった。


 そしてファルが祝福の歌を高らかに歌い上げた。

 精霊を呼び出して、領内にも空中映像で映し出した。

 領民の人達がびっくりするだろうから先にアントニオに挨拶させたが。


 俺の魔法で中継してもよかったけど、精霊を具現化してやらせた方がありがたみがある。


「神聖エリオン様万歳、御領主様万歳」と領民の声が響きわたった。


 長年、国と領民のために尽くしてきたオルストン家ならではの光景だろう。

 レミはファルの祝福の歌を初めて生で聞くので耳ピンで聞いていた。

 そして、ちょっと誇らしげだ。

「どう? これがあたちの妹なのよ」みたいな感じで。


 そして、もう一つの用件についても話をしてみた。

 ニールセンと戦った時の話をしたかった。

 あの時に変なスキルを見取っていたのだ。


「魔界の鎧」


 そいつを一目見てヤバイ代物なのがわかった。

 絶対に使ってはならないような。

 こういう視る力は、元々日本に居た頃から俺が非常に重要視している能力なのだ。

 この武門の一族に聞いたら何かわかるかもと思ったので。


「なあアントニオ。

 この魔界の鎧って何か聞いた事があるか?」


「いや? 俺は聞いた事がないな。

 アンディ兄貴はどうだい?」


 だがアンディも首を捻る。


「いやあ、俺も知らないな。

 父なら何か知っていたかもしれないが。

 爺や、お前は何か知らないかい?」


 しかし、それを聞いた爺やさんは蒼白になってしまっていた。


「グランバースト公爵、そのスキルだけは決して使ってはなりませぬ。

 如何に貴方様といえども、そればかりは。

 それはスキルとは名ばかりの一種の呪い」


 うっげ。

 ヤバイとは思っていたが、そこまでだったとは。

 これ、実は削除できないんだよなあ。

 一旦覚えたものは死ぬまで残る。


 ジェシカやレインあたりに聞いても、この世界には小説みたいにスキルを盗む能力者もいないらしいので、それが盗まれて消える事もない。

  

 おそるおそる聞いてみる。

 せっかく帝国との抗争も終わりそうなのに、ここでラスボス登場とか言われたら敵わない。

 園の行事はこれから(たけなわ)なのだ。


 魔王っていないはずなんじゃなかったっけ?

 でも精霊はいるのだから魔族とかがいてもおかしくはない気はする。

 俺みたいに圧倒的な能力持ちのせいで魔王称号を貰ってしまっている人間はいるはずなのだが。


「あのう……魔界ってあるのです?

 あと魔族とか魔王とか」


「そんなものはございませんが、魂がスキルに食われて闇に落ちまする。

 たとえば、貴方様がそうなった時に世界は……。


 魔族などというものはおりませぬが、強いて言えば闇に落ちた強大な力を有した者を魔王とか魔族とか呼んでもさしつかえはございませんでしょうな。

 そのスキルはそれほどの物なのです。


 それは、かつて世界を滅ばさんばかりに揺るがした存在。

 それに関して記された物は書物さえも禁書扱いにされております。

 今ではアレの存在を知る者も少ないでしょう。

 オルストン家は王国の剣とも謳われた一族でありましたので、その話も伝わっております。


 やたらと探したりする者がおらぬよう、各国の王達も神経を尖らせておったのです。

 それが今更、このようにして復活するとは。

 二年前に、かつて初代国王様が御作りになったという空中庭園の爆発と共に滅んだと思われていたのですが。

 どうか、この年寄りの言葉、深く心に刻んでおいてくださいませ」


「はは、そうしとくよ」


 だからニールセンも今まで使わなかったし、すぐに解いたのか。

 俺を倒すためだけに禁忌に手を染めたんだな。


 あいつには何か、短時間ならそういう物に対抗出来るようなスキルとか耐性のような物があったのか?

 あるいは、研究過程でスキルに取り込まれないように出来る対抗手段を見つけていたとか。

 今となっては確認のしようもないのだが。


 あの野郎、とんでもない置き土産をしていきやがった。

 こいつは大変よくない代物だ。


 多分かなり魔力を食う代物のようだから、事前に発動準備をしていたんだろう。

 それもあって長く使えなかったのかもしれない。

 あの時何か俺がおかしくなっていたのは、多分そいつのせいだ。


 いわば神聖エリオンの祝福の対極にあるようなものなのか。

 精霊の攻撃が近いイメージだな。

 あれは精霊が発するものだから、精神を犯すようなものではないけれど。


 そういや、ファルが歌って癒してくれたんだっけ。

 それはアルスの御蔭でもあるが。


 アルスって、あの咄嗟の閃きが凄いんだよな。

 必要な時にごく当たり前に閃いてみせる。

 Sランク当時の俺よりもよっぽどSランクに相応しい男だ。


 あのスキルは使った者も使われた者も全てが等しく呪われる。

 その代わり、あらゆる防御を貫いてダメージを与える事も可能なのだろう。

 他にもヤバイ何かがありそうだ。


 他にもアレの使い手がいるとか言わないでくれよ。

 マジで死ねる。


 セブンセンサーでなかったら、あの時確実に死んでいた。

 もう絶対封印案件の代物だ。

 いっそ王国の宝物庫に預けたいような気分だ。


 だが気になる。

 ニールセンの奴、こんな物をどこで拾ってきやがった!

 こいつはミハエル殿下にも相談しておくか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ