18 帰郷
そして紆余曲折を経て、ついに異世界から日本へ帰還出来る異世界転移のスキルがもたらされたのだ。
その間の園長先生の冒険話を副園長先生から聞くのは良い酒の肴であったし、時にはその真理先生やファル、はたまた織原なんかの影に寄せてもらって裏ダンジョンの冒険を楽しんでみたりしたのだ。
そして、その祈願成就の衝撃に響く狸達。
とにかく親玉について突然この世界へついてきてしまっただけなので、当然元の世界への郷愁はある。
そのホームシックの具合は、まあ園長先生とどっこい程度であろう。
彼らも今では異世界生活の虜になっていたのだから。
やがて昭二の腕輪にも異世界転移のスキルが移植されたので、これでいつでも好きな時に日本へ行ける。
八百八狸達も口々に感慨を述べた。
「なんと、元の世界へ帰れるのか⁉」
「いや、昭二の奴はこっちに居つく気満々やで」
「もう完全に、この世界に馴染みまくっているしな」
「まあ、それはわしらも似たようなもんじゃろう」
「昭二は、あの間抜けな織原の小僧みたいに危ない目にも遭っとらんし」
「まあ、あやつはわしらがずっと守っておったし、この魔王城にいるんなら安泰や」
「あの魔界の鎧が攻めてこんならな」
「昭二の奴も、もう結婚して子供もいるんだしなあ」
「しかも、とてつもなくとんでもない奴がな」
「ああ、次の子も間違いなく危ないで」
「あの園長のおっさんも懲りん御人やからなあ」
「でもまあ、昭二の奴もたまには日本へ里帰りくらいはするんやないか」
「親に孫の顔くらいは見せてやらんとな。
親戚の集まりもあるだろうし。
昭二んとこは田舎やから、そういう行事も多いんちゃうか」
「奥さんの方も、結婚式の時は向こうの世界にいる母親が大騒動だったやないか」
「あいつはのんびりしとるから、里帰りはまたそのうちにっていう感じやないかのう。
今は子供が可愛い盛りだし、それにあいつも王国じゃそれなりの扱いを受けとるから何かと忙しい」
「そもそも、うちの大将がこっちの世界を気に入っちまっているんで、うちらはこのまま異世界狸のままやろ。
昭二の里帰りに合わせて、たまに向こうの空気を吸いに行くくらいの感じになるんやないか」
「まあ、わしらが帰りたい気分の時は、あの副園長先生かファルスの嬢ちゃんにでも頼めば連れていってくれるやろ」
「四国の大妖怪たる隠神刑部と八百八狸も、いよいよホンマに伝説の彼方に消えてしまういう事なんやな」
「伝説の彼方っちゅうよりも次元の彼方やけどな」
やがて、彼ら一家の里帰りが決まった。
のんびりと両家で集まって赤ん坊の顔見せをやるのだろう。
あのレオンもついてきてしまっていたが。
ルイーダも日本では親戚を驚かせないように出てこないつもりのようで、レオンにもオイタをしないよう葵ちゃんから優しく言い渡してあった。
せっかく初めて日本の親族に会うのだから、つまらない理由で騒がせたくないのだ。
日本の親戚には異世界的な素養に対する免疫がない。
レオンも賢い子なので、しっかりと猫を被る所存であった。
彼らは将来自分の親戚になるかもしれない人達で、レオンもそれを熱望していた。
だから葵ちゃん達の言う事には、いつも素直に従っていた。
何か問題があれば、護衛としてついてきている物見高い新撰組の隊長格達が楽しく捌くだろうから何も問題ない。
狸達も、一家の警護は彼らゴーレムや乳幼児達に任せ、彼ら自身の所用を済ます事にした。
そして次元移動で戻る際に置いていかれぬよう昭二の影の中に留守番狸を一匹残し、彼らは懐かしい郷里の山河へと繰り出したのであった。
「よおし、いい月夜じゃ。
今夜は久しぶりに故郷にて腹鼓を掻き鳴らすとしようかい!」
満月に心を浮き立たせる親玉狸の気合に呼応して、妖怪狸軍団も気勢を上げた。
「おおっ。
この四国に大妖怪隠神刑部と八百八狸ありやっ」
「いざ、鳴らさんっ。
我らが妖怪魂のセッションを」
「さあ、響け。
両世界に跨る八百太鼓」
「愛すべき異世界アスベータに乾杯っ」
「エルサット~」
何気に異世界のドワーフに毒されてしまっている日本生まれの稀妖怪大集団。
とことん呑み助で宴会好きな人外という共通点は、彼らをドワーフ飯の虜にしていた。
こうして四国の忠犬大妖怪は伝説の彼方どころか次元の彼方にて、彼らが一方的に忠義を捧げている愛すべき人間の友人と、これからも共に暮らす事になるのだった。
今回はこれで終了です。
いつも最後に書いておくのに、今回はうっかりと書いておくのを忘れました~。
お読みいただき、ありがとうございましたー。
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