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17 プリティドッグ(その他)・イン・タヌキワールド

 そんなこんなで月日は過ぎ去り、ケモミミ園にはあの子がやってきた。

 プリティドッグのミニョンである。

 そしてなんと、彼女も影の中の空間へ入ってこれてしまった。


「ありゃまあ、これはまた可愛い御客さんだぜ」

「こいつは人間の格好をしているが正体は犬だな」

「そうか、犬ならイヌ科空間へ入ってこれるのも道理だな」

「え、マジで!?」


 そういう理屈なのかどうかは知らないが、ミニョンが入ってこれてしまっているのは確かな事なのであった。


「おじちゃん達は誰?

 なんでこんなところにいるの?

 なんか犬のようで犬でないような微妙な匂いがする~」


「ああ、わしらは狸さ。

 ここいら辺に狸はいないようだが、まあイヌ科という事で、お前ら犬とは親戚みたいなもんだ。

 お前さんだって人間に化けているところを見ると普通の犬なんかではあるまい」


「うん。あたしはプリティドッグ、魔物だよ」


「ほうほう、確かに文字通り可愛い生き物だのう。

 なるほど、弱い生き物だから強力な魅了の術を使うのだなあ」


「山本さんの作る御飯は美味しいんだよ。

 あたし、彼の作る御飯も彼の事も大好き」


「それで寄ってきて、わしらを見つけたっちゅうことか。

 そうか、そうか」


 この子は自分と同じレベルやなあと思った刑部はにこにこし、他の配下の狸どもは自分達の大将が魔物の子犬と同じレベルなので少々項垂れてしまった。


 もう刑部が昭二にくっついている残念な理由は子分達にモロバレしてしまっていた。

 皆も大将と一緒に彼の料理を御相伴に与っているのだから。

 もちろん居る事がバレないように、くすねる量には気を使っているのだが。


「うーん、普通だったらわかんないし中にも入れないんだろうけど、ファル様の匂いがしたから、それを辿って」


 自分達のいる空間に匂いがついているものなのかと狸どもは首を捻ったのだが、実際にこの中へ入ってきた奴が匂ったと言っているので信じる他はない。

 何しろ魔物犬が言っている事なので、それも有りかと。

 いわゆる嗅覚ではない何かを、嗅覚のような感覚として感じ取っているのかもしれない。


 そして彼女の家族もやってきた。

 まずは母親と兄弟達。

 そして、あの物見高いジョニーもやってきた。


「なんだ、ここ。

 影の中にこんな場所を作ってしまえるなんて驚きの能力だ。

 いや、ここは面白いところだなあ。

 あっはっはっは、お前らって最高」


「御褒めに与って光栄だな。

 君らプリティドッグに関してはミニョンから色々と聞いたがなあ、なんか親近感しか湧いてこんわ。

 それに二本足で立つと、姿もよう似とるしなあ」


「そらま、イヌ科の妖怪とイヌ科の魔物なんだからなあ」


「まあ何にしろ、一つ言える事は」

「昭二の飯は最高に旨いっちゅう事や!」


 妖怪と魔物の差があるとはいえ、御互いにゆるゆるな存在であるため、ごく自然に意気投合しまくりの刑部とジョニーなのだった。


 そしてケモミミ園に織原勇人がやってきた。

 何しろ奴は『空間のスペシャリスト』なのであった。

 魔界の鎧の憑き物が落ちてからも、しばらくの間は慣れない環境でケモチビどもとドタバタしていたし、あんな酷い大騒ぎのあった直後だったので気付かなかったのだが、しばらくして落ち着いた頃に気付いた。

 謎の空間の存在に。

 しかし、それは!


 激しく悩んだ織原なのであったが、悩んだ末に副園長先生に相談してみた。

 能力も封印されているので何もしようがなかったのだし。

 だがもちろん、答えはこうだった。


「ああ、あれは気にしなくていい物なのよ」


「え、でもあれって大丈夫なんですか。

 しかも、よりによって防御力ゼロに等しい山本さんの影の中に」


「何を言っているの、織原君。

 そうじゃないの。

 あれが、あの人を防御しているのよ。

 日本にいた頃からね。

 異世界における守護神のようなものだわ。

 あの連中、伊達に狸明神なんて呼ばれていないみたいよ。

 あの人が御世話になっていた貴族も、あなたと同じで帝国第二皇子派の貴族から虐められていたけど、あの連中が痛快に返り討ちにして守ったらしいし」


 それを聞いて、さすがに呆れた織原。


「あの人も、やっぱり只の人じゃなかったんですね」


「あー、何ていうのかしらね。

 その只の人の部分のうちの、人徳な部分が福を呼んだというか」


「ああ、それはわかる気がしますね。

 すべてが、あの闇黒太陽のような魔王園長の対極にあるような方だから」


「おい、織原。今何か言ったか?」

「あ、いや。なんでもないです~」


 そして次にシャドースペース(織原命名)にやってきたのは、なんと影の所有者の御息女なのであった。


「あれえ、御父さんの影の中にこんな場所が!?

 面白ーい」


「おやまあ。

 これは、これは。

 なんとお前さんも、この空間には入れちゃったのだなあ」


「こりゃあまた。

 おおい、みんな。

 昭二殿の御嬢様の御来場だぞ」


「ほお。こいつは魂消た」


「ようきなすったな。

 御嬢ちゃん、御菓子食べるかい。

 まあこれも、お前さんの御父さんが作った奴だけど」


 それは、もちろん「アウターアイ」としてのルイーダの姿での訪問なのであった。

 おまけにレオンの奴も帯同していた。


「あ、狸さんだ。可愛い~」


 本当に可愛いかどうか非常に疑問のある、迫力ある妖怪本体の姿であったのだが、幼児から見てそういう判断なのだった。


 まあルイーダの場合は、幼児というには些か困るような存在なのだったが。

 幼児というか、元の瑠衣は赤ん坊なのだ。


 そしてレオンの視線が熱い。

 どうやら御友達魔物として連れ帰りたいらしい。


「レオン、この子達は駄目。

 うちの御父さんの事が大好きで、この異世界にまで一緒に来てくれた御父さんの御友達なの」


 アウターアイであるルイーダには当然その事がわかるのだ。


「そうかあ。

 ちぇえ、残念だあ」


「はっはっは。

 坊や、そんなにわしらの事が気に入ったのかい。

 それじゃあ、歓迎の挨拶をしてやらんといかんな。

 それ、皆の者。

 ミュージックスタート」


 そして壮大な狸の腹鼓の演奏に夢中になる二人なのであった。

 自分の影の中でそんな事になっているとは露知らず、昭二はこんな暢気な事を言っていた。


「なあ、葵。

 俺の可愛い瑠衣はどこへ行っちゃったんだい」


 手が空いたので机に向かって創作中だった御母さんはこう言った。


「あの子ならレオンちゃんが遊びに来たから一緒に出掛けたわよ。

 あの子と一緒だから大丈夫よ。

 というか、園長先生に言わせるとうちの子の方がヤバイらしいんだけど」


「そうかあ。残念だなあ。

 絵本を読んであげようと思ったのに」


「まあまあ、そのうちに帰ってきますよ」


 帰ってくるというか、そう言っている父親の影の中で、瑠衣は新しい御友達を八百九人(匹)増量していたのであった。


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