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13 昭二の恋

 もう一つ狸達の興味を大いに引く案件があった。

 それは昭二の『遅すぎた春』に関しての事だった。


 もちろん、その御相手は葵ちゃんであった。

 そして狸妖怪大集会ならぬ狸妖怪会議が始まった。


「あの朴念仁の恋愛について」

「あれはもう絶対に御世話せんと実らんのとちゃうか」


「ほっといたら絶対あかんやろなあ。

 昭二も男女問わず人好きのする感じの男なんやけど、若い娘から見て恋愛対象になるかというと、それはまたちょっと違うんじゃないかと」


「女にもてるっちゅうタイプとまったくちゃうからなあ」

「まあ結婚したら、いい旦那になるんだろうけどなあ」


「せやせや、なんせ相手は一回りも歳の違う女子高生なんやで」

「でも、もう学校へは行っとらんし結婚も出来る歳なんや」


「そもそも、こっちの法律じゃ十五歳で成人やし、特に結婚年齢の規定はないんじゃないか。

 爺の王様んとこに幼女の御姫さんが御嫁に行ったりもするからなあ」


「とにかく経過を観察して、サポが要る時は手助けするっちゅう事でどないや。

 あまり、おかしなちょっかいをかけても、あいつの事だから却ってなあ」


「そうそう。

 なんせ、卯建(うだつ)の上がらない三十男なんやしなあ。

 女子高生とくっつけるのは本来無理があるんだし」


 ただ脈が無い事はないというのが会議の結論であった。

 何しろ、この異世界でたった二人しかいない日本人の若い男女なのだ(昭二の方は園長先生比で)。


 女の子から見ても、後は日本人以外の選択肢しかない。

 それは少々辛いだろう。

 国際結婚の比ではない。


 女の子の方も昭二の御世話を任されて、なんだかんだいって甲斐甲斐しく世話を焼いてくれている。

 かなりしっかり者の娘のようだし、歳の割には精神が少々幼いタイプである昭二とならいい感じなのではないかと。


 彼女の側からしても、彼以外の日本人となると後はもうあのおっさんしかいないので。

 あの少女から見て園長のおっさんは完全に父親枠であろう。

 というか限りなく爺さん枠に近い。


 という訳で、あまり露骨に押すのではなく、忠犬達は陰ながらそっと手助けをするという方針に決まったのであった。


 初めてケモミミ園へやってきた時、可愛い彼女に紹介されてニヘラっという感じに笑っていた昭二。


(あ、こいつめ。あの娘の事を気に入ったんかな)


 そう思えるような感触。

 彼女の方も新しく来た日本人の仲間に好感を持ってくれたようだった。


 それから何かにつけ彼女が世話を焼いてくれ、それに対し昭二は人好きのする笑いを返すのみであった。

 昭二は昭二で、大好きな仕事をしていられればいいという感じで、日本では見合いなども皆断ってしまっていた。


 そんなこんなで何かこう中々進展が望めない組合せなのであった。

 だが少女の方は年頃でボーイフレンドの一人も欲しい時期にさしかかっていた。


 かなりオタクが入っていたせいで、そっちの方の関心は割と薄かったので同級生達が彼氏を作っていても、どうにもその気になれなかった。

 可愛い子なので引き合いは結構あったのだが。


 しかし、この世界にやってきてしまって、その種の事にも想いを馳せる事はあった。

 このまま異世界にいて、自分は将来どうしたらいいのかと。


 結婚はしたい。

 子供も欲しい。

 男性と御付き合いもしてみたいが、こっちの世界の人とそうなるには抵抗がある。


 価値観が違うというか話が合わないというか。

 エドなんかはそうでもないが、一般の冒険者の人と話していても、やっぱり話が噛み合わない部分が往々にしてある。


 やはり自分の世界の常識で話しているので、内容が相手に上手く伝わらないのだ。

 園長先生となら自然にそういう基準で話が出来るのだが。


 しかし、一見すると山本さんよりも若く見える彼も、日本語で会話をすると激しく年輪が透けて見える。

 会ったその時に年齢も告げてくれたのだし。

 そもそも、こんな異世界で幼稚園兼孤児院なんかをやっている人なのだから、はっきり言って好々爺以外の何者でもない。


 だが山本さんは違ったのだ。

 なんというか、まだ年齢が近い方なので互いに話題についていける。

 それに自分の話に対して笑ってくれる彼の朴訥で人好きのする笑顔が大好きだった。


 これが園長先生だと、何かにつけ昔話を始めるのでついていけない。

 逆に彼女が好きな大昔の特撮番組の話なんかは、リアル視聴世代なので話が弾む。


 そして、その様子を観察していた狸達は再度会議を開いていた。


「いい雰囲気なんやけどなあ」

「このままだと、多分殆ど進展がなかろうのお」

「うーん、どないすっかね」

「この世界じゃあ、あの日本人二人でくっついた方が幸せなんだろうしのう」

「二人とも、その気はあるみたいやで」

「後は切っかけ次第っちゅう事か」


「じゃあ、決まりやな」

「何がや?」


「そんなもん、決まっておろうに。

 人間の男女をくっつけるとなりゃあ、もうすぐ来るクリスマスしかなかろうもん。

 料理関連限定なら昭二も主役の一角なんやで」


「「「「それやっ」」」」


 こうして妖怪タヌ公どもによる、クリスマス・キューピッド大作戦が始まったのであった。


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コミカライズ連載サイト

https://comic-boost.com/content/00320001


コミックス紹介ページ

https://www.gentosha-comics.net/book/b518120.html


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