12 異世界暮らしの大妖怪
元々激しく放浪癖のある刑部は、ファルにくっついて、あちこちを出歩いて見物していた。
だから結構アルフォンスと同行する形になる事も多かったのだが、案外と気付かれないものなのであった。
彼らが居たところで特に害となる事はないため、セブンスセンスによって警告される事もなかった。
その様をセブンスセンスたるイコマも楽しんでいたのだろう。
また彼に通じているだろう神々達も。
ファルを通じて仲良くなった精霊達と一緒に魔導衛星に乗り込んで宇宙空間を楽しんだりもしていた。
狸初というか、日本妖怪初のアストロノーツであった。
そういう時は決まって緊急事態と相場が決まっているのだが、狸達はまったく気にも止めていない。
またアルフォンスに呼ばれた精霊達が集合している時などは、変化して一緒に乱舞して楽しんだ。
これもアルフォンスには、まったく気付かれていなかった。
食い逃げする精霊の存在など日常茶飯事の事だし、大概は呼ばれた数の三倍ほどはやってくるので。
狸達の知り合いである精霊どもも、ニヤニヤしながらそれを見ているのであった。
また帝国が攻めてきたりすると連中も警戒態勢を敷いていた。
何しろ戦うどころか身を護る術すら持たない昭二なのである。
彼らは何故か見様見真似で習得出来てしまっている魔道鎧までも展開し、気勢を上げて雄叫った。
限りなく精霊に近い存在でもあるので、中には精霊から教わって精霊魔法を使う者などもいるのだ。
「よし、お前ら。
昭二の事はわしらで護ったるで」
「そうでんな。
何しろ、大将自身が彼にくっついてこんな世界まで来ちまったんですから」
「まあ大概の事は、あの魔王がなんとかするじゃろうて」
「じゃあ一つ高みの見物とまいりますかな」
「まあ子供とかが危ないようだったら、ついでに助けますかあ」
「昭二は子供好きだからなあ」
そして大方は酒でも飲みながらドンチャン騒ぎをして、あれこれの騒動を飽きずに見物するのに留めたのであった。
また、そのための酒代を稼ぐため人間に化けて冒険者稼業にも精を出した。
『チーム・コリ(古狸)』『チーム・ヤオ(八百)』などと称して、冒険者ギルドに登録していたが、これまた誰にも気付かれない。
その有り様は、まるでプリティドッグのような連中だが、プリティドッグは腕っぷしには自信がないので冒険者になっている奴はいない。
そして比較的金目の魔物を狩っていたりした。
頗る付きで肉の美味い、大昔の巨鳥モアのような大型鳥魔物アサルトランナーなどはツマミとして好んで狩った。
あれは大きな図体と相まっていい金になる。
他に誰もいない時などは子分を見張りに立て、刑部もダンジョン内で図々しく大狸の姿に戻り、この大型地走鳥相手に相撲を楽しんだりもした。
狸どもは性格も物見高く、やはり限りなくプリティドッグに近い連中なのであった。
一つプリティドッグと違うのは、決して弱い魔物などではなく、異世界からやってきた大妖怪の一党である事だった。
そうして狩った獲物の一部はケモミミ園の厨房へ持ち込んで、一部は御土産として渡し、残りは調理してもらっていた。
ケモミミ園所属の冒険者に化けるなど造作もない事だったし。
そういう時はなるべく昭二本人に調理してもらい、彼自身の影の中で宴席を開くのだった。
無論、人の良い暢気な本人はそれを知る由もない。
だが、そんな彼らが閉口するような厄介な相手もいたのだ。
それはあの魔界の鎧だった。
何しろ妖怪は人あるが故に存在するのだ。
こちらの世界では何か限りなく精霊っぽい感じになってしまっている彼らではあったのだが、妖怪であるが故に人の影響をもろに受ける。
その精神の負の側面においても。
「アカン、あれはアカンでえ~」
「いや、大将。
さすがにあれはいけまへんで」
「くー、あれは魂が腐るような何かを発しておる」
「しかし、わしら妖怪に魂なんてあるもんかいの」
「いやあ、あの魔王が作ったゴーレムにもそういう物はあるんやから、わしらにも魂みたいなもんがあるんとちゃうか」
「「「「どの道アカンわ~」」」」
あれが現れる度に昭二の影に引き籠る狸軍団なのであった。
クリスマスなどの飲兵衛にとって大歓迎なイベントでは、人間に化けて厨房へ入り込み、出来上がってくる料理をガメていたりもした。
そうしていても厨房は戦争状態なので案外とバレないのであった。
材料なんかは自分達で用意して持ち込んでおいたので尚更だった。
「おい、まだ終わらないのか」
「材料はまだまだ残っているぞ」
「まあイベントなんだから大量に作らないといけないから仕方がないわね」
みんな人がいいにもほどがあった。
プリティキャットとは違って逆に材料持ち込みでやっている狼藉なので、そういう真似をしても発覚し辛いのであった。
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