17-4 暑苦しい奴ら
俺は覚悟を決めて、筋肉親父どもの所へ出かける事にした。
さっきまで一緒にいたエルミアの子供達との絵面的なギャップが酷過ぎる。
ドワーフの女の子達が可愛いのが救いだ。
彼女達は男みたいにでかくないし。
そんな筋肉物語の世界を通り抜け、道中苦労して聞き出した王宮を目指す事にした。
なんで道を訊くだけでこんなに苦労せにゃあならんのだ。
これが名古屋なら、道を聞いて答えてくれないなんて事はまずないのだが。
道を訊こうと思って声をかけても、全員一人残らず無視して行ってしまう人間砂漠東京とは異なる。
困っている人なんて一目でわかるだろうに。
だから俺は東京の事が大嫌いだ。
あの物騒なアメリカで警官に話しかけても、親切に道を教えてくれるというのに。
車でアメリカ大陸を横断中に、なんか凄まじく道に迷った挙句に何かの一軒家の周りでうろうろしていた警官二人組に出くわしたので、道を訊いてみたのだ。
なんというか非常に緊迫した空気で、心なしか警官が腰の拳銃に手をかけかねないほどの緊張感が漂っていた。
何かの通報があって様子を見に来たらしい。
それはアメリカだと色々と洒落にならない場合がある。
普通はそういう時に旅行者も空気を読んで声をかけたりしないけどね。
だが藁にもすがりたい心境だった俺は迷わず道を尋ね、彼らも英語が不自由な外国人観光客相手に懇切丁寧に道を教えてくれた。
結局、その後で彼らが犯罪者と無事に撃ち合いになったのかどうかもよくわからないし、俺も結果的に道はよくわからなかった。
まあ、それでも結局なんとかなったのだ。
少なくとも、あの犯罪大国アメリカにて車の中で野宿したようなヤバイ記憶はない。
アメリカもヤバイところだと、馬鹿な外国人観光客がうっかりとモーテルの外に繋がる大きな窓を開けていたりすると、その後で走り込んできた何者かが窓を開けようとする。
あの時は、すぐに閉めて鍵をかけておいたので、外から開けられそうになってガツっと音がしただけで済んだが。
その間、わずか一~二分の出来事だった。
あれにはびっくりしたわあ。
もし鍵をかけていなかったら、そのまま野郎が窓を開けて乗り込んできて刃物、あるいは拳銃を突き付けられていただろう。
あの後表に止めてある車のところまで行く事さえ憚られた。
チャチな安モーテルだったから併設のレストランもないし。
あの頃は「安全は金で買う」という格言すら知らなかった。
貧乏だったしなあ。
あの時は危なかったなあというリアルな思い出話であった。
あいつの足が黒人のくせに遅くて助かった。
オリンピックの陸上種目で大活躍する黒人選手を見る度に、あの時の事を思い出して冷や汗を流していた。
サッシにはガラスを割られても侵入出来ないように丈夫な鉄の網が内蔵されていたから外が見難いので開けたんだけど、それはアメリカでは決してやってはならない事なのだと激しく学習した。
まあここは地球の物騒過ぎるアメリカなどではないし、ドワーフも声をかければ立ち止まってはくれるし、一応は話も聞いてくれる。
だが話はまったく通じない。
自分の鍛冶道について語り出す奴。
己の作った武器の自慢話を始める奴。
更には俺の行く道はあの道とか、ここでの道案内とはまったく関係ない『己の道』について延々と話しだす奴。
とにかく話が通じない。
何故か道の真ん中で、ドワーフの酒を勧めてくる奴もいるしな。
少しだけ飲ませてもらったのだが、これまた凄く強烈なアルコール度であった。
俺も、ちょっとだけ面白い顔をしてしまったかもしれない。
その人族の痴態を見て、ニヤっと楽しそうに笑うのがドワーフという人種なのであった。
それから、やっと普通に話を聞いてくれそうな女の人を見つけて、なんとかおおよその王宮の位置だけは聞き出したのだ。
もう諦めて空からエルドア王国の王宮? までフライで一ッ飛びした。
仮にも王宮という大きな施設なのだから、空から見れば、まあなんとかなるだろう。
おおよその位置はMAPでわかるし、さすがに王宮のような建物はすぐに判別できる。
だがそこも、なんだか趣が他の国と違う。
なんていうのか、宮殿は確かに宮殿なんだけど、何かこう王宮というより工房という方が似合うような雰囲気が漂っている。
工場みたいな感じではない。
美しく、建物の造形自体は明らかに宮殿と思われる雰囲気なのだが、なんというかな。
アトリエ感が満載だ。
鉱石やインゴッドなんかを運搬する人々、そしてそれらが頻繁に通行するための動線に、大型の搬入口。
王宮のくせに、あちこちが通路だらけで雑多な人々が出入りしている。
煌びやかな服装をした人などそう見かけないし、どちらかというと頑丈な革製のごつい耐火エプロンや作業用のエプロンなんかを装備した方々が非常に多い。
しかも剣を帯びるのではなく、でかい鍛冶用のハンマーなんかを担いでいるし。
警備の兵士も、ウォーハンマーにモーニングスターや巨大な戦斧なんかを担いでいて、その造形や装飾は見事なものだった。
やはり入り口の衛士はいないので、たまたま通りがかったドワーフを捕まえて身分を明らかにしてミハエルからの書状を渡し、国王に取り次いでもらうように頼んだのだが、やはりミハエルと同じように鍛冶場へ連れていかれる。
そしてそこにいた、どうやらドワーフの国王らしき一際体の大きな一心に鍛冶に熱中している人物も、やはり人の話を聞く気はないようだ。
「おーい、そこの国王様~」
予想通りに返答はない。
仕方がないので、さっと国産三十年物のウイスキーを取り出し、中身をドボドボと地面に溢し出した。
こうすると凄く匂うからなあ。
すると、その国王様らしき大男はくるりと身を翻し、まるで魔道鎧でも発動させたのかと思う速さでやってきて俺から瓶をひったくり、そのまま全て飲み干した。
これにはさすがに俺も呆れた。
そいつは更に、追加でこんな呆れるような事を言ってきた。
「おい! 酒を粗末にするな。
世界で最も禁忌な行為だぞ」
そうなんだ。
まあ、かくいう俺も酒を飲み残すなんて罰当たりな事は滅多な事ではやった事がないのだが。
そういう勿体ない事をする時って「もう二度と酒なんか飲まない」などというアレな世迷言を言っているような時だし。
その無謀な誓いは、ついぞ果たされた事はないがな。
「何を仰いますか。
貴方様方の崇拝するフレア神様に御神酒を差し上げていたのですよ。
神々への供物を横取りするなんて、あなたこそ罰当たりな方だ」
そう、この人達はこの世界の太陽神であるフレアを崇めているのだ。
それは爆発火焔魔法の名前にもなっている。
彼らの職業柄、それもわからんでもないのだが。
ここではロスが崇められていないため、神聖エリオンたるファルの威光も通じない。
通じるのは酒の威光だけだ。
「何を言うか、酒は飲んでこそだ。
しかし、これは美味い酒だな。
ところで……誰だ、お前は」
国王様でこれだよ。
全てにおいてアバウト。
まあ変に理屈っぽいような奴よりはいいかな。
「俺は爆炎のアルフォンス。
精霊魔王とも呼ばれている。
御覧の通りにね」
俺は連れてきていた炎の精霊の中で一番でかい奴を具現化させた。
何せ、世界一の超高級レストランを貸切中なんで、こいつらも浮かれているから張り切ってくれている。
「うお! こいつは炎の精霊サラマンドラゴ!」
こいつ、そんな名前だったのか。
サラマンダーなのかドラゴンなのか、今一つはっきりしない奴だな。
確かに火蜥蜴サラマンダーっぽい感じの蜥蜴的な顔立ちと赤いボディに、ドラゴンっぽい形とドラゴンの翅を持つ精霊なのだが。
そして強力な火精霊の力を受けて鍛冶場の炉の温度が一気に上がる。
もちろん燃料は俺の魔力だ。
おーい、あまりやり過ぎないようにな。
「おおおー!」
上半身裸の筋肉達磨どものコーラスが響き渡る。
う、暑苦しい。
魔法で熱は防げるが、この暑苦しさはなんともならない。
きっと美少女度が上がればなんとかなるはずだが、ここにドワーフの美少女はいない。
でもきっとこの王宮のどこかにいるはずだから、それを想像して凌ごう。
こんな精神攻撃が意外ときつい。
魔法で防ぐのは無理そうだし。
「お前が精霊魔王か。
噂には聞いていたが、中々やるじゃないか!
ところで、ここへ何をしに来たのだ?」
やれやれ。
「うちのミハエル王子が昨日来たと思ったのですが」
「む、そんな奴がいたかな」
う、噂以上に酷いな。
でも俺の噂もちゃんと聞くことは聞いていたんだな。
単に鍛冶の方が大事なだけか。
しかしサラマンドラゴが頑張ってくれたので、どうやら話くらいは聞いてくれそうな雲行きだ。
「じゃあ、あっちで一杯やりましょう。
俺が稀人だという噂を耳にした事は?」
「稀人だと!?」
あれ? 聞いていないのか。
「なんだったっけな、それ」
「あのなあ」
もういいや。
あんた、もう黙って酒を飲めよ。
俺は無言のまま、その場でテーブルを出す。
一見すると、ただのアルミテーブルっぽく見える奴を。
奴は自分で木製のいかにも丈夫そうな椅子を用意した。
ほとんど切り株みたいな奴だった。
ただし、年輪が肉眼ではよく判別できないほど、みっちりと木目が詰まっている奴だ。
よく磨かれていて物凄い光沢を放っている。
一体全体、木が何年生えていたらここまでになるんだよ。
あの数千年樹である屋久杉だって年輪くらいはハッキリと見られるというのに。
異世界万年杉?
俺が出してやった、超強化したキャンプ用のチェアーの細いフレームが心許なく見えたらしい。
そいつだってドラゴンが座っても大丈夫なくらいなまでに強化してあるのだが。
それによく見たらサイズが合わないな。
昔日本でワールドカップがあった時に俺はアメリカから帰国していたが、アメリカからの帰国便のエコノミーシートに大変ファットな男性が座っていて無茶苦茶に苦しそうにしていた。
スチュワーデスが集まって困っていたみたいだしな。
手の施しようがないとは、まさにあの事。
普通は数時間も座っていたら死ぬぞ、あれ。
というか、あれは椅子の方が可哀想だった。
何故、その図体で日本の機体に乗ろうとしたのか。
体が液体になっている猫やウサギじゃねえんだからよ。
まあアメリカの航空会社で席が取れなかったんだろうけど、はたしてあいつは生きて日本の土を踏めたのだろうか。
あれで席が空いていたらビジネスクラスにでも押し込んでくれたのだろうけど、ああいう満席状態の時は絶対に無理だからな。
もうダブルブッキングが発生してそうなほどの満席御礼の状態だった。
シートサイズが小さめである日本の航空会社は搭乗の際に『サイズ制限』を取り入れるべきだと思ったよ。
とりあえず、この王様は自分でキングズシートを用意した。
案外と、これがいつも座っている玉座だったりしてな。
このアレな感じの王様なら、それも十分に有り得る。
そのアルミ風テーブルの上に、ウイスキーの瓶と外国製のクリスタルグラスを出す。
ドワーフの国王はグラスを手に取り、目を細めてその煌めきに満ちた美しい輝きを見ている。
あれだ、それも同じ炎を使って作る製品だから気になるのか?
俺は空中にボール状の氷を作り出し、グラスにそのままカラーンと放り込む。
地球だと専用の製氷型かなんかで作るのだが、ここではイメージ通りに魔法で作れる。
「なんだ、これは」
「度数の高い酒だから、氷を入れて飲むんだよ。
それに冷たくて美味いだろう。
オンザロックって言うんだ」
「そんな事をしたら、酒が薄くなるではないか」
「あんた、もういいから飲めよ」
さっきは国産の奴だったから、今度は外国産の三十年物を注いでやる。
「むう。確かに冷たくて美味いな」
なるほど、ビールからいく手もあったか。
でもアルコール度数が低いから、絶対に水みたいだって言われるだろう。
だが次の瞬間に国王が慌てて立ち上がりテーブルに両手をつけて、顔を張り付けんばかりにして驚いていた。
「なんだ!?
少し気になったので鑑定してみたら、このテーブルはオリハルコン製じゃないか!」
「ははは、今頃気づいたのか。
いつ気付くかと思ってニヤニヤしながら待っていたのに」
俺はグラスをカラカラさせながら豪快に笑った。
「くそ、騙されたわ。
ちょこざいな偽装をしおって。
しかし、オリハルコンの上に被せてある金属の方が珍しいものだな。
なんだ、これは」
ドワーフの国王がちょっと悔しそうだ。
ふん、馬耳東風国王から一本取ってやったぜ。
こいつに陛下とか敬称をつけるのは、なんか嫌だ。
アルバトロスの国王陛下の値打ちまで下がるような気がする。
「そいつはアルミ、正式にはアルミニウムって言うのさ。
量自体は鉄と同じくらい地表に存在しているのだが加工が非常に難しい。
扱いに慣れていないお前らじゃあ、ちょっと扱えないような代物だな。
少なくとも、すぐには真面な品質に仕上がるまい」
「ふざけるな。そんなわけがあるか」
「じゃあ、これを加工してみろよ。
こいつはアルミ缶というものさ。
もう精製されていて純度が高いから、リサイクル率が非常に高い素晴らしい素材なんだぜ。
表面を塗装してあって、内側には特殊なコーティングがしてあるがな」
俺は意地悪く、一本ビールをぐいっと飲み干して、その空き缶をくれてやった。
その昔、テレビに登場するヒーロー物のバイクを独占的に作っていたバイクメーカーが、自社のレーシングバイクのレプリカマシンを販売しようとしたが、極端に軽いアルミフレームをちゃんと作れる会社が無くて、作っても作っても凄まじく不良品だらけだった。
コスト的に一般市販は無理だと、ライバル会社の人間達はそれを見て大笑いした。
だが、その会社の連中はどうしてもヒーローバイクを街で走らせたかったらしくて、とうとう執念で作り上げてしまった。
アルミフレームを作ってくれたのは、結局アルミの鍋や釜を作っているような小さな会社だったようだ。
今までに無い商品の登場は若者の心を掴み、高い値段であるにも関わらず爆売れした。
かっこいいだけでなく、軽くて非常に性能が良かったのだ。
その当時はバイクもパワー競争が過熱し過ぎていて、それ以上過激化しないようにメーカーが自主的に馬力規制を敷いていたから、高性能を確保していくためには車体を軽量化しないといけない現実的な側面もあったのだし。
ピーキーな特性を持つ高性能な2サイクル二百五十㏄エンジンを積んだ軽量なバイクは、派手なカラーリングと、当時は安い小排気量のバイクではちょっとなかったような凄いフルカウリングと相まって、非常に格好よかった。
元々2サイクルエンジンを積んだバイクの方が軽いのだし。
当時そういう物は、千百㏄クラスの本格的な価格も高価で当時は免許取得が困難であった大型輸入車の領域だったのだ。
そのような高性能で超格好いいレーシングスタイルのバイクを、大型輸入車と比べて比較的安い値段で入手出来、また当時は主流であった中型限定免許で乗れるとあって、少々値段が高くても、そいつは爆発的な大ヒット商品になった。
おまけに二百五十cc未満のバイクは車検が無いのも相まって、街中を白と青の『アクアフレッシュカラー』と呼ばれた派手で目立つスタイルで、そいつが大量に走り回った。
後に出した七百五十㏄の4サイクルエンジンを積んだフルカウリング付きの大型バイクも、軽量高出力である、そのメーカー独特の『油冷エンジン』を積み、アルミフレームの恩恵で四百㏄の中型バイク並みの重量で収まったので性能が他のメーカーのナナハンバイクと比べて段違いだった。
免許制度からくる販売数を考慮して、それの四百㏄版も登場し、もちろんそいつも断トツに軽くて性能がよかった。
それを成し得たのは、超軽量のアルミフレームだからこそだった。
出荷時当初からメーカー標準で装備されていた、レーシーで軽量な純正集合マフラーもそれに大きく寄与した。
街中をそのメーカーの非常にレーシーで高性能なバイクが、まるで開発者のそれまでの鬱憤を晴らすが如く、特撮ヒーローの群れよろしく走り回っていた。
そこまでたくさん売れたのでコストも下がり、また量産技術も格段に進歩した事だろう。
不良率もどんどん下がり、先に行くほどにコストが下がり販売数の増加と相まって右肩上がりに利益が上がっていくのだ。
最初は彼らの事を思いっきり小馬鹿にしていた他のメーカー達は、まるで小馬鹿にしていたゴブリンが実は最強の魔王だったのを知ったかの如くに慌てふためいて、半年くらい後には軽量アルミフレームのレーサータイプをあれこれと投入していた。
それも、既に先を行っていた件のメーカーが死に物狂いで苦労した航跡に乗っただけの、あまりにも恥ずかしい後発者タダ乗りによる恩恵であった。
あれだけアルミフレームの実用化を小馬鹿にしていたくせにな。
世の中には本当に駄目な奴らっていう者はいるものだ。
その中には二輪業界ナンバーワンのメーカーで大量に四輪車まで作っていたメーカーもいて、恥も外聞も無くアルミフレーム二輪車に参入していた。
その御蔭で連中は、顧客である自社のバイクファンからさえも「あれえ、○○さんはアルミフレームなんか興味無いんじゃなかったのー? 今更そんなパクリ商品を出すんですかあ。へええ」などと公然と失笑冷笑を浴びまくっていた。
おまけに大慌てで出したバイクは妙に半端な感じで人気も今一つだった。
昔からそういう感じの無難なバイクを出す会社ではあったのだが、まあ紛い物の技術じゃ、いきなりはなあ。
人真似の技術は開発の真摯さに欠けるから自然とそうなるのだ。
同時に投入した、四気筒の内の二気筒を動かしたり止めたりして燃費の向上を目指すような、自社の特別で画期的な技術さえも色褪せてしまったくらいだ。
あれは客の間で評判が悪かったな。
客はスポーツバイクにそんな余計な物を求めていた訳ではないのだ。
軽量ハイパワーバイクに、バイクファンからは圧倒的に軍配が上がった。
むしろ現行のバイクの方がパワーは無くても、美しいスタイルと扱いやすさで大人気だった。
俺もその旧型車種が好きだったよ。
四気筒エンジンは嫌いだったから、そいつには乗らなかったけど。
他のメーカーでその半端な技術を真似する会社は一つもなかった。
四輪車を作っていただけあって、排気量がリッタークラスである化け物階級のバイクでは、文字通り音に聞こえた怪物マシンを作っていたほどの業界王者であった会社なのに。
金儲けのためだけに苦し紛れに急遽出す製品って、やっぱり駄目だよな。
どうせやるんなら、少々時間がかかっても半端な真似すんなや。
それくらいアルミは製造加工が難しい代物なのだ。
今はそれほど難しい事でもないのだろうが、当時は世界一勢いのあったメイドインジャパンの技術をもってしてもバイクのアルミフレームの製造は大変難しかったのだ。
バイクの世界シェアで九十パーセントを占め、高性能バイクの代名詞であったほどの日本メーカーの力を持ってしてもだ。
量産自動車では、エンジン本体やホイール以外には本格的なアルミパーツすら中々無かったのではないか。
アルミをボディの素材に採用した特殊な四輪車が登場したのは、その遥か後世の事であったのだ。
まあ、この世界では魔法があるからどうかな。
あ、しまった。
大事な交渉の途中で要らん事をしたな。
ドワーフ国王の奴め、もうすっかりアルミ素材に夢中だ。
まいっかあ、俺も今日は飲もう。
どうせ、俺が興味本位で受けた仕事なのだから。
ちなみに俺はビール派さ。




