表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1315/1334

29 覚えてました

 それから俺は何故か気になってステータス画面を見てみた。


「あ」

「どうしたの?」


「いやなあ。俺、魔法覚えてたわ」

「ええっ」


「なんじゃと、ならば何故魔法を使えんのじゃ」


「わからん……だが少し気になる事がある。

 ちょっと他の魔法を試させてくれないか」


「それは構わんがのう。

 お前は魔力量が多いから、念のため、こちらの魔法試射室へ行くとするかの。

 そこは少々の魔法は吸収してしまえる構造になっておるから安心じゃ」


 そして、また別の入り口を開けてくれて、皆でそちらへ移動した。


「では、玲よ。

 そっちの駄目駄目なおじさんに手本を見せてやりなさい」


「きゃははは。

 おいちゃん、見ててー。

 そら、ファイヤーボール。

 そしてエアカッター!」


 玲が放った大きな火の玉が勢いとく飛び、その後で放たれた風の刃がそれを真っ二つにして打ち消した。


「ほお。

 やるなあ、玲。

 じゃあ、俺も」


 俺は見事に、その二つの魔法を習得していた。

 どうやら、発動するのを見た魔法をイコマが解析してステータス画面にデータを書き込んでくれるものらしい。


 これは見取りスキルとでも名付けておくとするか。

 ステータスにスキルの魔法欄が出来ていて、そこにエアボールその他の魔法で、都合三個魔法名が並んでいた。


 俺はステータス画面から、目視で効果が確認しやすいファイヤーボールを選んで放ってみた。

 だが、やはり魔法は発現しなかった。

 これは!


 何かこう覚えがあるような感覚だな。

 それはいわゆる『赤玉が出た』みたいな感覚だ。


 赤玉というのは男性にとって女性の閉経に相当する物で、正式にはそれを何というのか知らないが、いわゆる赤玉が出てしまうと精液が作れなくなり射精が出来なくなる事だ。


 要するに男としての人生が終了しているという訳だ。

 性的な欲求や性器の勃起などが無いという事ではなく、イクという射精の感覚があっても実際には殆ど射精されていないという事象だ。


 いわば射精した時と同じように「イク」事はイクのだが、実際には射精していないので、あのどくどくとした射精の快感はない。


 俺は体も壊していたし歳もいっていたので、もうそういう赤玉状態であったのだが、これはまさにそのような『空砲』という感じの状態だ。


 あと、車のウオッシャー液のタンクが空なのにスイッチをバンバン入れて無理に液を出そうとしているようなもんか。

 モーターがビービーと唸っているだけで液なんか出ないわな。


 少なくとも子供の玲にはよくわからない感覚だ。

 歳を食っているギルマスにはわかるかもしれない。

 初めて精通する前から射精する能力がない男性のようなものだ。


 つまり、俺は……魔法使いになる前から魔法使いとして終わっているような情ない状態であるものらしい。

 すべての魔法が、きちんと魔力を消費しながらも、完全に空砲として発射されるのだ。


 大砲の空砲が装薬を爆発させて火薬を消費しても、弾薬の先に砲弾は付いていないので、煙を吹いているだけで弾は飛んでいかないというわけだ。


 な、なんてこった。


「うわっ、そんなのありか!」

「どうしたのじゃ?」


「俺には強大な魔力があり、また魔法も覚えられる。

 だが、魔力を発動させても魔法としてそれを放つことが出来ない特異体質であるらしい。

 たぶん、これはどう頑張っても解決出来ないみたいだ。

 さっきギルマスが言っていた怪しい方法以外には魔法が使えないようだな」


「うはあ、確かにそういう魔法音痴のような者もおらんではないのだが、それは非常に稀な話じゃ。

 よりにもよって、お主のように超絶な魔力に溢れた者がそれとは、これまた因果なものじゃのう」


「ああ、稀人だけに稀な事になっているのかもな。

 そういう訳なので、頼むからさっきの話をもっと詳しくしてくれ」


「そんなもん、稀人に関係などないわい。

 仕方がないのう。

 じゃが、これの取り扱いには十分に注意するのじゃぞ。

 特に他人には絶対に渡してはならん」


「他人に渡す?」


「そうじゃ。

 それは『魔法のスクロール』と呼ばれる物で、羊皮紙に魔法インクで魔法を印した魔法陣を書き込むのじゃ。

 それを人に渡せば、魔法を使えん奴にも、そこに書き込まれた魔法を使えてしまうからのう。

 だから犯罪組織なんかに利用されるのじゃ。

 まあ、あれは描き方も結構難しいしのう。

 描くのにも魔力が必要じゃ」


「う。

 俺って美術とか書道とかって全然駄目だったんだよなあ。

 ちゃんと描けるだろうか」


「まあ描けなかったら代筆を頼むという手もある。

 そのスクロールには最低限の魔力で魔法回路のみを形成してもらっておき、使用時にお前の強力な魔力を注ぎ込むのじゃ。

 お前の強大な魔力を注ぎ込んで作ったスクロールよりも、流出してしまった時などはその方が安全かもしれんな」


「へえ、そんな事が出来るのかい」


「ただしじゃ。

 魔法陣を描く人間が使える魔法でなければスクロールは描けぬし、お主もその魔法を覚えていなくてはならぬ」


「じゃあ、玲が描いてあげなよ。

 ここで描き方を教わってさ。

 玲が知っている魔法を、あらかじめ、おいちゃんに覚えさせておけばいいのよ。

 どうせ、おいちゃんならスクロールのサンプルさえあれば、いくらでも作れちゃうんでしょう?」


「何、それはどういう事なのじゃ?」

「ああ、それはこういう事さ」


 俺は、いかにもポケットから出したかのように御茶のペットボトルを出して、更にそいつを次々とポケットから出していった。

 ちゃんと一回ごとにポケットを叩くパフォーマンスも忘れない。


「お主、まさか」

「その、まさかさ」


「御茶がビスケットの歌みたいに増えていくね!」


「やれやれ、まだそんな厄介な特技を隠し持っておったのか。

 間違っても、お金なんかを勝手に増やしたりするのではないぞ。

 ああいう犯罪は、スキルや魔導具で賞罰判定されるとすぐ明るみに出るからのう」


「それなら、こういう物なら別に構わないだろ」


 俺はそう言って、宝石店でコピーしておいた金板に銀板、ダイヤやエメラルドなんかの宝石を山のようにコピーしてみせた。

 地球の金貨・銀貨などのコインは、スキル判定でお金扱いにされる可能性があり、グレー判定という事で止めておいた。


「呆れた奴じゃのう。

 じゃが、その綺麗な光る石を複製して出すのは止めておくがいい。

 それは、おそらくこの世界では見かけぬものだ。

 また、お前らを巡る争いの種になる」


「そうか、このダイヤモンドも原石はこの世界にもゴロゴロしているはずなんだがな。

 最近は環境汚染を引き起こすと言われる陸地のダイヤモンド鉱山からではなく、海底から拾ってきたエコな物が喜ばれているよ。

 この綺麗な光は独特な石のカットがもたらす物なんだ。

 まあ世界で一番硬いと言われた鉱物だし、削るのも磨くのも豪い事だがな」


 この世界に有るらしい魔法金属を使えば簡単に加工できるかもしれない。

 魔法でも十分にやれそうな気はするし、そもそも俺のアイテムボックスでは部分コピーというやり方をすると、そういう風に削ってしまうような事も可能なようだ。


「どの道、現状でそいつは市場に存在しておらんのだから、公に出すのは止めておくがよい。

 どうしても誰かに特別な贈り物でもしないといけない破目にでもなったら希少価値が物を言うじゃろうから、その時に考えるのじゃな。

 さて、玲よ。

 この駄目駄目なおっさんのために絵描き教室でも始めるとしようかの」


「うん。

 凄いや、何かのファンタジー映画みたい!」


 ここでも主役はスクロールを使う本人である俺ではなく、小学生男子が務めるようであった。


魔法音痴の設定は、本篇では相川醍醐というモブキャラ稀人に引き継がれています。

もちろん、おっさんはモブではなくて最強のスクロール使いな訳ですが、メインの魔法使いキャラは小学生の男の子という設定になっています。


おっさんは玲のための魔力バッテリー的な設定でもよかったのですが、迷宮は魔素に溢れていますしね。


またニルヴァの迷宮がアドロスとは比較にならないほど超凶悪なダンジョンなので、それだとたぶん、おっさんが生きて帰ってこれないので、こういうスクロールを使うキャラにしてあります。


女の子の方は最初から御留守番役の設定ですね。

あと二人への祝福などの担当です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ