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26 再生

「お主は本当に奇天烈な奴よのう」

「煩いな」


 そういう俺の声も、少々自分でも奇天烈に感じるほど高めの声で、なんというか若々しい。


「ふう、再生ってそういう意味なのかよ。

 まさかこんなスキルだったとは。

 いや、こいつはきつかったな。

 もう死ぬかと思ったぜ」


 そう、俺は見事に『再生』されていた。

 若者だった頃の肉体に。


 これは、おそらく二十二歳の頃の俺の姿だ。

 丁度肉体が全盛期であった時だろう。

 この再生というスキルは、そういう頃の肉体に戻す作用があるのか。


 太って激しく緩んでいた肉体が、ぐぎゅうっと絞られるような感じで強烈だったなあ。

 昔の家にあった古い洗濯機についていた、洗濯物がペチャンコになるローラー式の脱水機を思い出したわ。

 こんなことになるのなら、もう少しくらい体を絞って鍛えておくのだった。


 確かに凄いスキルだとは思うのだが、今の俺は一体何歳なのだ?

 いや肉体年齢という意味において。


 クローン羊は、六歳の羊を元に作った羊はクローンも生まれた時既に六歳の老羊で、生まれてから割合とすぐに老衰で死んだ。

 やがて俺にもそういう運命が待っているのだろうか。

 それとも若くなった分だけは、また人生をやり直して長生き出来るのだろうか。


「うわあ、おいちゃんが若返った」


「うーん、これだともうパパ設定が使えんな。

 今度から、ちょっと歳の離れた御兄ちゃん設定で行くか」


「御兄ちゃんかー、なんか照れるう」


「何だよ、今までだっておいちゃんだったろうが。

 字間に『に』の一字が入っただけだぞ」


「いや、なんていうかねー」

「やかましわっ」


「すごーい。

 おいちゃん、めっちゃ細くなったね」


「う! なあに、またそのうちに太く戻るさ。

 二十八歳くらいまでは食っても食っても太らなくて余裕で細かったけどな。

 しかし、こんな状態だとなんだか細すぎて頼りないというか、なんかこうふらふらするな」


「全体の重量バランスが今までと違って崩れた感じ?」


「そうなのかもしれんなあ。

 今までは、どっしりとしていて重量的には安定感があったからなあ。

 重心が低かったし。

 まあすぐに慣れるさ。

 新しい車に乗ると乗り慣れない感じがするようなものだ。

 しかし、この見かけばかりはな」


「見慣れなーい」


「いやあ、なんていうのかなあ。

 うん、やっぱ見慣れない」


「澪、お前もか。

 まあいいけどな」


 しかし、凄い。

 体の具合の悪かったところが全てよくなっていた。

 目も歯も体中の筋肉も神経も。

 完全にボロボロだった体が昔のように、いやそれ以上の状態じゃないのか。

 頭も妙にスッキリして明晰になっているのを感じる。


「言っておくが、そのスキルも持っている事は黙っておいた方が良いのではないか?

 もしそれが万が一『他人をも若返らせる』ような真似が出来るスキルであるのなら……」


「はいはい、大賢者様の御忠告には従っておきますよっと。

 それよりも……なあギルマス、俺ってMPという通常は魔法力を表すような力が超絶にあるようなんだけど、魔法を使えないのかい」


「いや、よくわからんのう。

 お前の場合は、なんというか『白紙』に近いような感じで、よく見えぬ。

 それも主神様の契約者である事と、更にはお前さんの言う別の女神様との契約というか加護のせいなのかもしれん。

 まあ習えば魔法も使えるようになるかもしれんしの」


「ちょっと教えてくれよ。

 どちらかというと、治癒回復や身体強化みたいな物が欲しいんだが。

 防御魔法もあったら、ありがたいな。


 あと空間魔法は欲しいな。

 ルームはありがたいし、転移魔法が使えたら凄い。

 空間魔法系のスキルであるアイテムボックスを持っているんだから、その辺はあんたが言うところの応用で何とかならないかい」


「では、後で教えてしんぜよう。

 それと、例の元の世界へ戻る方法に関してなのじゃが」


 ギルマスは何故か、そこで言葉を切ると逡巡するかのように黙った。


「おい、なんで黙るんだよ。

 そこ、一番聞きたいところなのに」


「うむ、心して聞くがよい。

 あの次元スキルを持つ迷宮の、底の底にある最深部の階層には、そういう次元を超える能力を持った魔物がおるのだという。

 そいつを倒せば次元転移の能力が得られると言われておるのじゃ」


「え、それはつまり俺達が、あのニルヴァの迷宮を完全攻略しないといけないっていう事なのか?」


 だからか!

 イコマがオーリスとかいう女神と契約したのは!

 しかし……さ、さすがに厳しいな、おい。


「その通りじゃ。

 だから、お主らのスキルなんかを見てからでないと少々言い辛くてのう」


「あんた、さっきニルヴァは巨大な迷宮だって言ってなかった?」


「うむ。

 この広大なアリス王国で唯一の迷宮であり、そのせいで力が一点集中するものか、やたらと規模が大きく世界最大の迷宮と名高い最強のダンジョンなのだ」


「う。それを攻略するって物凄く大変な事なんじゃ……それに、その迷宮が攻略されていたら、迷宮って無くなってしまうのでは」


「何、攻略というか、要は踏破するという事じゃ。

 あの迷宮は階層の番人と戦って勝たねば次の階層へは行けぬ試練があってのう。

 今まで三人の人間が攻略したとされるが、それすらも伝説の遙か彼方の物語じゃ。

 それも、おそらくはニルヴァがまだ若い迷宮であった頃の話なので、今のように巨大ではなく深層といえるような階層も無かったのではないか。


 ここ最近の攻略では六十七階層あたりが関の山ではないかの。

 踏破された頃の時代はそれよりも浅かったのではないかのう。

 人間の能力もその時代よりは高くなっているじゃろうから深く潜れるようにはなったが、ニルヴァ自身も著しく成長しておるので攻略難易度は更に上がっていよう。

 未知の強大な魔物が待って居るはずじゃ。


 それに今回ニルヴァが成長したようなので、各階層も広くなっているやもしれん。

 つまり歴代最高の探索者にならねば攻略は出来んという事じゃ。

 まあ信頼出来て最強な仲間でも作れれば、あるいはのう」


「うわあ……それって今どこまであんの、最深部は」


「確か百四十七階層ではないかのう。

 しかも今回また成長したとなると、へたをすると百六十階層くらいまで成長したやもしれぬ。

 最深層まで行くと魔物のランクがどこまで上がっておるものやら。

 今までではSSSランクが上限であったはずじゃが、へたをするとその上まで行ってしまったかもしれんのう」


「あのなあ。

 そんな物、素人の俺達に最深部まで行けるわけがないだろう。

 大体なんだよ、その迷宮っていう奴はさ。

 そんなもんが何故、俺達の世界へやってくるんだ」


「そりゃあ、あれは生き物のような物で、一種の魔物のようなものじゃからのう」


「う、そいつの腹の中へ自分から入って、その最奥にいる魔物と戦えってか。

 まるで大怪獣の中に入って、そこの体内奥深くに居る巨大で強力なボス寄生虫怪獣と戦うようなもんだな。

 さすがにそいつは無理だわ~」


「では、この世界に一生島流しじゃのう。

 まあ今では猛者の中の猛者である最高ランク冒険者さえ百階層にも辿り着けんのじゃから、いくら凄いスキルを持つお前達でも無謀な挑戦は止めた方がよかろうよ。

 百階が一種の節目でのう。

 そこから出る魔物は全てSランク級となる領域と言われているのじゃ。


 先の階層に出て来る魔物のランクを計れる能力者もおるから、そやつらが推定したものじゃがな。

 魔物ランクは もう深層まで行くと、階層ボス魔物ではなく通常魔物としてSランクが出てくるらしい。

 AランクからSランクの間には天地ほどの差がある。


 そこを越えられぬようでは、踏破などとてもとても。

 それとてもSランク魔物をザクザク倒して進むなど、とてつもない超難関なのじゃ。

 更に、その奥にはオーバーSランクな超危険魔物が犇めいておる。

 まあ、お前らならば無理をせずとも、この世界でも十分にやっていけるはずじゃ」


「かーっ、それもまたなあ。

 俺はまあ、それでも別にいいんだが、この子達はなあ」


 見れば、澪はもう泣きそうな顔をしていた。

 まあ無理もない。


 ただでさえ、訳のわからない女神の化身扱いをされて凹んでいるのに、日本への帰還が絶望的になってしまったとあればなあ。

 だが違う意見の奴もいたようだ。


「そうかあ。

 ついに僕の時代がやってきたのかな!」


「玲、お前なあ。

 いやまあ別にいいんだけれども」


 ああ、どうやら保護者のおっさんもダンジョンとやらへ、小学校三年生の子供の付き添いとしてついて行かねばならんのだろうか。

 本当なら景気が良さそうなニルヴァにて、何かの店でもやったらいいかと思っていたのに。

 澪はやりたければ料理屋でもやらせて。


「駄目よー、玲。

 危ない事をしちゃあ。

 あんたは学校へ行かなくちゃ」


 澪、そういうお前は学校へ行かなくてもいいのか?

 これが日本なら、お前ら小学生を学校へ行かせないと、現在お前達の保護者をやっている俺が市役所とか教育委員会あたり、あるいは警察から怒られてしまう案件なのだが。


 まあ澪は封印案件扱いにされている子なので、それもまたあれなのだがな。

 それに関しちゃあ、この俺とて人の事は言えんのだが。


「えー、そうなのー」


「あ、そういや、この世界の学校ってどうなっているんだい」


「まあ、平民の子供は村の牧師や街の神父様あたりに勉強を教わって、後は実地で仕事を教わるという感じかのう。

 貴族や裕福な商人の子は金のかかる特別な学校へ行くし、あるいは家庭教師による教育じゃのう。

 あとは」


「あとは?」

「その子の場合は、魔法王国ドーラ王国への留学というのも一つの道じゃのう」


「玲、ダンジョン攻略もいいけど、魔法学園物の主人公なんかはどうだい?

 お前の力なら、それだって十分に勤め上げられそうだ」


「う、そっちのストーリーも捨てがたいな」

「ギルマス、それってかなり金がかかるよな」


「もちろんじゃ。

 おまけによほどの才がなければ入学すら認められん。

 まあ才能に関しては、その子なら何も問題なかろうがのう」


「そうか。

 とりあえず金も稼ぎたいし、帰還の道への情報も探したい。

 一度ニルヴァへ行こうと思う。

 俺に魔法なんかのレクチャーをしてくれ。


 あれこれと準備をしないと迷宮なんて行けそうもない。

 一応は迷宮へも、行くだけは行っておきたい。

 何もせずに帰還を諦めるのもなんだしな」


「よかろう。

 今夜は宿に泊まりたいか?」


「ああ、そうしようと思っている。

 今日はもう宿でゆっくり休みたいよ。

 せっかくいい宿を紹介してもらったんでね。

 久しぶりに毎日毎日運転ばかりしていて疲れたよ」


「では金が必要じゃな。

 買い取り用の魔物素材を出せ。

 こちらへ来い」


 そして拡張空間した空間らしき殺風景な場所で、俺は魔物を大量に広げた。


「わっはっはっは。

 魔法一つ使えん癖に、もう既にこれだけ魔物を倒しておったか。

 よし、お前と玲にはCランクの冒険者資格をやろう。


 これはな、この比較的身分改めの厳しいアリス王国の国境でも悠々と通過出来るランクの冒険者証よ。

 もちろん、どこの街でも自由に出入り出来る。

 澪は、お前らの身内という事なら一緒にどこへでも行ける。

 そこの人気の魔物を一頭だけ買い取ろう。

 それならば金貨五十枚まで出せる」


「あれ、なんでだい」


「わからんか?

 ここはもう、わし一人でやっておる。

 解体まではやってやるが、後は業者に渡して運送し、ニルヴァの冒険者ギルドにでも卸すしかない。

 あそこなら、いかようにでも出来る。


 この街の商会に渡しても結局はニルヴァ持ち込みにされるだけなのでな。

 輸送費もかかる上に、買い叩かれるような感じになって、結局買取はニルヴァの半分出せればいいところじゃ」


「ああ、そういや気のいい商人さんにもそういう事を言われたなあ」


「はっはっは、まあそれでも必要充分な金には足りるじゃろう。

 あと、そこの二頭おる草原トカゲは肉が美味くてな。

 それならニルヴァに出さずとも、この街でも十分な需要がある。

 これなら割良く引き取れそうじゃから二頭引き受けよう。


 そうさの、これなら一頭あたり金貨二十枚でどうじゃ。

 全部で金貨九十枚になる。

 それなら少々いい宿に泊まっても、しばらく余裕があるじゃろう。

 ニルヴァへ行っても、最初に多少の手持ちはあった方がよかろう」


「ああ、それでいいよ。

 助かる。

 他に回復薬みたいな物はないかい」


「そうじゃのう。

 ここでは金貨一枚する中級のポーションが、ヒール・ポイズン・キャンセル・マジックと四種類あるのう。

 それ以外はニルヴァの冒険者ギルドで購入するがいい」


「じゃあ、四種類を一本ずつくれ」


「では、ポーション四本と金貨八十六枚じゃ。

 他の魔物は収納へ仕舞っておけ」


「じゃあ今夜は宿屋へ行って、明日の朝また来るよ」


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[良い点] 本編を拝読していた時に話数が多いのにとてもテンポよく読み進んでいた一方で、 話数が多いゆえに「この設定いつ出てきたんだっけ」と悩む事もあったのですが、 このプレリュード?を読むにつれ、疑問…
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