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15 チーム・アーモン

「ねえ、メリーヌ姉様。冒険者さんは?」


「はいはい、もうすぐ来てくれますからね。

 エミリオ、その質問は朝からもう十回目よ」


 もう本当に可愛い子です。

 物語などで知る冒険者さんや英雄物語などに夢中な年頃なのです。

 何しろ、うちの母親ときた日には王妃として日々ありながら、未だに現役のAランク冒険者であるのですから。


 そして子供が小さいうちは、必ず自分の冒険譚を子守唄代わりに聞かせています。

 もちろん、この私もそれを聞いて育った子供の一人だったのですが。

 主に御母様が夢中で魔物の犬を追いかけていた日々のお話ですね。


 そして本日やってこられる方々は、なんとそのメンバー全員がSランク冒険者であるという完璧なSランク冒険者パーティなのです。


 今世界には、その他には二人しかいないと言われるSランク冒険者。

 それらの者はまた厄介な事に、御隣の帝国の者だそうです。

 そして当然彼らは帝国の貴族でもあるのです。

 その彼ら帝国のSランクは、残忍で非常に恐ろしい人間であると聞き及びます。


 今日御会いするアルバの冒険者ギルドに所属される方々は多分そうではないと思いますが。

 だって、あのミハエル兄様が可愛がっているエミリオにつける人達なのですから。


 そして彼らはミハエル兄様に連れられてやってきました。

 冒険者としては少し歳のいった感じの男性が二人、そしてかなり美人で若そうだけど、たぶん歳は彼らに近いと思われるような女性が御一人、そして若い男性の方です。


 うちの超若作りな御母様を長年見ていると、それなりに女性の実年齢を見抜くスキルが身に付きますね。

 どちらかというと、それは男性向きのスキルなのですが。


 しかし若い男性については驚きです。

 普通はSランク冒険者なんていう方々は、引退間際のような人達ばかりのはずなのですが。


 Sランク冒険者とは、それほどまでに希少な者なのです。

 国家に囲われて伯爵位を持つ者も少なくないと言われるのですが、この人達はフリーでパーティを組んでいるようですね。


 うちの母親は、まだ若いうちに御父様と結婚して王太子妃になってしまったのでSランクには上がりませんでしたが、当時十六歳でAランクの上位にいたようですから、そのまま冒険者をしていたら確実に若くしてSランクまで上がっていたのは間違いないでしょう。


「こんにちは、エミリオ殿下。

 我々がチーム・アーモンです。

 私がリーダーのアーモンで、そちらがサブリーダーのレッグです」


「こんにちは、エミリオ殿下。

 私はレッグ、そちらが私の妻でサマンサです」


「サマンサよ。

 よろしく御願いいたしますね、エミリオ殿下」


 そして、もう一人。


「僕はアルス。よろしくねー、エミリオ殿下」


「こら、アルス。

 もう少し丁寧な挨拶をせぬか。

 申し訳ない、ミハエル殿下。

 こいつは少々訳ありで自由奔放に育てられた男でして。

 まあこれも信用出来る人材でありますので、少々馴れ馴れしいところがあるのは、どうか御容赦を」


「いや、全然構いませんよ。

 エミリオはまだ幼いので、むしろそれくらいの対応の方がいいでしょう。

 子供の護衛なので、女性と若い男性がいてくれてありがたいですね。

 どの道、我々にはあなた方に御願いする以外の道はありませんので」


 私はそれを聞いて思わずクスっと笑ってしまいましたが、彼アルスの方も軽く小首を傾けて悪戯そうなウインクを返してくれました。

 それが私と彼アルスとの初めての出会いでした。


 それからというもの、エミリオときたらチーム・アーモンにべったりです。

 特に若くて陽気なアルスには懐きまくりです。

 周囲の人間の中には、それをハラハラして見ている者もいたのですが、元からついている護衛のエリスさんなどはもう、どっしりしているというかなんというか。


「アルス、殿下の事はあなたに任せましたわよ」とでもいうような態度振る舞いです。


 ですが、私は知っています。

 現在の国際情勢から、彼女は非常に強い危機感を抱いているようで、これが強者である彼女故のアルスへの歓迎の儀式に過ぎないのだと。


 その証拠に、彼女は一見リラックスしてエミリオの事を突き放したかのような様子を見せながらも、決してエミリオの傍から離れないのです。

 彼女の無敵の盾が、いつでもエミリオを守れるように。


「ようこそこの修羅場へ、Sランク冒険者チームよ。王国の盾エルシュタインの一族は、あなた方を歓迎いたしますわ」的なムードにしか見えません。


 そして彼らチーム・アーモンも全員が、そのメッセージをきちんと間違いなく受け止めているのを感じます。


 これが今、私達アルバトロス王家を覆う不吉な影、いえ、このロス大陸全体を覆っているなんとも形容し難いような何かの前兆のように思えます。


 ああ、シド。

 あなたの事が心配で堪りません。

 偉大なるロスよ、我らあなたの幼子をどうか護り給え。


今回は、これで一旦一区切りとなります。

次回の続きをお楽しみに~。


まだ途中ですが、「○○以上の間更新されていません」の表示が出ないように完結処理してあります。 

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