154-25 キャストをかき集めて
とりあえずスーパーベビーの話は忘れる事にした。
だって、そんな事を言ったらシドのところもそうなんだぜ。
いちいち気にしていたら何も出来んわい。
さしずめファンタジー3の第二世代っていうところだな。
後発組がパワーアップしていなければいいんだが。
とにかく、もう今すぐに始めないといけないエリーンの結婚式が最優先事項なのだ。
「あと、何が出来ていなかったかな。
あ、いけねえ。
エリーンと仲の良かったデニスを呼ばなくっちゃ」
俺はアルスをスマホで呼んだ。
「はい、アルスです。
あ、園長先生」
「いや、実は今日あのエリーンがついに結婚する事になってね」
「へえ。
そいつはまた、いきなりだね」
「ああ、ちょっとした都合でなあ」
「まあそれはいつもの事だけどね。
でも残念ながら僕は行けそうもないよ」
「そいつは最初からわかっている。
今日、デニスの奴は来られるか」
「ああ、そうだった。
彼はかつてチームエドのメンバー『だった』んだっけ」
「奴に言わせるなら『僕は今もチームエドのメンバーなんですが』だそうだが」
「ああ、その件なんだけど、彼は正式にうちの大臣に就任したよ。
忙しくて、まだそっちにちゃんと挨拶出来ていなかったけれど」
「はっはっは、そうだったか。
いや、うちは全然構わないよ。
チームエドはもう冒険者チームとして活動していない。
彼らはもう殆どグランバースト公爵家の陪臣のようなものになってしまっている。
いっそ、うちも正式にそう決めちまおうか。
エドとロイスがいてくれるからデニスは抜けても構わないし、今回からはエリーンも抜けるわけだしな」
「みんな、それぞれの道を行くというわけだね。
僕自身がケモミミ園に居たあの日々が、今ではただただ懐かしい限りだよ。
それじゃあデニスをそっちへ送るよ。
ついでに僕の正式な代理という事で、何か御祝いも持たせよう」
「ああ、そうしてくれ。
これで本当に一区切りっていう感じだな。
そういや草原の勇者殿はまだいらっしゃるのかい」
「ああ、僕がまだまだ若輩者だからね。
相変わらず、ジェニュインの方はポンコツ丸出しだし」
「ああ、それもあったな。
ベルベットは元気にしているか」
「彼女の御蔭でこの国は回っているようなものさ」
「ははは。
そいつは違いない。
そういや、御世継ぎは?」
「一応、暇を見て頑張ってはいるよ。
じゃあね」
ああいうものは暇を見て頑張るものなのかねえ。
まあ仕方がないな。
アル・グランド王国はまだまだ復興途中なんだから。
ポンコツ王妃の方は、そっち方面の仕事も無理そうだ。
まあそのうちには年齢的になんとかなるんじゃないのか。
とはいえ、ベルベットが若くして身籠った時の事を考えておかないとな。
さすがに、あのポンコツでは彼女の産休代理は務まるまい。
誰か応援を出すしかないのだろうか。
というか、そもそも本来であれば、あのアル・グランド産のポンコツが第一王妃になって主として頑張らないといけなかったのだが。
いっそ、もう一人しっかり者の王妃をアル・グランドに投入するか。
あ、臨時で真理を王妃代理として投入するのはどうだろうか。
錬金魔女様の場合は、かなりスパルタにやってしまいそうでアレなのだが、まあいざという時はやるしかないか。
その間の子供拾いは俺が担当するとしよう。
うちの御義母様を行かせるよりは、たぶんずっとマシなのではないだろうか。
いっそドワーフの女将さんにも真理の補助を御願いしてみるか。
最近は御狐王子どもが御母さんの御手伝いをしてくれているようだし。
むしろ、あの御狐王子二人のうち一人を投入してみるのも一興だ。
将来の国家運営の練習に丁度いいかもな。
その場合に行かせるなら腹黒傾向の強いエディの方かな~。
アル・グランドの連中は絶対に甘やかさないぜ!
「後は……ああ、御式を取り仕切る係だな。
仕方が無い、アレにやらせるか。
いつまでもジェシカに頼ってはおれんのだし」
もちろん、アレというのはうちのポンコツ大神官見習いの事だ。
ジェシカだって、そのうちには御目出度になるだろう。
うちの大神殿も他人事ではない。
ジェシカとフィアに当て嵌めると、アル・グランドよりもっと笑えない話になる。
まあグスタフが実家の跡を継ぐわけじゃないから、まだいいようなものの。
もうあいつ自身が伯爵家の当主なんだから。
第一、何よりもジェシカ自身が新しい家族を早く作りたがっているのだ。
今回は最初からベルグリットに頼むとしよう。
ああ、織原も呼んでおかないとな。
日曜日だけどいるかな、あいつ。
「あ、織原です」
「お、いたいた。
なあ、今日こっちに来てもらっていいか」
「あれ、今日ニューヨークじゃあなかったんでしたっけ。
今から行こうかと思っていたところなんで。
明日のロンドンは学校があるから行けそうにないし」
「ああ、実は急遽エリーンが結婚式を挙げる事になってなあ。
フィアに取り仕切らせるので、お前にも来てほしいんだ」
そういうのもあって、式は今日がよかったんだよなあ。
そういう事を思い出してはまた忘れるを延々と繰り返している本日、思い出すと書き留めるようにしてはいるんだが。
「へえ、あのエリーンさんがついに?
あはは、じゃあ当然ベルグリットの奴も来るんですね。
そういや最近あいつと全然会ってないなあ」
「あいつも職場で偉くなったからな。
ライオルさんは将来的に、あの子にダンジョン管理局の局長を任せるつもりで扱いているらしい。
あの人は有能だから別部署に引き上げる事も陛下が考えているらしくてな。
まあ、ベルグリットも厳しい経験を積んできたんだから大丈夫だとは思うが」
「あはは、主にあなたが経験させてますよね。
そうですね。
俺とあいつは伊達にケインズ団長に鍛えられちゃあいませんよ。
そういや、あの大将ってば最近妙に大人しいですね。
なんだか不気味だ」
「ああ、あれ。
最近は活きのいい新人が結構入ったらしくて、扱くのに生き生きしているらしいぜ。
王宮へ行くと、どこからか時々あの人の高笑いが聞こえるし。
多分王宮の屋上あたりなんじゃないか」
「えー、あの王宮に屋上なんてないでしょう。
それって、騎士団を脱走した奴が王宮の屋根の上を追いかけられているだけなんじゃあ。
馬鹿だな。
あの人から逃げられるはずなんてないだろうに。
後で罪が重くなるだけなのにね」
「だよなあ」
「じゃあ、遥を迎えに行ったらそっちへ行きますんで」
「頼む」
こうして俺はエリーンの結婚式に必要な人員をかき集めていくのだった。




