16-3 マオ×タヌの晩餐会
とりあえずケモミミ園に戻り、皆に帝国へ出かける事を伝えた。
それから主要スタッフに、学芸会の準備を進めるように頼んでおいた。
当然責任者は葵ちゃんである。
「じゃあ、後は頼んだ」
「OK、任された!」
「いってらっしゃい」
アルスとエドに後を頼んで、俺は帝国との国境へ転移した。
パスポート代わりに爆炎マントを翻し、河を一ッ飛びに飛び越す。
その間に河ヘビに襲われていた筏を五つ救援した。
赤いマントを翻して空を飛び困った人を助けて回るなんて、まるでスーパーなあの人のようだと思いつつ。
そして反対側の岸についた時、国教警備所にて例の小隊長達が哀れな商人を隅っこへ連れていこうとしていたので、後ろから指で肩をトントンしてやった。
彼は振り返りながら何かを言いかけたようだった。
「なんだ、おま……」
小隊長は、台詞が全部言えなかった。
顔色がかなり青かったし。
貧血か?
朝御飯はちゃんと食べないと駄目だぞ。
「その人をどこへ連れていくつもりなんだい?」
「あ、いやその、彼は色々と不慣れなようなので、その……」
「そうか、わかった。
後は俺が引き継ごう。
それより、おまえの隊長特権でさっさと国境を通してくれ。
俺は急いでいるんだ!」
最早、この男は俺の中ではパシリに認定されていた。
奴の中でもそうかもしれない。
安心しろ、毎日昼メシの焼きそばパンを買いに走らせたりしないから。
時々、結構な無茶を言うだけだ。
そのせいで帝国での居場所がなくなったら、アルバトロス王国に身請けしてやるんで安心しろ。
なんでも俺の言う事を聞くしかない奴隷が手に入るなんて、少ししか思っていないんで安心してくれ。
「か、かしこまりましたあーー」
奴は凄い勢いですっとんでいく。
部下を怒鳴りちらして、待っている他の人間を押しのけて手続きを早急に進めてくれた。
うん、うん。
帝国にも俺の悪名は、ちゃんと轟いているようだ。
そうでないと、今回俺が来た意味が全くない。
俺は面倒を見ると宣言した商人さんを連れて、強制的ラインパスで悠々と国境を越えた。
もう行き慣れた帝都ベルンなら自分の庭みたいなものさ。
それから「国境警備所で今度何かあったら俺の名前を出しておくように」と爆炎紋章入りの短剣を渡しながら言い置いた商人さんと笑顔でお別れしてから、転移魔法一つで着いた帝都ベルンにて、先に今夜の宿を確保しておいてから在ベルンシュタイン帝国アルバトロス王国大使館へ向かった。
「マリウス伯爵、御久しぶりです。
急な訪問ですみません」
「いえいえ、王都のミハエル殿下から連絡をいただいてますので、問題など何もございません」
そうか。
普通に国家にも、そう時間差の無い連絡法があるんだな。
魔法か魔道具か。
もしかしたら武が残した物なのかもしれない。
これなら国王陛下や王子様達にスマホを渡しておいても問題ないかな?
「さて、どんな風に目立ってやったらいいと思う?
好きにやっていいらしいんだが」
「そうでございますなあ……」
伯爵は面白そうに思案しつつ、その不敵な髭面をニヤリと笑ってみせた。
「今夜、舞踏会などいかがでありましょう?」
「すまない。俺は踊れないよ」
「大丈夫でございましょう。
あなたを見かけましたら、御令嬢方は皆さん自分から御逃げになりますので」
この爺さんったら何気に非道い!
まあ否定は出来んけどね。
いっそ派手なそれっぽいスカートを履いて、エセフラメンコかベリーダンスでも踊ったろか!
今の俺の身体能力ならば、そのくらいの事は強引にやってやれないことはない。
まあそれは冗談として、舞踏会ならば目立つにはいい場所だな。
「いいですね。
行ってみましょうか」
あっさりと彼の悪巧みに乗る俺。
俺、本当にこの爺さんの事が好きだわ~。
今晩夜会があるらしいので、それに乗り込もうというわけだ。
彼が大使として招待されているので、俺は本国のVIPとしてついていけばいいとう。
運がいいと皇子などの奴らにも会えるかもしれない。
一応、彼らからしたら初お目見えなのだ。
俺は散々後ろから覗いたけどね。
今回、出来ればバランに会いたい。
ただマーカーを付けるためだけに。
あいつは本当に危険な奴のようだ。
おそらく奴は伯爵の身分でも、軟弱イベントである舞踏会などに出てきはすまい。
そんなタイプの漢だと思う。
会えなくて残念だ。
ちょっと悪巧みを思いついたので、転移魔法でケモミミ園へ一度戻った。
それから大使館の馬車で宴会場、もとい舞踏会場へ向かった。
俺はとても楽しい気分だ。
そして俺よりも更に御機嫌な奴が一緒にいる。
ファルである。
そう、神聖エリオンその方であった。
実はこの国の主神もロスなのだ。
つまり神聖エリオンは、このベルンシュタイン帝国でも主神ロスの祭神扱いとなる。
地球でいえば、多分ヨーロッパにおけるイエスキリストくらいの地位にあたる。
ファルスの場合は、常に現存している所が全然違うけれど。
ロスはエホヴァの立ち位置くらいなのかな。
ちょっと違うのかもしれないが、そんな感覚だろう。
この大陸の国家は基本ロスを崇めている。
つまり、そういう事だ。
ファルは馬車で行くのが楽しいらしく超御機嫌で、当然ながら俺も御機嫌だ。
ファルには一曲歌わせてやろうかと思っている。
あ!
風呂場で歌った『あの歌』じゃないから安心してくれ。
今夜は楽しい夜になりそうだ。
マリウス伯も悪い顔が止まらない。
魔王と狸の晩餐会。
これはもう、マオ×タヌのタイトルでアニメ化したいくらいの気分だ。
映像はしっかりと撮っておき、同タイトルでネットに流してやろう。
俺は帝都ベルンの素晴らしい街並みを楽しみつつ、ファルと一緒にはっちゃけながら会場へと進んでいった。




