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153-12 打つ手なし

「はっ、ここはどこだ」

「よお。目が覚めたか、問題児」


「あれ、ギルマスか。

 ここは」


「アルバ冒険者ギルドだ。

 何やら大変な事になっているな。

 お前を連れてきたのはアルスだ」


「アルスが?」


 あいつ、未だに寝る間もないくらい忙しいだろうに。


「ははは、そんな顔をするもんじゃない。

 あいつだって、この異例の事態に対処しなければならん国王のうちの一人なのさ。

 それにしても、こいつはまた豪い事になったもんだ」


「とりあえず対応を協議しましょう。

 ミハエル王子から、あなたとアルバ冒険者ギルドで何らかの対応をしてほしいと依頼されています。

 どうでしょうか」


 レッグさんはそう言ってくれたのだが、どうでしょうかもへったくれもない。

 その信頼には是非にでも応えたいものなのだが、これはもう完全に御手上げだ。


 そんな俺のしょぼくれた顔を見て、ギルマスはくすりと笑った。


「なんだよ、こんな時にさ」

「いや、お前のそんな顔も久しぶりに見ると思ってな」


「ちぇっ。

 いやあ、今回ばかりは俺としてもどうしたものか。

 あいつを空の向こうにある遙か天空の彼方の宇宙空間へ放り出してやる奥の手を用意しておいたんだが、どうやらそいつは使えないらしい事が判明した。

 どうあっても、この大地の上で奴と決着をつけてしまわねばならんようだ。

 あれは難物の中の難物だぜ。

 まさか、ここまで厄介なものだとは思っていなかった」


 本当に困った奴とは、まさにアレの事だ。

 このアルバ冒険者ギルドにおける希代の問題児、天下の魔王公爵アルフォンス様も脱帽だぜ。


 まさかこの期に及んで、よりにもよってあのクソ鎧が復活してくるとはなあ。

 まさにイコマが言うような招かれざる客だ。


 ここまでのハードな御客様がいらっしゃるとは、さすがに想定していなかった。

 おもてなしの支度もないわ。

 さすがに日本一のおもてなし旅館でも、あれの襲来は手に負えまいよ。


「そうか。

 だが、やらねばならん。

 やらねば、この世界は滅ぶ。

 我々王都アルバの冒険者ギルドとしても何もせずに終わる気はない。

 何かいい知恵はないか、世界最高位のSSSランク冒険者さんよ」


 ふ、日頃その称号とはまったく無縁のこの俺。

 たまにはランク相応に頼りにされてみるか。

 とはいったもののなあ。


「何かって言われても、散々あれの相手をしてきた俺が、今このザマなんだからな。

 これであれに倒されたのは二回目だぜ。

 ダメージでいうなら、体は無傷な今回の方が大きいくらいだ。

 当時とは違い、体の方はなんともないんだけどな。

 ああそうだ、レッグさん。

 何かあれについての情報はないのかな?」


「今のところ、残念ながらありません。

 あれは長らく情報が秘匿されてきたものですし、また手が付けられるようなものでもありませんしね。

 我々も空中庭園消滅の際には現場に居合わせましたが、その時にはもう魔界の鎧はニールセンが持ち出していたのでしょう。

 パーティーの中で唯一、当時の空中庭園内にいたアルスも当然あれには関わってはいませんので」


「ミハエルの奴は刺し違えてでもあれを封印する気らしいが、今度の奴は今までとは桁違いの代物だ。

 たとえそうしたとしても、大人しく封印されてくれるものかどうかも怪しいぞ。

 かつて親鎧を成敗した経歴を持つこの俺が言うんだから間違いない。

 前回の立役者で頼みの綱であるレインも、未だ体は癒えていないし」


「そいつは困ったもんだ。

 何か手を考えないといかんのだがな」


 それには激しく同感なのだが、その手立ても碌にない。

 お、念話だ。

 真理からだな。


(よかった!

 園長先生、やっと起きたのね。

 あなた、本当に酷い有様だったのよ。

 ほぼ雪山遭難状態みたいな感じだったわ。

 それでもって、こっちはもう完全に御手上げよ。

 手に負えないわあ。

 何なの、こいつは)


(まあそう言うなよ、真理。

 今も冒険者ギルドで協議しているんだが、何せあれは酷い代物だ。

 俺も、もうテンションが駄々下がりだよ。


 あの怪物は、今はもう滅びてしまった古い帝国の遺産だ。

 その被害を受けているのが、その末裔たるベルンシュタイン帝国なんだからな。

 ドランも今どこにいるもんだか

 あいつも相変わらず貧乏籤コレクターだなあ)


(さあ、軍勢ごと退避したらしいから。

 まあアレが帝国にいるのなら、軍が御留守でもどこの国も攻めてきやしないしね)


(あはは、まさに最強の防衛兵器さ。

 エリクサーはまだあるか)


(今は節約しているから、在庫が三分の二っていうところかしらね)


(長期戦になりそうだ。

 頼むよ。

 エリクサーの在庫は大量に補充してある)


(さすがに、任せてとは言い辛い状況ね。

 あたし達だから持ち堪えていられるけれど、これが人間の軍だったらとっくに精神的に崩れてしまって防衛線が崩壊しているところよ)


(魔導ホムンクルス様万歳だな。

 頼りにしているぞ、相棒)


 それにしても頭が痛い。

 今回は奴も地獄から舞い戻ったという事で、気違いじみてパワーアップしている。

 誰かなんとかしてくれと言いたいところだが、そういうわけにもいかないだろう。


「おいちゃん」


「お、ファルか。

 どうした」


「どうしたもこうしたも、あれをなんとかしないとね。

 ロス様も、もうカンカンだよ。

 昔もね、あの馬鹿どもに御母ちゃんが切れちゃって大変だったらしいよ。

 さっきジョリーが言ってた」


「そうかあ、主神ロスの契約者としてはなんとかせんといかんのだがな。

 今のところ、まったく解決の目途が立っていない状況だ」


 まあ神の御使いだって切れる事はあるわな。

 そういや以前に関わった時も、魔界の鎧と聞いてレインがブチ切れていたっけなあ。


 今ならその気持ちがよくわかる。

 レインも何か言い澱んでいたようだし。

 多分あの凄惨な光景、あれに関する事を俺に伝えようとして言い澱んだのだろう。

 確かに、それだけの事はあったな、くそ。


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