15-6 帰るまでが遠足です
そうこうするうちに子供達が起きてきたのでレインを紹介した。
もうアルファなどと記号のように呼ぶのは止めて、名前で呼ぶようにしたのだ。
彼女もそうしてくれたら嬉しいと言ってくれたし。
「うおー、これがファルのかあちゃん?」
「すげー」
「かっくいいー」
「のっけてー」
もちろん、彼女は子供達から大人気だった。
まあしっかり遊んでもらっておけや。
成体のレインボーファルスに、ぺたぺた触れる機会なんてそうはないだろうからな。
その御方こそが神の子たる神聖エリオン、これが地球ならばイエス・キリスト相当のように崇められている存在なのだから。
ファルが大人になる頃には、ここにいる全員、まずこの世にはいないだろうし。
「ファルちゃんも、いつかこんなふうに、おとなになるの?」
「ああ、いつかな」
「いつー」
「さあ、おっさんも知らないな。
まあ、そのうちに大きくなるさ」
エミリオ殿下を見て、レインも感慨深げにしている。
「そう、もうあの人から数えて二十六代目の子孫が。
こうしてみるとよく似ているわね。
一度だけ彼の子供時代の写真を見せてもらった事があるわ。
うんうん、面影があるわねえ」
そう言ってレインは目を細めた。
そのように聞かされて、ちょっと照れるエミリオ殿下。
でも嬉しそうだ。
エミリオ殿下も、あの初代国王が孵化させ自ら育てて、彼の結婚式にて神聖エリオンの祝福を与えたという伝説の存在に会えて大興奮だった。
これは、やがて彼が婿にいった国でも語り継がれる話となるのだろう。
映像資料もバッチリと撮っておいた。
後で絵師に絵として起こさせてもいいしなあ。
それから他の精霊達にも遊んでもらったり、おやつを食べたり。
子供達は、とても思い出に残るような楽しい時間を過ごした。
ファルも子供達に混じって、おっかさんにじゃれつきまくっていた。
アルスが当然のように子供達の間に混じっていたのだが。
相変わらず、こいつもブレないな。
だが時間も押してきたので、そろそろ御暇する事にした。
メンバーに王子様もいる事だし。
精霊達も勢揃いで見送ってくれた。
一応ここへも転移魔法で入れるように取り計らってもらえた。
結界を通り抜けるための敵味方識別コードのようなものがあるらしい。
普通は教えてはくれないのだが、うちはもう殆ど身内扱いなのだ。
特に俺なんかは精霊連中から見て出張レストランも同然なのだしな。
いつ来たって大歓迎される事だろう。
この場合はシェフ自身が食材なのだが。
幾つもの強力な結界が張られているようで通常は入れない。
いざという時はセーフハウスとしても使う許可も取り付けておいた。
まあ代金は魔力で前払い済みだし。
生欠伸しているチビ達を、羊飼いのように猫じゃらしで追いたてバスに積み込んでいく。
早い奴は早くも電池が切れて、先に荷積みされている。
レミやサーニャも既に轟沈済みだ。
小さな子はしょうがない。
トーヤはリーダーとしての自覚があるのか、俺の隣で瞼の重みとピクピクしながら戦っている。
そう無理をせんと。
トーヤも、だいぶ小さい子達の面倒を見ていたからな。
でも、もう限界のようだった。
カクっといきなり膝が崩れたので、風魔法で受け止めてそのままふわふわとバスへ積み込む。
ちゃんと子供達を座席順に並べて担当職員が名簿で確認する。
真理とアルスの方のバスもOKだ。
起きている子達は、お見送りの精霊さん方に、ちっちゃい手を振ってお別れをしていた。
おっさんも、今日は結構楽をさせてもらっていたので特に眠くない。
基本は自動運転を見張るだけの御仕事なのだ。
一応、ヒールの使い方を工夫して作ったリフレッシュヒールの魔法を自分に使っておいた。
これはアーモンのところへ行く度に使っていたので、いつの間にか独立した魔法として魔法PCに登録されていたのだ。
さて帰りますか。
帰るまでが遠足だからな。
どうせ帰り道も魔物さんが出るに決まっている。
気を引き締めて新型ゴーレムを出しておく。
こいつは真理の制御コアを参考にして、簡易な魔導頭脳のようなものを作って搭載してある。
いわばAI搭載の魔導ゴーレムだ。
行きは浮かれていたので、こいつを出すのを忘れていた。
初期型なので動きはまだまだトロイが、今までみたいに単純動作しか出来ないボンクラと違い、一応自立行動が可能だ。
暴走すると危険なので、そこはかなり厳重な制約を加えてある。
性能が上がれば、そのへんも改善させられるだろう。
彼らは人間サイズで作ってあり、人間用のオリハルコンの魔法剣と魔導ライフルを装備させてある。
動力はベスマギルバッテリーだ。
捕獲されたりしたら転移魔法でホーミングしてくる。
転移が阻害させられたら自爆して、ベスマギルは魔素の海へと帰す。
自爆の際の被害範囲も設定できるようになっている。
基本的に魔核だけはホーミングしてくる設定だ。
たとえ本体や魔核が戻れなくても、データーは俺の魔法PCに残っているので個別に再生が可能だ。
魔法PCは機械式の本物のPCではないため、容量に限界はない。
あれは物体ではなく、俺のユニークスキルなのだ。
ボディはミスリルとオリハルコンのハイブリッド強化素材だ。
強化版として、ベスマギルボディの上位版も用意した。
更に魔法強化も可能でバリヤーとシールドを装備して、俺の魔法も搭載してある。
あと必要なら、俺の持っている物理兵器を奴等のアイテムボックスへと転送できる。
元々ダンジョンへ行く時の御供が欲しいと思って考えておいたものなのだ。
連中にも獲物袋は持たせておかないとね。
プロトタイプとしては十分な性能だろう。
こんなものばかり作っているので、いつの間にかHPが八百万HPに上がっていた。
俺の場合は魔物とかを倒してもHPのレベルが上がるわけでないので、つい見ない癖になってしまっている。
帰りはもうエアカーモードでぐいぐいと行く。
あ、前方で商人の馬車が襲われている。
ゴーレムども、GO!
オークの群れ五十体ほどが、ゴーレムのアタックを受けて面白いほど軽々と吹っ飛んでいく。
護衛の冒険者五人も目を白黒していたが、俺のゴーレムには爆炎の鷹がエンブレムとして刻まれている。
冒険者達は、うちの紋章入りバスに気が付いて、手を振って挨拶してくる。
連中が結構押されていたので加勢してやったのだ。
最後に手傷を負ったオーク十体を残してやる。
彼らにも討伐実績は欲しいだろうから。
戦闘記録は冒険者カードへ自動的に刻まれる。
そう、この冒険者カードという物。
これも実は冒険者ギルドの創設者である武が開発して、世界にバラまいた物なのだ。
アーティファクトである冒険者カード製造装置が、世界中の冒険者ギルドに置かれている。
だから、この制度は今でも脈々と続いているのだ。
アルバトロス王国には修理道具やメンテナンスのマニュアルがしっかりと残されている。
輸出製品のアフターサービスも万全でないとね。
連中のリーダーと商人がやってきて礼を言ってくる。
馬車は荷がいっぱいで素材は持っていけないそうなので、アイテムボックスに収容して中で解体してから討伐部位だけを渡してやる。
商人の丁稚の小僧がゴーレムに興味深々のようなので、人間ピラミッド、もといゴーレムピラミッドを披露してやった。
一番上の奴は、何故か大阪道頓堀の有名な御菓子メーカーの看板と同じポーズをとっている。
そういや、この芸を仕込む時に葵ちゃんに手伝わせたような記憶が微かに。
丁稚の小僧は目を瞠って見ていたが、結構喜んでいたようなのでいいかな。
彼らにはシュークリームをやっておいた。
他の人達にもシュークリームを分けてやったら、商人が仕入先を聞いてきたのでアドロスのフードコートの宣伝をしておいた。
キッチンエリはあそこで一番人気の店だ。
なんたって店主が元祖稀人料理の料理人みたいな奴だからな。
そして帰りにまた大蟷螂が出た。
こいつらって、いつも街道で待ち構えているんだよね。
街道の嫌われ者で、常時討伐依頼が出ている。
こいつはかなりの大物で体高六メートル、体長九メートルにも及ぶ。
ここまで育った奴なら、きっと……。
俺は期待に胸膨らませて、ゴーレム部隊にGOをかける。
剣を抜いて襲いかかるゴーレム兵達。
あっという間に刻まれて首を落とされ、胴体を残しバラバラになる大蟷螂。
そして集まるゴーレムズ。
ゴーレムがそいつの腹を切り裂いた。
出たっ、ハリガネムシ。
当たりだ~。
いや待っていたんだ、こいつを。
冒険者ギルドで素材を頼まれていたんだが、なかなか当たりが出なくて。
しかもかなりの大物だった。
太さ五センチの体長二十メートルはある。
こいつはホクホクだ。
うっかりと黒焦げにしないように、威力を調整したサンダーを魔導ライフルで撃ち込んでいく。
寝ている子供達を起こさないように、サイレントの魔法をかけておいた。
やがてハリガネムシは弱っていき倒れた。
レーダーで灰色になったのを確認して、アイテムボックスへ収納した。
この魔物は、死ぬと急速に素材が傷むので要注意だ。
アイテムボックスの中で解体してやったのでもう大丈夫だが。
こいつの素材はかなり特殊で、他に中々代替品が見当たらないから貴重品なのだ。
無事に御宝が狩れたので、俺も御機嫌で帰路につく。
アルスは爆睡中だ。
彼には寝てていいよと言ってある。
万が一、あいつの手を煩わせるような事態が起きれば、いつの間にか起きて支度してくれている。
あいつはそんな奴なのだ。
中には起きている子もいるので、転移魔法で帰るような風情の無い事はしない。
バスの中でトランプをしたり、おやつの残りを食べたり、窓の外を眺めたり。
地図を渡してあるので、生きた地理の御勉強も可能だ。
眼下の風景というか地理がよく理解できるように高く飛び上がり、一ッ飛びとばかりに飛んでいると飛竜さんが団体でお越しだ。
十体もの大編隊は珍しい。
ゴーレム隊に空中での白兵戦を命じた。
所詮はCランク魔物に過ぎないので、あっという間に刻まれた。
ゴーレム隊も、空中での機動も悪くない感じだ。
いい訓練になった。
ゴーレムのテストをしているうちに、もうケモミミ園へ着いてしまった。
御留守番スタッフも出てきてくれて、大勢の子供達を園内に運び込む。
これから子供達を起こして、御飯や御風呂の時間だ。
そして帰りに寝てしまったのと併せて、未だ興奮が冷めずに眠れない子供を寝かしつける作業が残っている。
園長先生のビールは、まだまだ御預けのようだ。




