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151-4 妖しき者達

 一方、トーヤ・エディ・ポールの小学生技術屋トリオは、あちこちを妖しく徘徊していた。


 最近はマリーも小学生になったし、元から御姉ちゃんの御手伝いをしていて大人の人にも混じって色々仕事をしていたので、ポールは結構大人びた子である。


 また、長らく行方不明であった父が帰ってきた(相変わらず異世界日本へ通勤している)のもあり、マリーもだいぶ兄の手を離れてきた。

 となれば、この三人がよくつるむようになるのは必至なのであった。


「やはり、ここは飛行動力システムからじゃない?」


 オーソドックスに攻めたいポール。


「うーん、シールドドームのシステムが気になる」


 マニアックな方面から攻めたいトーヤ。


「地球からの3D通信システムが見たいよね」


 もちろん、さらにマニアックな方向を攻めたがるエディ。


「今度地球へ行って、ミシン屋の宮里さんと一緒に3Dする?」


「それくらいだったら、宮里さんをこっちに連れてきてあげた方がいいんじゃないの?

 御孫さんも一緒に招待してさ」


「馬鹿だな、せっかくのスーパー・テーマパークなんだぜ。

 どうせなら次元を挟んで、世界の両側から楽しんでもらうのがいんじゃないか」


 だが、ここでトーヤが宣言した。


「じゃあ片っ端から見に行こうぜ。

 順番はジャンケンでね!」


 ふらふらと彷徨いながら異世界産のデザインについて批評したり、発展デザインのアイデアをタブレットにラフスケッチでスラっと描いてみたり。


 彼ら好奇心溢れる子供達の探究心は留まるところを知らないのだった。


  ◆◇◆◇◆


「ふっふっふ。

 さあ、食べ歩きますか。

 いえ、これも立派な警備の仕事なのです」


 そのように妖し気な笑いを漏らしながら徘徊しているのは、もちろん得意の御愛想で頑張って単独パトロールの権限を勝ち取ったエリーンであった。

 もっぱらパトロールをするのは飲食関係である。


 まずは軽食のスタンドバーから攻める。

 そして、さっそく目を付けたものは。


「ほお、そこのジェラートは新作ですか?」


「ええ、本場イタリア直輸入の銘柄ですわ。

 イタ飯は日本人の味覚に良く合うのです。

 イタリアは同じヨーロッパにあるフランスと隣り合ったような国なのですが、イタリア料理はかつて日本人によく好まれたフランス料理よりも人気があります。


 年配の方などは、フランス料理だと毎日は食べられないがイタリア料理は毎日でも大丈夫と言われる方もおりますね。

 フランス料理は生クリームなどをよく使い、また少々くどい感じがしますが、イタリア料理はそういう事が少ないからではないでしょうか。


 またイタリアにはパスタ料理も多く、細長い麺タイプの物は中国からシルクロードを伝わっていった物なので、同じように中国伝来の麺料理が重要な位置付けにある日本でも受け入れやすい側面がありますね。

 かつて日本人の海外旅行の行先でローマがずっと一位だったのも、そういう面があったのかもしれません。

 要は稀人日本人御用達なのですわ。

 日本ではマカロニやスパゲッティなどのパスタも好んでよく食べられますし。


 まあ、その御蔭で日本でイタリア料理といえばパスタばかり有名なのですが、バブル期にはイタリア料理が御洒落という事で、本格的なイタ飯が大変普及しました。

 日本は不景気が長いので、当時よりは御値打ちに食べられるのではないでしょうか」


 だが、それを聞いたエリーンは少し眉を顰めた。


「そいつは聞き捨てなりませんね。

 御値打ちという事は、安くなった分は質が落ちたという事ではないのですか?」


 だが売り子のゴーレムの女の子は、大いに笑い飛ばして言い放った。


「そんな事はありません。

 確かに値段は安く食べられたりはしますが、それは当時が超好景気で、かなりボッタクリな値段がついていたというのと、飲食業界は競争が激しく、もう素材の調達から流通、そして現場であるレストランの企業努力などで為されたものなのです。


 ただ、もちろん美味しい物の材料は高いので、安い物を使っている分はある意味で質が下がったといえない事もないのですが、そこはそれ。

 やはり高くて良い物を出す御店なんかは健在、いやむしろ二極化を辿り、更に御高くて美味しい料理を出す店になっているのではないでしょうかね。

 私どもも研修という事でいろいろなレストランも回らせていただきましたが、やはりそういう御店は抜群に美味しいのです」


 たかが異世界にある空中庭園のスタンドバーの売り子ゴーレムといえども、莫大な金をかけてそこまで研修させる完璧主義の園長先生。

 だが、それを聞いたエリーンが地団太を踏んだ。


「ずるーい、警備の私が一緒に行けてないのにズルーイ」


 だが売り子の子はコロコロと笑って取り合わない。


「だって私達は御客様相手の御仕事で、色々な知識なども必要なんですもの。

 でも本場のイタリアにも行ってみたいですね。

 ただ、私達の場合は人間ではないので、通常手段でパスポートとか取れないんですよね。

 その場合は首相官邸経由で外務省から『外交官パス』のようなものを発行していただかないといけないそうで。


 行くだけなら転移魔法でいくらでも行けちゃいますけど。

 私達は新選組の沖田ちゃんや斎藤ちゃんあたりの地球駐在経験のある子達と転移ポイントを共有していますので。

 あの子達は地球駐在時代に、何かあった時用に世界中へ魔法で飛行して転移ポイントを作る命令も受けていましたから」


 それを聞いて、さらに地団太を踏んだエリーン。


「ええ、もっとズルーイ。

 ねえ、その転移ポイント、あたしにも寄越さない!?」


 物凄く真剣な、まるで蝉の幼虫が十七年後に地上に初めて姿を現して成虫になるために木へよじ登る時の、命懸けで人生というか種の存続を賭けたくらいの、あの真剣な眼差し並みに少し目が逝ったエリーンが売り子嬢に迫った。


「あ、あのう。

 私にそのような事をおっしゃられても困るのですが。

 今度マスター、園長先生に御願いしてみてはいかがでしょう」


「わかった! 今から行ってくる!」


 魔法で彼の居所を探索し、ファストをかけまくって駆けだしていったエリーン。

 そして転移ポイントの情報と、うまうまと地球のイタリアンレストラン行きの約束と、いつかイタリアまで連れていくという確約を勝ち取ったのであった。


 もっとも園長先生は『リヒターとの新婚旅行』でイタリアへ行かせようなどと目論んでいたのだが。

 リヒターにも外聞を高めさせたいという配慮もあったし。


 もし「リヒターとの新婚旅行でないとイタリアには行かせない」などと言おうものなら、今すぐに仕事中のリヒターのところへ転移して「さあ、新婚旅行に行くわよ」とか言い出しかねないのだが。


 まあそれをやったらリヒターも断れないし、帝国皇帝も諦める事だろう。

 だが今の時点では、まだそこまでの最終奥義を出す時間ではないというのが園長先生のジャッジなのであった。


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