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15-4 母娘の再会

 御飯の後は王子様も含め、全員が御昼寝タイムだ。

 王子様には、仕事の関係で以前からの顔見知りであるアルスがついている。

 一緒に試練の御山へ行った時も結構和やかにやっていたしな。


 騎士団やうちの人達がいるし、精霊達も子供達の傍で見ててくれている。

 子供達は、もうすっかり精霊達と仲良くなったようだ。

 こういうのって子供達だけの特権だよね。


 そしてファルは御眠(おねむ)にならない。

 こいつは今、魔力充電中なので。


 さて、そろそろ頃合の時間だな。


「シルヴィ、アルファがファルや俺に会いたがってるんだよね。

 あと精霊の長は?」


「はい。一緒についてきてください」


 俺はファルを抱っこしたまま、その後からついていく。

 そして真理もついてくる。

 相手は武の知り合いなのだ。


 ここには家なんていう物はない。

 精霊は普段は具現化していないため、特に形は無い。

 精霊の気配を感じられる人間ならば、何かポワっとした光の塊のように見えるのではないだろうか。

 先程の具現化した姿も、精霊達が自分がなりたい姿をイメージして象っているだけなのだ。


 そして俺達は、エルフの里の、ただただ一面に広がる幻想的な風景に目を奪われる。

 しばらくすると、その気配に気が付いた。

 ここは敵地ではないのでレーダーは展開していないのだが、はっきりとわかる。


 それは明らかにファルと同質なものだ。

 俺は静かに待った。

 やがて現れた者に対して俺はこう挨拶した。


「こんにちは」


 わざと日本語を使ってみたのだ。


「こんにちは」


 ファルの御母ちゃんが同じく日本語で返してくれた。


 やっぱりか。

 武が日本語で話しかけていたんだな。

 それで日本語が話せるのだろう。


 武……可愛そうに。

 俺みたいにインターネットの力があったわけじゃないから、日本語に飢えていたんだ。


「あなたが爆炎さん?」


 その美しい生き物が訊ねてきた。

 限りなく透明なような、白く輝く不思議な肌。

 優美、神秘、艶やか、完全なるバランス。

 やはり、本来の普通に血肉を供えた生き物とは全く異なる体系の生き物なのだろう。


 四つ足で尻尾のある獣。

 だが、どんな生物よりも美しいと感じる。

 視覚以外の要素が大きく絡んでいるのかもしれない。

 人間どもまでが崇めるわけだ。


 なんとも言いようのない、どんな精霊よりも美しいその姿。

 やはりファルはまだファルスの幼態なのだ。

 まあ、母親の面影くらいはあるかな?


 すっかり人間体形に慣れてしまったファルは大丈夫だろうか。

 俺は人と交わり過ぎて野生へ回帰出来なくなってしまった地球の野生動物達の事を想った。

 彼らは果たして幸福だったのだろうか。

 それとも。


「ああ。初めまして、井上隆裕です」


 不躾とは思ったが、彼女の事をよく観察させてもらった。


「娘を孵化させてくれてありがとう。

 なにぶん、このような状態なので自力ではどうにも。

 本当なら私も人化してさしあげたいのですが、あれは激しく魔力を使いますので」


 ファルは気楽に人間体形とファルス体形をチェンジしているがな。

 ファルスの中では、そういうところが器用な子なのだろうか。

 少し変わったところがあるらしいし。

 俺からの大量の魔力供給もある。


「魔力なら分けましょうか?」


 俺が手を差し出すと彼女は言った。


「いえ、激しく魔力を使う事自体がダメージになりますので。

 ダメージを負ったのは約一年近く前にもなりますが、未だに傷は癒えませぬ」


 む、一年前だと?


「ファル。

 こっちへいらしゃい」


 アルファが娘に呼びかけた。

 だがファルは、そっと俺の後ろに隠れる。

 二人で苦笑いし、俺は優しく話しかけた。


「ファル、お前のおっかさんだぞ。

 出ておいで」


 優しく呼んでみたが、また隠れた。


「仕方がないですね。

 いきなり卵のまま、あなたに預けてしまいましたので。

 でもそうしないと、いつしか卵が精気を失ってしまいます。

 まだ大丈夫でしたが、あなたのような方がまた現れるとは限りません。

 次の卵を産める保証が無くて。

 そうなると弱っていた私が死んだ時に、ファルス不在のあの審判の時代が再びやってきてしまう」


 ファルは俺の後ろに隠れながら、じーっとアルファを見ている。

 胎生の生き物じゃないからなー。

 刷り込みが全てなんだろうか?


 逃げていくわけではないから、拒否反応を起こしているわけじゃないと思うが。

 おっかさんの方はファルの顔が見れて嬉しいようだ。


 というわけなので俺はファルに向かって言った。


「ファル。

 レインボーファルスの体形になってごらん」


「えー、どうしてー?」


「久しぶりに見ておきたいな。

 どれだけ大きくなったか。

 あっちの姿が本当の姿なんだしな」


「んー」


 ファルはポンっとファルスの姿になった。

 おー、成長しとるな。


 今まではなんなのだか、はっきりとよくわからないような姿だった。

 こうして実際に親と見比べてみると、そっち方面を目指して成長していこうとしているのが、なんとなくだが見てとれる。


 大きくなるとファルもこうなるのか。

 でも、それまで俺は生きていられないだろうなあ。

 今の自分の体の寿命がよくわからない。

 元々はもう寿命が尽きかけていたので、そんな事はもう今更なのだが。


 うちは短命な一族だった。

 何故か婿や嫁になった人達までもが、まるで呪いでもかかっているかのように、そうなっていく不思議な一族だったのだ。


 思わずファルの事を感慨深く眺めてしまった。

 今はただ可愛いだけの生き物なんだけどな。


 すーっとアルファが顔を近づけてくると、ファルがそっと俺の後ろに隠れる。

 それでも自分と同じ生き物なのはわかるのだろう。

 円らな瞳でじっと見つめている。


 アルファは急かさずに待っている。

 ファルが近寄っていって、またじっと見つめる。

 そしてファルがちょっと擦り寄ってみたので、アルファがなんともいいようのない魅力的な笑みをこぼした。


 精霊の長は具現化していなかったがアルファの傍にいた。

 レーダーで見ると目の前に一際大きい点が二つ。


 精霊の長はアルファの力の修復のために全ての力を使っている状態だそうだ。

 せっかく来ていただいたのに直接話も出来ずに申し訳ないと、シルヴィが通訳してくれた。


「いいんだ、長。気にしないでくれ」


「井上さん、ファルを連れてきてくれてありがとう」

「いえ、どういたしまして」


 こうして謎生物レインボーファルスと流暢な日本語で話していると、なんだか妙な気分だ。

 おそらく本当の子供のように可愛がっていただろう彼女が森へ帰らなくちゃいけなくなった時、武はどう思ったんだろうか。


 ファルはなんとなく気に入ったのか、アルファの頭によじ登った。

 そして、しばらくそのままでいた。

 普通なら、ああやって親から魔力を貰うのだ。

 不憫なやっちゃな。


「あの次元の裂け目が、この森に迫って来てさえいなければ、今頃はこうして……」


 ちょっと待った。

 次元の裂け目だと?

 それはまさか。


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