15-3 ショータイム
壮大な樹林のハイウェイを抜けて、精霊の森へと辿り着いた。
そこはまた、なんとも言えぬほどに美しい場所だった。
まるで魔法の国のような幻想的な風景が広がっていた。
なんていうか、地球人がエルフの里をイメージするような風景をもっと幻想的にしたような、まるで凄まじいレベルの現実に広がる3DCGであるかのような。
ファルの歌う、あの歌のような雰囲気ともいえる。
そういや、帝国の虜囚ではなかったエルフ達はどこに住んでいるんだろうな。
子供達の目が真ん丸になって、ミミもなんかピンっではなく、ふわっとかほわっとかなっているような、そんな感じだろうか。
口をぽっかりと開けている子も多い。
一応トーヤにはアルスを付けてある。
何も無いとは信じるが。
いや、嘘です。
だったら誰も付けないよね。
あいつがバラすようなもんがここにあるかどうかは別として、トーヤくんはアルスの大興奮なノリに巻き込んでおいてもらいたい。
そして現れる精霊達!
王宮で具現化していた奴等に加え、様々な連中が新登場だ。
多用なデザインや色のドラゴン。
サキュバスのような艶やかさを出している者(子供向けでそんなにエロくない奴)。
あるいは美しき幻獣。
頭に宝石をつけた獣のようなものをカーバンクルと総称しているので、そいつらは色々な形や種類がいる。
宝石に魔力を注いでやったら、奴らは凄まじく輝いた。
なんとも美しい宝石の明滅する耀きの群れ。
それを見た周辺のカーバンクルが、怒涛のように押し寄せてきたので、思わず魔道鎧を発動してしまった。
おまえら、本当にがっつきすぎ。
なんかもう鎧の上から、ぐいぐいと魔力を吸い取っていくし。
存分に吸い終わって、とうとう魔道鎧ごと食われてしまった。
なんて奴らだ。
あのヒュージスライムとためを張る食欲だな。 あれと違って退治してしまう訳にもいかないし。
精霊達の具現化した姿は、周りの幻想的な風景と相まって抜群の破壊力だった。
特に激しく宙を舞う精霊達の乱舞が目を引いた。
子供達の首や目が上下左右にくるくると動いて忙しない。
ミミも尻尾も一転して大忙しだ。
みんなバスから降りて目を瞠っている。
気を付けないと、子供が癲癇を起こすような激しい色や光が明滅するアニメみたいになりそうだ。
あれに比べたら、なんというか相当柔らかい感じのそれなので大丈夫そうだが。
そして精霊達の歌声が聞こえてくる。
魂に刻まれるような美しい調べだ。
これにミミピンしている子はチェックしておく。
将来はそっち方面の進路も悪くないだろう。
子供達の進路相談の資料用にする映像は、こまめに保存していく園長先生なのであった
実は今日は特別ゲストを連れてきてある。
それはエミリオ殿下だ。
真理に言わせると武の子供の頃の面影があるというからな。
地球の真理さんも、そんな事を言っていた。
武の魔力で誕生しただろうファルの母ちゃんに、エミリオ殿下を見せてやりたかったのだ。
体や魔力が弱っている状態では、この森の外へ出られないだろうし。
国王陛下も、いずれ国から出す事が決まっている末息子が精霊の守護者と仲がいいのは悪くない話だと考えたようで、あっさりと許可が下りた。
殿下も他の子と同じように大喜びだった。
まだ七歳だから、年長組より一個上なだけだもんな。
ミミと尻尾はないけれど。
そして俺はそいつに向かって言った。
「御苦労、ジョリー」
「ははっ、御館様」
最近、奴には俺の事を御館様と呼ばせている。
ファルがいる間は言うことを聞いてくれるし、その後でも魔力や御菓子などで取引が出来る。
今のうちに上下関係はハッキリさせておきたい。
帝国と喧嘩するのに精霊の援軍は心強いからな。
そう。
ジョリーの奴に命じて、最初の出迎え時に精霊達に頼んで演出を頼んでおいたのだ。
せっかくの行事だからサプライズをと思って。
何故か、頼んでおいた数よりも三倍くらい精霊が多いのだが、それはいつもの事だった。
まあ精霊達も俺の魔力は欲しいので、向こうも手伝うのは吝かではない。
みんなこの前に俺の魔力の味見は済ませてあるのだしな。
全員、俺の精霊の加護リストに名前が載っている奴等ばかりだった。
まあ加護を寄越している分は、只の食い逃げ精霊どもよりもマシな連中だ。
諸君、御苦労。
興行は大成功である。
報酬の魔力はたんまりだ。
子供達は具現化した精霊達と、夢中でじゃれまくった。
精霊達もちょっと楽しそうだ。
いつもは勿体をつけていて、こんな風に気安く出現する事はないのだ。
俺に頼まれたとはいえ、若干楽しんでくれている風にも見える。
今日はここにいる間は、ずっと子供と遊んでくれる契約になっている。
馬っぽい精霊は超人気だ!
番待ちの列が出来ており、もてもてな本人も満更でもなさそうだ。
そいつらも空を飛び、迫力の空中散歩だ。
そういう精霊魔法があるので子供が絶対に下へ落ちたりはしない。
そいつはこれからも役に立ちそうなので、精霊を通していつでも使えるように手配しておいた。
今度、メリーゴーランドを作ってもいいな。
あれは割とシンプルな機械だ。
昔デパートの屋上にあった、コインを入れると上下に動くバネ付きの自動車なんかも悪くない。
いっそ遊園地を作ってみてもいい。
美形のタイタンも女の子に超人気だ。
その巨大な掌に乗っけてもらって散歩するのだ。
ありがたい精霊達が、ほぼ子供向けのアトラクションと化している。
かつての英雄の子孫であるエミリオ殿下も、その中に混ざって楽しんでいた。
この前、運動会で一緒に遊んだのでケモミミ園の子供達とも顔馴染みだし。
子供同士はすぐに仲良くなれる。
エミリオ殿下も素直で天真爛漫な子だし、アルバトロス王国の子供同士はあまり身分に関してとやかく言われない気風もある。
猫族は何故か集団で、羽根のある妖精さん達を必死になって追いかけている。
風船といい、本当にそういう事が好きだな、こいつら。
裁縫グループは真剣な表情で、精霊さんの服をデザインしている。
俺に布地やミシンを出せとせがんできた。
俺は笑ってミシンを出してやる。
何にしろ、創作意欲に刺激があるのはいい事だ。
あ、走り回っていたレミたんが電池が切れて倒れた。
年齢的に一番体力がないからな。
さっそく迎えに行く子煩悩なおっさん。
おチビを抱っこしてから、ファルはどこかなと見回してみると、シルヴィに連れられて精霊さん達と楽しそうにしている。
ここの連中も話を急かすつもりはないんだな。
というか今日は、多分色々な顔合わせという事だけなんだろう。
特にファルの場合、飯は俺が魔力を食わせていないと、どうしようもないのだし。
アルスは子供達とはっちゃけているし、真理も楽しそうだ。
熊獣人のシャイなおチビさんのサーニャは、真理にくっつきながらも興味津々な表情で見回している。
なんだかんだと遊んだ後に御弁当タイムになった。
俺はレミを起こして、ファルおよび精霊二人組と一緒にレジャーシートの上に陣取った。
レミたんはドライフルーツ入りのカップケーキだ。
ほんとに好きだね、それ。
ファルとジョリー達は、エリ作のケーキ類に顔をつっこまんばかりにして食っている。
それはもう御弁当じゃないよな。
はっと気がつくと、エリ作のケーキを狙う精霊達に取り囲まれていた。
最早、完全に物理的な圧力と化している。
ちょっと思ったのだが、エリなら俺とためを張って、精霊女王を名乗っても許されるのではないだろうか。
手持ちにいろんなスイーツがあるが、日本から持ってきた数種類を除けば、全てエリ謹製の品ばかりなのである。
いつの日か、エリが地球の大製菓企業のような大工房の経営者になるのも夢じゃないかもしれない。
仕方が無いので、コピーしたスイーツを色々と出して並べてやる。
体がでかい奴には、それなりのサイズに拡大コピーして。
全員がスイーツに鼻面を突っ込んで、もう夢中だ。
今度、エリを連れてきてやるか。
エリと仲のいい王女様方も一緒に来たがるかな。
あの人達こそ、ここの主と縁の深い人間の縁者なのだけれども。




