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15-2 出発進行

 もう十月も半ばだ。

 俺がこの世界に来て、もう一年近くになろうとしている。

 そういう訳なので、このケモミミ園でも、かなりの御惣菜メニューが開発された。


 開発というか、俺が日本のネットのレシピサイトにあるものを翻訳して、それを料理人の職員さんが作ってくれているだけなのだが。

 フードコートでも色々と作っているし。


 御米系のメニューとして、炊き込みご飯・チキンライス・チャーハン・焼きオニギリ・リゾット・丼物各種、そして人気ナンバーワンのカレーライスもある。

 カレーは、もちろん子供の口に合わせて甘口だ。


 麺類はラーメン・ウドンは言うに及ばず、焼きソバ・堅焼きソバ、そして冷やし中華につけ麺にソバなど。

 その他にインドのナンとかもある。

 この園長先生はこれが大好きなので、ちゃんと専用のナンを焼く壺みたいな窯もでっちあげた。


 石釜で焼くピザにスパゲティなんかのイタリア系、そして忘れちゃならない肉饅類。

 唐揚げ・焼き鳥・コロッケ・カツ・フライ・てんぷら・餃子・シュウマイ・ワンタン・春巻き・各種照り焼き・串カツ・煮つけ・おでん・豆腐や油揚げの料理なども作っていただいている。

 味噌田楽・手羽先・味噌カツ・ひつまぶしなんかの名古屋飯も忘れていない。


 冬は鍋物にチャレンジの予定だ。

 園児が暴れても決してひっくり返らない付与をした魔法の鍋は既に開発済みだ。

 俺が開発する魔法は戦闘用やゴッド系魔法のような革新的な物よりも、この手の幼稚園用の物の方が圧倒的に多い。


 子供が火傷しないようにマジで気を使うが、職員をしっかりと増やしておいたので、なんとかいけるはずさ。

 〆の御雑炊も決して忘れてはならない。


 スキヤキとかも、そのうちにはやってみる予定だ。

 すでに独特の形状であるスキヤキ鍋も作成済なのだ。

 これも日本じゃ一人になって以来使った事がなかったけど。

 一人用鍋は幾つも見た事があるが、一人用スキヤキ鍋なんて見た事が無い。


 フリカケや御茶漬けも用意されているし、オニギリ用の混ぜ御飯の素もある。

 このあたりは好きな子がいっぱいいるので、御弁当にはもってこいだろう。


 そして肝心の御弁当箱。

 こいつも可愛い物をたくさん試作してある。

 フォークなんかも小さい子が持ちやすくて、なるべく使いやすいものをと、この生産系園長先生は子供達のために日々精進しているのだ。


 帝国との戦いなんぞ、ほんの片手間に過ぎない。

 というか、最近は帝国の二文字を思い出す事さえ稀なのだ。

「そういや、そんな国もあったっけかな」くらいのものだ。

 

 お出掛け用の可愛い服も遠足仕様で用意されている。

 裁縫グループが色々とこさえているし、おじさんはおじさんでネットで見つけたものを資料にまとめてプロに発注しているのだ。


 ケモミミ園御用達の王都にある御店には、ミシンを与えてあるので縫製が非常にしっかりしたものが納品される。


 連中にはタフな仕事が出来るようにと、特別にミスリルへの材料置換でコピーしたミシン針を提供済みだ。

 ミシン針って変な事をすると簡単に曲がるからな。

 昔の俺の家にも紙の包装の下にアルミか何かで針を包んだ感じの、独特の包装をされたミシン針が常時置いてあった。

 こいつならドラゴンの背中だって縫えそうだ。


 バスも細かいところ手を入れていき、なるべく快適なように仕上げた。

 様々な支度に一週間かけて万全の態勢なのだ。


 そして、ついに我々は『異世界初』の遠足に出発する事となった。 

 ちゃんと『遠足の栞』なる物も職員総出で作った。

 最近子供が急激に増殖したので、字が読めない奴もだいぶ増えたから、やや絵が多めの奴だ。


 いざ出発。

 もうみんな、わくわくしてミミや尻尾が大変落ち着きない。

 何しろバスでお出掛けする子供なんて、この世界初なんだから。


 みんな、あらかじめ決めておいた席に座らせる。

 いなかったらすぐわかるようにしてあるのだ。


 今回は遠出するので、子供をどこかへ置いてきたら豪い事だし。

 毎回、担当職員が点呼もちゃんとするんだけどね。

 真理も魔法でチェックしているようだ。


 窓は広めに作ってある。

 危険の多いこの世界なので、本来なら好ましくないのだが、所詮は遠足用バスなので。

 特に下方に向かって窓が広めに作られているのが特徴だ。

 子供目線で、外の景色がばっちりと見られるようになっている。


 まあガラス自体を超絶に魔力を込めて強化してあるので、自衛隊の203ミリ榴弾砲や貫通力の高い特殊な戦車砲弾を雨のように撃ち込まれてもビクともしないのだが。


 高熱ジェット式の砲弾の凄まじい熱さえも素材レベルで遮断してくれる。

 あの超高熱のドラゴンブレスさえも素で防ぐ事が可能だ。

 ドラゴンブレスは自分でも持っているスキルなので実地に試してみたから間違いない。

 なんったってエンシェントドラゴンから「俺のブレスよりも数倍強力」と御墨付きをもらっている奴で試したから安心だ。


 セキュリティは一応確保されている。

 外には以前作ったゴーレムがインビジブル状態で併走している。

 レビテーションで浮いて風魔法でついてきているのだ。


 それらはレーダーMAP上で操作も出来る。

 なんだかシミュレーションウォーゲームみたいだ。


 ゴーレムは、とりあえず三メートルサイズに調整したものを使っている。

 あまり図体がでかいと、どこかでつっかえてバスに置いていかれる場合がある。


 一応バスは自動操縦だ。

 魔法を付与して動かすので、基本的には俺にしか操縦は出来ない。


 GOの命令を与えておくと隊列を組んで勝手にずんずんと進む。

 魔法のオートクルーズみたいなもんだろうか。

 前方に何かあれば、センサーで勝手に止まる。

 バス同士でぶつかってもいかんしね。

 一応俺も見ているし。


 後ろで何かあれば、真理やアルスが連絡してくれる。

 MAPで隊列の動きは随時見ているので、そう問題は無いはずだ。


 道中魔物が出るかもしれないが、何の心配もない。

 その場合に不幸なのは連中だけだから。

 いざとなったら俺が出れば済むし、他のバスにもアルスや真理がいる。


 バスはゴトゴトと出発した。

 もうみんな、きゃあきゃあ言って大騒ぎしている。


 カメラアイで見ると、三号車は引率のアルスくんが一番騒いどらっせる。

 大勢の小さな子供の相手は苦手だと言いつつ、あいつが一番子供っぽいんだからな。

 御蔭で子供が、はっちゃけるはっちゃける。

 帰りは三号車が一番静かだな、きっと。


 街道を北上してしばらく経ってから、道の真ん中に魔物が突っ立っているのが見えた。

 体高四メートルの大蟷螂だ。

 街道の定番魔物だな。

 だが、これはちょっと小ぶりな奴だ。


 生意気に鎌を振り上げて「シャーッ」だと?

 俺は遠慮なく豪快にバスで跳ね飛ばしていった。

 ゴーレムの出番すらない。


 大蟷螂がよろよろと立ち上がろうとしたところを、後ろから後続のバスに跳ね飛ばされまくってバラバラになった。


 一応、素材はゴーレム回収させておくか。

 残念、ハズレだ。

 ハリガネムシはいなかった。

 いたら子供達が喜びそうだったのにな。


 俺も子供の頃、あれが大好物でな。

 蟷螂を見かけたら男の子達で必ず踏んだ。

 ちょっと残酷かもしれないが、そうやってみんな大人になっていくのだ。

 俺はつい生き物を踏むのを躊躇するので、いつも他の奴に踏まれてしまっていた。


 大人になってからは、あの手の昆虫に触るのも嫌だったのだが、こっちへ来てからはそんな事は言っていられないのでな。


 このバスの車体にはベスマギルを奢ってある。

 一応ペイントして誤魔化してあるのだが。

 もちろん車体の側面には爆炎の鷹のマークが、でかでかと描かれているので、そうそうおかしな真似はされないはずだ。

 まあ鑑定されればバレるんだろうけど無視無視。


 アーモンが聞いたら、また目から火を吹くだろう。

 しかし機密よりも園児の安全を優先するのが、この魔王園長様なのだ。

 更に強化もかけ、車体表面にバリアも張ってあるので安心な事この上ない。


 地に足を付けた旅を楽しんでいたのだが、前に馬車の商隊が居て、つっかえてしまった。

 しょうがないのでテイクオフする事にした。

 空飛ぶバスなんて、遠足においてはあまりにも風情が無さ過ぎるのだが仕方ない。


 せっかくなので遊覧ヘリみたいに車体を少し傾けて景色をよく見せてやる。

 みんな重なり合って窓に顔をべったりとくっつけている。


 お、なんか飛んで来たな。

 どうやら飛竜のようだ。

 レーダーに真っ赤な点の一群として映っているので、フレア弾頭のミサイル魔法を撃ち込んだら、そのすべてがほぼ灰になった。


 魔法の威力が高すぎたか。

 素材一つ残らなかった。

 まあいっか。

 別に魔物狩りに来ているわけではないのだ。


 だが見学していた子供達の大歓声が沸いていた。

 そういや、子供達の前でこのような攻撃魔法なんて使っているところを真面に見せた事がないな。

 土魔法で幼稚園の土台を作ってみせたくらいか。


 空を飛ぶと、こういう魔物が出てきて面倒だ。

 空は奴らのテリトリーだ。

 高速道路感覚でひょいっと飛び上がっただけなんだが。


 MAPを確認し、周囲に商隊がいないのを確認してから、森の手前三十キロほどの地点で降りる。

 朝七時に出発したのだが、九時にはもう着いてしまいそうだ。


 森へ着く前の景色を楽しんでおくとしよう。

 大きな街道を行くわけだが、舗装してあるところばかりではない。

 この世界では、むしろ利便性を追求されるような区間でないと未舗装なのが殆どだ。

 何しろアスファルトをバンと引いてやるわけにはいかないのだし。


 これが季節的にすぐ雪に閉ざされてしまうような地球のカナダなんかだと、物凄い区間の舗装を極めて短時間で一気に終わらせてしまうが。

 あそこは超極寒の季節性と、アメリカとの国境沿いに基幹道路が一直線に走っている特殊性があるから特別なのかもな。


 街道は延々と続いているので、舗装するならあんな感じでやらないと駄目なくらいなのだが、石畳舗装は手間がかかる。 

 国際的には日本のチンタラし過ぎる道路工事が異常なのだが、あれはまたいろいろとアレな関係でああなっているのだしなあ。


 子供達は見るもの聞くもの珍しい。

 何かある度に歓声が上がる。


 道中、魔物の代わりに野生動物は豊富に出てきた。

 日本では近所の人が鹿にぶつけられて、車のドアが開かなくなってしまった事もあった。

 愛知県みたいな田舎じゃ、前を走っている会社の人の車がカーブに入る時、いつもと違うタイミングでブレーキを踏んだら、ブラインドコーナーで狸か鹿が横断したのだ。


 そんな感じの田舎道を走っていたのだが、街道沿いから外れる荒れ地コースに入ったので、もうタイヤ走行ではなくレビテーションに切りかえた。


 北朝鮮なんかだと道が悪いので「滅多に壊れないはずの日本製バスの車軸が折れる」などと言われるらしい。

 うちのバスは車軸が折れたりはしないが、乗り心地が最悪になってしまうので浮かせる。

 これは楽しい遠足なんだからな。


 しばらく行くと完全に森に突き当たった。

 飛んで上を行こうと思ったら、案内人のジョリーが制止した。


「このままバスを浮かべたままで進んでください」


 随行の精霊の一体が進み出ていくと、なんと森が真っ二つに分かれていく。

 なんていったらいいか、ファンタジー映画のCG映像みたいにビニョーーンと左右に伸びていくような感覚か。


 あっという間に森の中にエアハイウェイが出来た。

 バスは魔法で浮いたまま、その不思議空間の中を悠然と進んでいった。


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