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150-31 狩りの時間

「さあ、狩るぜ!」


 俺はガイドチームの冒険者達と一緒に、ダンジョンの指定された階層まで降りていた。

 このダンジョンはAランクダンジョンで四十階層ある。

 そのうちの二十六階層なので、そこそこに骨がある階層だ。


 とはいえ、ここはまだCランクの魔物しか出ないゾーンだ。

 Bランクの魔物は三十階層から出現する。


 俺が倒したあの外来種は例外というか、本来ならここに出るはずの魔物ではない他所者だったのだから。


 今回俺と行動を共にしてくれるのは五人組のCランク冒険者で、Cランク冒険者は基本的にCランクの魔物を単独で狩れるのだ。

 俺は例外だけどね。


 彼らチーム・サイオンは領主様からの指名依頼で、この割のいい仕事を受けたのだ。

 普通はこんなダンジョンの下層へ行くのであれば、大荷物を背負うか、または荷物持ちを雇うかしないといけないのだが、俺は当然完全な手ぶらだ。


 他の人も大きな物は俺が持っているので、通常行動装備で動けるため疲労も少なく、能力も最大に発揮できる。

 しかも狙いは決まっているので余計な仕事もそうない。


 邪魔者はただ蹴散らしていくだけで、たまに欲しい獲物があった時には気まぐれに狩ると。

 荷物持ちの俺が、獲物は丸ごと持って帰ってくれるしね。


 手ごろな魔物が現れると、俺にもやらせてくれた。

 俺一人じゃ絶対にこんなところへは降りられないので大喜びで狩った。

 今回はギルマスが許可をくれたので、俺もスクロールを使っていい事になっているのだし。


「ほら、ダイゴさん。

 こいつも肉が(すこぶ)るつきで美味いんだ。

 愛する奥さんへの土産にどうだい?

 ああ、使うのはあまり肉を痛めない魔法がいいね」


 それを聞いた俺も目の色が変わる。

 御土産でラーナに褒められたいぜ!

 手ぶらでなんて絶対に帰れないわ。


 そいつの名はアサルトランナー。

 Cランクの魔物だ。

 まるで地球の絶滅してしまった巨鳥モアみたいにどでかい鳥魔物なのだが、肉が凄まじく美味いらしい。

 肉の量も豊富で脂も大変よく乗っており、まさに特大A5魔物なのだ。


 俺は慎重にスクロールを選んだ。

 俺は初級魔法の他に中級魔法のスクロールも作れるようになった。

 ギルドで装備課のハンクスおじさんや、あと『子供達』から習って。


「やっとダイゴも中級魔法かあ」

「本当に待ちくたびれたよ」

「あたしが先生ね!」


 ああ、モブの悲しさかな。

 まあ俺は特に気にしないんだけど。

 いつだって、どこだってモブだった俺なんだ。

 こんな事は今更なのであります。


 でも、こんな優しい先生達に囲まれていて俺は幸せだよ。

 これで、あのサブマスあたりが教官なんかだったりしたら、もう全身ガクガクだ。

 想像しただけで膝が笑っちまうぜ。


「よーし、こいつで行くかあ」


 他の人達が、まるで子供をじゃらすかのように余裕でアサルトランナーの突撃を往なしてくれている。

 Cランク魔物有数の巨躯を誇るこいつに突進されたりしたら、俺なんかマジで大慌てさ。

 俺はスクロールの準備を手早く済ませてから全員に声をかける。


 現在、一人は俺の護衛、一人は遊撃、そして三人で一体のCランクアサルトランナーを囲んでいるのだ。

 彼らにしてみれば、超余裕の陣形だった。


「アーストラップで魔物の足を止めます」


 それを聞いた全員が、さっと距離を取って囲んでくれる。

 俺のスクロールは燃え尽き、奴の足元を生み出した岩で囲んだ。


 だが、奴の一番の武器である突進を止めたので魔法の火炎弾を吐こうとする。

 それを囲んでいる三人がジャブをかまして魔法の発動を止めてくれる。


 そしてもう一枚中級風魔法のスクロールを用いて、俺は難なく奴の首を落とした。

 うーん、あっさりとCランクの巨大な魔物を狩れてしまった。

 こんなの一人だと絶対に無理な芸当だわ。


 あとゴブリンはFランクでも、猿みたいに凶暴な魔物だから戦うのはマジで嫌だ。


「やったぜ、みんなありがとう~」


「はっはっは。

 ダイゴさんもスクロールが使えればCランク相手でも通用するんだから冒険者をやればいいのに」


「いやー、なかなか厳しいですよ。

 今日は護衛の皆さんが協力して、俺が魔法を撃つだけで狩らせてくれているからいいのですが、対等のチームメイトとしてやれと言われたら、あれこれと出来ない事が多すぎます。

 たとえば、今みたいに魔物を足止めしておくとかね」


「ははは、ダイゴさんはそういう事がわかっているからいいです。

 これが我儘な貴族の子弟の狩りに付き合うなんて事になると、これがまた豪い事でして。

 あの連中は、実力もないくせに無茶ばかりするからね。

 うちはそういう仕事はダンジョン全体で禁止してくれているから助かりますよ。

 まあ貴族である領主家自体がドラゴンスレイヤーの家系なのですからね!」


「いや、それにしても肝心の獲物が出てこないね」

「ああ、ありゃあレアな奴だからね」


 このダンジョンは全体的に同じ階層に複数の魔物が出る。

 同じレベルの二~三種類の魔物が出るダンジョンは珍しくもないが、ここは実に節操がない。

 まったくレベルのかけ離れた同士で出てくるし、まず五~六種類の魔物が共存していやがるのだ。


 その中にレアでなかなか出てこない奴もおり、またそういう奴に限って有用な特質があるのだ。

 今日、俺達が追っている魔物もそうしたレアモンスターの一つなわけだが、そいつは全然強くない。

 そして逃げ足が異常に速いのが特徴だ。


 また、いきなりふっと目の前に現れるので、慌てて構えても対応が間に合わなくて逃げられてしまうのだ。


 そいつの名はグルメキャタピラー。

 神速のイモムシなのだ。

 どんな魔物だよ。


 まあ、亀類のスッポンだって異様なスピードで陸上を走るんだ。

 あれも砂地とかだと、本当に戦車のキャタピラーの跡みたいな亀類特有の足跡をつけるんだけど、なんであれであんなに速く走れるんだろうなあ。


「イモムシ食うのかよ」と最初はビビったのだが、それが凄く美味いらしい。

 イモムシ型というだけで本当は芋虫ではないらしいし。

 この世界にはそういう魔物も少なくない。

 グルメキャタピラーと呼ばれていて、名前からして美味しそうだ。


 本物のイモムシのような昆虫質な素材ではなく、まったく別物な食材らしい。

 なんというか、いわゆる完全に肉と呼ばれるような食材なのだ。

 それは昆虫類が苦手な人でも、まったく抵抗なく食べられる物だという。

 見た目はどうにもイモムシっぽいらしいのだが。


 似たような食材に、ステーキワームという魔物があるそうだ。

 そいつも細長い形状の魔物だからワームと呼ばれているが本当は虫ではない。

 その名が示す通りに立派なステーキ肉が取れ、その質は極上の中の極上だという。


 いつかそいつも食ってみたい。

 ステーキワームは珍しい希少な生き物で、しかも臆病で狩るのが難しいと言われるそうだが、俺の各種スクロールを駆使するならば工夫次第で捕らえられるかも。

 生憎と、そいつはこの国にはいないらしい。

 また機会があれば、どこかで挑戦してみよう。


 とにかく御屋敷でも冒険者ギルドでもグルメキャタピラーに関しては、それはもう皆が涎を垂らさんばかりに話してくれるのだ。

 その様子を見て俺も興味が湧いてきた。

 何より、俺の奥さんになる人が食べてみたいらしい。


 かくいう俺も、高校の時にオーストラリアへ留学した時、ホストファミリーのおじさんが悪乗りして現地の名物芋虫を御馳走してくれたのだが、そいつがまた実に美味かった。


 俺は比較的好奇心が旺盛で、そういう『冒険』は嫌いじゃない方なのさ。

 この異世界でも『食卓の冒険』にチャレンジするぜ。


もうすぐ、最終巻となる「おっさんのリメイク冒険日記6巻」が発売となります。


二年と一か月で6巻。

それなりに頑張った方ではないかと。


長い間、応援大変ありがとうございました。

帯にも『堂々完結』の文字が入っている、正真正銘の完結巻です。

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