14-4 閉幕
第七種目はムカデ競争だ。
これも最近はいろんなやり方があるわけだが、今回は一番楽しそうな昔ながらのゲタ履きスタイルを選択した。
これはもうたっぷり練習した。
みんなでドッタンバッタンして、うきゃあうきゃあ言いながら。
こいつは非常に事故が多い競技なので、怪我には十分に注意を払った。
毎年小学生が、何百人も骨折などの大怪我を負う危険な競技なのだ。
普通は幼稚園でやらないのかもしれないが、そこを敢えてやるのがケモミミ園だ。
素晴らしい回復魔法も豊富だし。
それに体の強い獣人の子は、少々転がった程度では、そうそう強烈なダメージは受けない。
さっき大玉と一緒に転がっていた猫獣人ちゃんも「楽しかったー」とか言っていたし。
どっちかというとダメージが入るのは柔な人族である御世話係の方?
子供達は元気いっぱいだしね。
「おーっと、ルーバ爺さんがついていけていないぞー。
踏ん張れ、元王国騎士団長~」
エリーンも実況が楽しそうだ。
最初に彼と会った時から一緒だったので、彼女も元騎士団長である子爵様をルーバ爺さんと呼んでしまっているが、まったく角が立っていないところがさすがだ。
葵ちゃんも楽しいだろうな。
まるで日本へ帰ったような気分だろう。
可愛いケモミミちゃん達の、どったんばったんなムカデ競争。
随時、葵ちゃんが地球のインターネットに運動会の画像や動画をアップしまくりなのであった。
第八種目は障害物競走だ。
障害物として、麻袋、網くぐり、はしご、ぐるぐるバット、三輪車、キャタピラなどを配してある。
特にこのキャタピラ競争をやるためだけに、俺は希代の大発明たる各種段ボール箱を開発したのだ。
いくらか荷物を段ボール箱に入れて持ってきてあったし。
さすがにそれは葵ちゃんに呆れられたのだが。
平均台は、ケモチビどもがはしゃいで落ちまくりになりそうなので排除した。
そして御楽しみの飴食い競争の時間だ。
顔を小麦粉だらけにしながら飴を探す例の奴である。
この世界だと食い物を粗末にするなと怒られそうだが、これだけは運動会で絶対に外せない。
どうせ小麦粉も飴もコピー品なんだし。
是非ゲストの高貴な方々にもチャレンジしていただきたい。
これには王子様・王女様方が大喜びで、顔中を小麦粉だらけにしてやってらっしゃった。
御洋服は粉塗れになってもいいようにスエット系を貸与してある。
アワアワとか言っていた奴、それ泡じゃなくて粉。
バルドスや孫娘のジェニーちゃんも果敢にチャレンジしている。
人化したエンシェントドラゴンの爺さんが顔中を粉だらけにして、その顔をくしゃくしゃにして笑っているのは滅多に見られない光景だな。
あの嬉しそうな顔を見ると、俺もつい孫が欲しくなる。
いつの日か、卒園生の子が自分の子供を抱いて俺に見せに来てくれるような日がやってくるだろうか。
日本の児童養護施設なんかだと、そういう話もある。
それまで頑張って生きていよう。
気を付けないと、この世界って油断も隙も無いからな。
王太子殿下や国王陛下にも、是非飴食い競争などにチャレンジしてもらいたかったのだが、先日の公爵の一件の後始末もあって忙しかった。
あれは俺がバイトンを手にかけた方が陛下の心の負担は少なかったのかもしれないが、王国のためにはああした方がいいと思った。
それについては王家の人間も含めて、大方の人達は俺と意見を等しくしてくれた。
最後の種目は、御楽しみの二人三脚だ。
結構練習したけれど、みんな中々上手く走れない。
転ぶ子が続出だ。
うちの職員さんに貸与された腕輪には、各種の強力な回復魔法も仕込まれている。
一般からも参加を募ったが、こういう事に慣れていない参加者達によって、なかなかの珍道中になってしまった。
そんな中、エミリオ殿下に頼まれて園長先生も出馬したわけだが、これがなかなかどうして。
思いの他すいすいすいと決勝へ進み、なんと園長先生と王子様ペアが優勝してしまった。
なんでまたと思ったのだが、殿下も喜んでいるし、まあいいか。
そして、いよいよ閉幕だ。
準備にはどえらい事時間がかかったけれど、なんとか間に合ったなあ。
帝国の阿呆どもが世話を焼かせたりしなけりゃあ、もっと楽だったのに。
まあ、それに関しては後で一兆倍返しか一京倍返しかにして返すけどな。
やがて表彰式が始まった。
結局、赤白入り乱れての接戦だったわけなのだが、ぎりぎりで白組が制した。
チームを代表して、リーダーのトーヤが第一回優勝旗を受け取った。
こいつは白地に真っ赤なリンゴの絵のデザインで、これなら赤白どっちが勝ってもオッケー。
見事な紅白デザインだ。
カミラが「来年こそ勝つー」と言っていたらト-ヤから一言。
「あ、おれらいねんは、しょうがっこうだから。
カミラも、ようちえんのぶでがんばれなー」
「ガーン」
カミラは激しくショックを受けた模様だ。
「そのつぎに、しょうがっこうでせつじょくするー」と喚いていた。
終った後もバザーは続き、子供達もおやつタイムだ。
街の人達もたくさん楽しんだ。
バザーの匂いに釣られて集まった浮浪児の子達が、いつの間にか一緒に運動会に参加していて、園児の数がついに六十名を越えた。
相変わらずケモミミ・オンリーの構成だ。
ファル以外は。
あの子も本体には凄く可愛いミミがあるんだけど。
来年はおおよそ十五名が小学校進学となるので、数的にはいい感じになるはずだ。
その前に早く小学校を創設しないと、未就学児童が十五人になってしまうわけだが。
もう、あんまり時間がない。
丁度今日は代官も来てくれていたので、「また新しく学校を広げるから~」と言っておいた。
本当は王国の土地を使用するため、その旨の書類をうちから正式に王国へ出さないといけないんだけど、うちの関係は特別に代官の部下が処理してくれている。
国王からそう言われているため、王国の役人もそれで受け取ってくれているので。
段々と人も少なくなってきて、運動会の片付けも進んでいた。
最後の片づけはアイテムボックス収納なんて無粋な事はやらずに、みんなで片付ける方が楽しい。
こういう行事をやると、ここが街に受け入れられたみたいな感じがして嬉しい。
元々、街外れの小さな工房でうどんを作っていただけの話だったのだが、今では立派な幼稚園兼孤児院になった。
子供の数が増えたので職員さんも四十人に増やしてあったが、また足りなくなるかもしれない。
小学校の方も、先生の募集をかけないとな。
そっちの開校のための準備期間も要るんだった。




