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148-6 お式の準備

 それからの数日は目も回るような忙しさだった。

 といっても俺の出番などはない。


 もう、すっかり体制の出来上がったグランバースト公爵家においては、家臣の手によって全てが回っていく。

 俺はどっしりと座ってビールでも飲み、ただ彼らとやり取りをしていればいいのだ。


 俺の衣装は前回にもう出来ているのであるし。

 まさか二回目を着る事になろうとは思ってもみなかった。


 貴族家ならば家の関係的に幾らでもありがちな事なのだが、自由奔放をもってなる我がグランバースト公爵家において、いくら家庭円満を維持するために仕方がないとはいえ、まさか二人目の嫁が出来てしまうとは。


 今、家宰のロドスと招待客リストの打ち合わせをしていたところだ。


「ハイド王国シド国王夫妻並びにメリド王太子殿下、サイラス国王一家、ベルンシュタイン皇帝夫妻、ザイード王国エクード太子様、アルグランド王国アルス国王夫妻並びに草原の王者様、そしてエルドア王国御一行様。

 そして新婦の御家族であられるケモミミハイム御一行様。

 賓客は以上でよろしいでしょうか」


「うーん、国賓級はそれでいいとして、あと冒険者ギルド・ギルマスのアーモンにサブマスのレッグさん。

 それとアントニオ一家、オルストン家からは他にアンドレ師匠も呼びたいな。

 一番上のお兄さんは忙しそうだし御挨拶だけでいいだろう。

 オルストン家へは、また別途訪問する予定だ。


 出来ればアドロス商業ギルド・ギルマスのロゴスなんかにも出てもらいたい。

 アドロスの代官エドモント氏は当然出席者リストに入っている。

 アドロス冒険者ギルド・ギルマスのケニーも入れておいてくれ。


 あと帝国の宰相リヒターも呼ぼう。

 皇帝も来てしまうのでアレなのが、まあ一日だけならあいつが抜けても大丈夫だろう。

 結婚式ではエリーンと一緒に座らせてやろう。

 あの二人も少しくらいは気分が出るだろうからな。

 今回はエリーンを警護の任務から外してくれるよう、エドに言っておこう」


「畏まりました。

 はて、あの二人。

 はたして実を結びますかな」


「さてね。

 まあ、せめて御膳立てくらいは年寄りがしてやるさ」


 そして、その打ち合わせのためにエリーンとエドを呼んだ。


「喜べ、エリーン。

 今回の俺の結婚式、お前には警備ではなく一般の出席者として出てもらうから、思う存分に料理が食えるぞ」


「マジですかっ! やったあ」


 両手を頭上に挙げてリズムを取り、小躍りするエリーン。

 そんな真似は他の貴族家とかでなら絶対やってはならない事だが、ここでは当たり前のように許される。


「その代わり、リヒターの隣へ座ってやってくれ。

 帝国の宰相が独り身で参加だと格好がつかないからな。

 一応、ちゃんとそれっぽく着飾ってくれよ。

 ドレスはエルフ新町で用意させよう」


「はいはい、ゆったりめの高級ドレスを着て御馳走をいっぱい食べられるように頑張りますよ。

 リヒターも早く御嫁さんを貰えばいいのにね」


 おいおい、その台詞を本人が聞いたら泣くぞ。


「じゃあ、エド。

 そういう訳なんで、エリーンは警護の任務から外してくれ」


「わかりました。

 まあ、うちは戦力過剰ですから。

 基本的には対応任務だけですからね」


 要はエレーミアが心細くないように配慮できる護衛がいるといいのだ。

 そのあたりがゴーレムだと今一つだ。

 彼らもエレーミアに対して非常にフレンドリーなのだが、彼女のような力の持ち主には人間でない事がすぐわかってしまうので、どうにも居心地がよくないらしい。


「そうだな。

 なあエド、彼女にも頼めないかな。

 ほら葵ちゃんの知り合いだった帝国の女性冒険者。

 確か、名前はジェレミーだった。

 彼女も、もう御母さんだしさ。

 その辺の配慮もしてくれそうだし」


「ああ、はい。

 ではそれに関しては葵さんに訊いてもらいましょう」


 もちろん、葵ちゃんも傍についてもらうつもりだ。

 彼女自身は護衛業務とかは論外なのだが。

 まあ彼女の娘である瑠衣が一緒なのだし、そもそも招待客リストには、あの「ファンタジー3」も揃ってしまうのだ。


 そうだ。

 あの連中に、結婚式にはあいつ、海の五月人形を連れてこないように言っておかないとな。

 すっかり愛用してくれているみたいだし。

 むしろ、あいつは『ハイド王家の家族扱い』になっているようだった。


 メリドにとって姻戚の親族たる俺から精魂込めて製作して贈った贈り物が、そこまで家族ぐるみで愛されていて実に嬉しい限りなのだが、あれを結婚式の参列者として参加させるには少々問題がある。

 結婚式を身内だけでやるわけではないのだ。

 各国大使や自国の有力貴族なども招待されて、アルバ王宮で華々しくやられるのだからな。

 まあ、あの巨大なあいつさえ収まるくらい広い結婚式会場ではあるのだがね。


 今回はあまり波乱要素を混ぜたくない。

 また俺の御説教タイムになってしまうではないか。

 何よりもエレーミアに恥をかかせてしまうと、シルと大魔王シェルミナ様からのステレオ説教になってしまいそうだ。


「そう言えば、エレーミアのドレスの裾は誰が持ってくれるんだ?

 一人は娘のレミとして、男の子の方は誰にしようか。

 身分的な物を考えてトーヤかエディあたりでいいかな。

 あの子達は王子兼ケモミミ獣人だから、今回の式にはピッタリなんだが」


 だがロドスからは意外な返事が返ってきた。


「その件でございますが、ケモミミハイム側から申し入れがございまして、あちらの次期王太子様で如何でしょうかと。

 レミ様より一つ上なだけですので、歳の頃合いもよろしいかと。

 今後は公式行事にも次期王太子様を積極的に出していきたい意向だそうで。

 自国のオッドアイの王女の結婚式であれば、またとない良い機会であると」


 なるほどな、いずれも考える事は同じか。


「では承知したと伝えてくれ。

 レミの従兄妹にあたる子だよな」


「はい、エレーミア様の兄上で次期国王になられます第一王子様の嫡男にございますれば」

「へえ、あの爺さんの長男の孫にしちゃ、まだ幼いんだな」


「はあ、なかなか奔放な王子様であられたようで、結婚が遅かったようです。

 まあ、あの国ではありがちな事ではないかと。

 周りの人間も、誰も気にされてはいないようで」


 ケモミミハイムめ。

 相変わらずの、ゆるゆる王国ぶりだな。

 まあ、その方が付き合いやすいんだがな。

 新しい嫁さんの実家になるんだから、気難しいよりはその方がよっぽどいい。


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