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147-4 空き家の異変

「いやー、アドロス・ダンジョンは久しぶりだな~。

 俺、一応この街の正式な領主で、このダンジョンの街がホームベースなんだけどな。

 うーん、職務怠慢だわ」


「私もずっと最下層にある家を空けっぱなしだわ。

 御主人様が生きていたら怒られちゃうわねえ」


 こんな事を言っているような奴らが、この探検隊を主催しているのだ。

 何しろ、今更探検云々言うような場所ではないのだし。


 今はドラゴンやキメラさえ湧かなくなった。

 それ以外の、フェンリルやキメラ以外のAランク魔物は相変わらず湧いているようだったが。


 うちの魔物どもも、うちへ来てからは迷宮内で新たにポップアップしなくなった分、彼らがそのすべての力の恩恵を受けているようだ。


 彼らは素晴らしい力を持っている。

 俺が強化したり破軍の指輪の力で強くしたりしたのもあるのだが、それ以上にダンジョンのパワーで不滅になっているものらしい。


 俺達の台詞にベル君は呆れてこう言った。


「まあ僕だって同じくらい御無沙汰しているんですから。

 それを言うなら、僕はここのダンジョンの実質的な王国責任者である次長ですよ。

 ライオル局長は部署の統括責任者ですからね。

 しかも裏ダンジョンを制覇するまで貴方に御伴して、ここで冒険をしていたくらいなのに」


 俺達は皆、久しぶりにやってきたこのダンジョンに違和感を覚えていた。


「なんていうかさ、子供の頃住んでいた家に帰ってきたって感じが近いかな。

 自分の家なんだけど、もう全然自分の家じゃない気がするっていう、あの感じ」


「そうそう。

 あたしなんか千年ここに住んでいたんだけど、もうそんな感じよ」


「まあ、毎日あれだけ子供の世話を焼いていりゃあな」


 俺達のアレな話の相手をしていてもキリがないので、自作の魔導具であれこれとチェックしているベルグリット。

 だが、やはり首を捻っている。


「ダンジョン全体を測定してみましたが、やっぱりおかしなところは特にないですね」


「そうだろうな。

 俺も何も感じないよ。

 これで何かわかるくらいなら苦労はしないさ。

 真理、お前はどうだ?」


 もちろん、彼女も首を振った。


「ずっと住んでいてもわからないものが今更わかる筈がないと思っていたけど、やっぱり案の定よ」


「最近おかしな物が出来たという事は考えられませんか?」

「それはあるかもしれないけど、やっぱりわからないものはわからないわ」


 グスタフの方に視線をやったが、彼も首を竦めただけだった。

 だが、神様の御使いがこう言った。


「あたしは、(ほの)かに何かを感じる気がする」

「というと?」


「よくわからないけど、このダンジョンには何か良くない者が居る気がするの。

 前は意識しなかったから、そうは思わなかったけど、こういう話を聞いてしまうとね。

 今はただ、そう感じるだけ」


「そうなのかい?」


 首を捻った俺は『中の者』に尋ねた。


「なあ、イコマ。

 お前さんはどうなんだい?」


『久々の窮地 蛮勇は慎むべし 友は来たる』


 お、おやまあ、窮地なんだと?

 これはまた、よりにもよってこいつが嫌な事を言ってくれるな。


 だが、友の救援があるのだと?

 よくわからんのだが、これ以上訊いても奴が何も答えないのはわかっているので諦めた。


「どうしたの? 園長先生」


「なんか思ったよりもヤバいらしい。

 何か救援が来るような事を言っているがな」


「へえ」


 だが、よくわかっていないベル君が訊き返してくる。


「何の話ですか?

 言っているって誰が?」


「いい、いい。

 気にするなよ。

 ただ、そういう事らしい。

 みんな、ちょっと気を付けてくれ。

 それにしても手掛かりがまったくないなあ。

 ファル、なんとかならないかい」


 神様の御使いに丸投げしてみたが、彼女は言った。


「じゃあ、友達を呼んでみる」


 なんだって、それが救援だというのだろうか。

 少し期待してみるか。


「ちょっと、おいで~」

「なあにー、ファル様」


 そう言ってゲートから出てきたのは、白いむくむくな、いつものうっかりした奴だった。


「なんだ、お前が来たのかよ」


「あ、なんて失礼な。

 ファル様に呼ばれたから、レインボーファルス侍従長たるオイラが来ただけなのにさ」


「いや、悪い悪い」


 イコマの奴が笑いを示すサインを伝えてきている。

 どうやら、こいつが救援とやらではないらしい。


「ねえ、ロイネス。

 あんた、ここのダンジョンコアに渡りはつけられないかな」


 そ、そう来ましたか。


「つくよ」


 俺は思わず思いっきりずっこけた。

 それにはベル君も付き合ってくれていた。


 真理はまったく不思議がっていない。

 もしかして、こいつもダンジョンコアに伝手があるのかな。


「本当に?」


「そうだよ。

 でもいくらあんたがこの街の領主で凄い稀人でも、ダンジョンコアはそうそう人に会ってはくれないからね~」


「マジかよ」


 ダンジョンコア限定で、こいつは顔が広いようだ。


「こっちさ」


 そう言って案内してくれるロイネス。

 そして、まるで鼠の穴のように狭いところへ入っていこうとする。


「待て待て、そんな狭いところへ俺達は入れないぞ」


 だが、にっこり笑ってロイネスの野郎は少し下がって助走をつけると、なんと俺の尻をドロップキックで蹴り飛ばした。


「うわあ、何をする」


 だが俺はつんのめりながら、その『通路』の中にするりと入り込んでしまった。

 なるほど、人間除けに空間魔法が施してあって小さくしてあるのか。


 これは誰も入らないし、マッピングなんかもされていないわけだな。

 その入り口すらも普段はロックされているのかもしれない。

 今日はダンジョンコア御大に伝手の有るガイドがいるから中に入れただけなのかもなあ。

 やれやれ、またこういうパターンなのかよ。

 先が思いやられるぜ。


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