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第147章 オッドアイへ愛を込めて   147-1 お小言の時間

「まったくもって、お前と来た日には」


「あっはっは。

 いやあ陛下、実に面目ない。

 まさか、この俺があのような事になろうとは」


「笑い事ではないぞ。

 まあ、深刻な被害をもたらすような出来事ではなかったからいいようなものの。

 お前が稀人だという事を改めて思い知らされたわ。

 一体、何をやったらあのような奇天烈な事になるものやら」


「いやあ、何をやったんでしょうねー。

 わはははは」


 俺の誤魔化し笑いに、隣にいる宰相ともども陛下が呆れた顔をしている。


 いや、本当に何が起きたものやら。

 俺は、ちょっとゾンビ映画とかの見過ぎなのだろうか。

 あれと鮫映画は大好きでさー。

 B級映画鑑賞だけは死んでも止められん。


 あの異世界五月病は風土病なのだが、その実はストレス性の病気なので人から人に感染するような性質のものではないそうなのだが。

 病原菌はまだ発見されていない。

 今回の件を踏まえて、シルに言わせると『魂を汚染する何か』ではないかという。


 今までいろんな聖なるもの、あるいは怪異なるものと出会ってきたからなあ。

 何が原因でそうなっているものやら、自分でもさっぱりわからない。


 元々の病気が、細菌やウイルスにより感染を引き起こすのではなく、何かを媒介にして精神を侵す何らかの霊的魔的な要因なのだとしたら納得もいくのだが。


 やはり、この世界特有の物である魔素が何か作用しているのであろうか。

 あれを媒介する性質を持っているなら手の付けようもない。

 それこそ『裏ダンジョン』にでも籠っていないと逃れる術はないだろう。

 いやもう、本当にわからん。


 一頻り、義父からの御小言を頂いた後に俺は王宮を退散する事にした。


 普通ならば、王都にてあれだけの騒ぎを引き起こしたのだから絶対に只では済まないのであるが、『俺のやる事だから』という事で関係者も諦めがついているのであろう。

 いいんだか悪いんだか。


 それから俺は久しぶりに王都の冒険者ギルドへと御邪魔した。

 もちろんギルマスの顔を拝みにだ。


「よお、ギルマス。

 久しぶり~。

 あんたも幸せだったんだって」


 俺の楽しそうな笑顔に奴は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 まるで俺がレミに芋虫を食わされている時のような。

 芋虫はまだ美味いのもあるからマシかな。

 いかん、また味を思い出しちまった。


「お前か……。

 くそ、御蔭様でな。

 また要らん騒動を引き起こしおってからに」


「知るかよ。

 病気だったんだから仕方がないだろう。

 しかし、異世界の風土病は強烈だったなあ。


 最初の頃に回復魔法を覚えられてよかったぜ。

 この世界、性質の悪い病気がいっぱいあるじゃないか。

 地球へ行く魔法には検疫機能を付与してあるから大丈夫だけどな。

 逆にあっちの病気を持ち込むと、こっちの人には免疫が無いし、組み合わせてとんでもない代物が出来てしまってもいかん」


「頼むから、そういう物だけはこの世界に持ち込むな。

 ところで何か用があったのか?」


 俺は無言でポケットからスマホを取り出して、映像を奴に見せてやった。


「こ、これは~!」


「ああ、真理とファルが撮影しておいてくれた、あんたの動画だ。

 よく撮れているだろう?

 最近、ファルもビデオカメラを持ってお出かけする事が多くてな。

 今後も精霊の森ビデオコレクションとして、末永く保存されるそうだ」


 頭を抱えてジト目でこっちを見ているギルマスが言った。


「頼むから、そいつは削除しておいてもらってくれ」


「いやファルって、そういう事には結構執着するから駄目なんじゃないかな。

 ほら、あの子達は長生きだからさ。

 思い出は大切なんだよ。

 楽しかった日々、大好きだった人達に想いを馳せてという感じでね」


「ぐああ」


 そこに映っていた己の痴態の酷さにギルマスは呻き、デスクに突っ伏して悶えている。


 俺はレインが大切に持っていた、武が作った粗末な雛人形を思い出した。

 レインには日本の真理さんから、兄の映ったビデオや写真、子供の頃に描いた絵などが贈られている。


 そして、それらは何故かブラウンゴブリン達の興味を引いたらしくて、『船橋武をテーマにした創作会』などが催されている。

 彼らにとっても武は恩人であり、また伝説の人だったりするのだから。


 しかし、『蛙の卵の観察が面白くてウンコを我慢している俺』とか『理科室で硫酸に放り込んだ金属片が悶えながら溶けていく様子を観察している俺』などの自画像が、そんなにいい物なのだろうか。


 そもそも、普通の子供が自画像など描かないと思うのだが。

 通常なら御母さん、またはマンガやアニメの主人公なんかだよな。

 やっぱり変わった奴だったんだ。

 しかも、その内容がなあ。


 あいつも見た目だけは結構いい男だったのに、思いっきり台無しだわ。

 そのあたりの話をAI武に訊いてみたが、本人? にもよくわからないらしい。


「いやあ、なんでそんな絵を描いたんだろうなあ。

 子供の頃に何を考えていたかなんて、いちいち覚えちゃいないよな。

 あ、ちょっと真理。

 そんな絵をレインに贈るのはやめてくれよ~」


 だが容赦なくレインに絵を贈呈し、AI武を悶えさせた真理さん。

 AI兄弄りが楽しくて仕方がないようだ。


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