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13-4 最凶召喚士エリ

 今度は騎士団の練兵場へやってきました。

 騎士さんは一般の国軍の兵士とは少し違います。


 軍隊は基本的に通常の国防の任務に就くのです。

 大災害などが起きた時は全軍兵士が駆り出される事もあります。


 騎士団は王国に仕える王国騎士団や、貴族さんの家来としての私設騎士団などがあります。

 戦争になった時とかは、こういう貴族さんの騎士団も諸侯軍の中枢として加わるのです。

 後は志願兵さんや傭兵さんとか。

 

 王国騎士団は王宮などの国の重要施設を守ったり、国王陛下や王家の皆さんの護衛をしたり、また重要イベントなどには市中警備も行うのです。


 特に王国騎士団は超精鋭なので、この人達がいるだけでガラっと雰囲気が変わるといいます。

 王国騎士が一人いるだけで他の警備の人間もビシっと締まると言われているほどの精鋭なのです。

 外国からの賓客が訪れた際には総動員で警備に当たるとか。


 国を脅かすような問題には、特別に捜査権限を持って臨む事が可能な警察権限もあります。

 昔バイトン公爵の息子が御茶目をやらかした時も、彼らが敢然と乗り込んでいったといいます。

 軍の連中だと各派閥の貴族の関係もあって、なかなかそうはいかないのだとか。


「まあ、その御茶目の後始末の最終段階が今日の結婚式なのですが」とベルベット様が笑いながら仰った。

 何も知らない私は、ただただ、ほえ~っという感じに聞いていただけです。


 そして騎士団の偉い人が挨拶に来てくれました。

 物凄く髭を生やしていて、かなり体格のいい方で、少し厳つい感じです。

 いや、近くで見ると少しなんていうもんじゃないですね!


 こういう感じの方を偉丈夫と称するのでしょうか。

 おそらくは騎士団長様です。

 御機嫌ようと姫様達が挨拶されていました。


「御機嫌よう、姫様方。ところで、そちらの御嬢様はどなた?」


 あ、私の事だ。

 何しろ王宮の警備責任者のような方ですから気になるのでしょうね。

 えーと……。

 私が言い澱んでいると、シルベスター様が悪戯っぽい感じに答えました。


「こちらはグランバースト卿の大切な友人で、今日も彼の依頼でとても重要な役割を果たしに王宮へ来られたのよ。

 この子に何かあったら、彼が物凄い勢いで飛んできちゃいますから」


 すると騎士団長さんも笑ってこう言ってくれました。


「はっはっは、それは大変ですな。

 でも彼には感謝しておりますよ。

 あのオルストン事件は我々にとっても屈辱でございました。

 必死の捜査でキルミスも逮捕出来たというのに、結局我々の手を離れた途端に、全てがうやむやにされて。


 そして今日まであいつらをのさばらせてしまった。

 あいつらって反省の欠片もないですからな。

 今日も親父の方がやらかしたそうじゃないですか。

 それでもまあ、オルストン家の一件もこれで決着したわけですので」


「それでは失礼します」と簡潔に挨拶をして、騎士団長さんはキビキビとした歩き方で戻っていきました。

 心なしか、後ろ姿も凄く楽しそうです。


「お前らあ!

 姫様方も見ていらっしゃるんだからな。

 気合を入れていけ、気合をー!」


 普段は御目にかかったりしないけど、こういう方がこの国を支えているんだなあと感慨深く思ってしまいました。

 今日は色々と社会見学できるなあ。

 それと御兄ちゃんに感謝する人が、ここにもいました。


 しばらく王国騎士団の訓練を見学させていただいた後にサロンで御茶をいただきました。

 すると、どこぞの貴族の坊っちゃんらしき人物がやってきて姫様達に挨拶をしています。


「これはこれは麗しき姫様方。

 御機嫌よう」


 何もわからない私にも、彼らの出現により、御姫様達の機嫌が急降下していくのがわかりました。


 表面上は取り繕っているのですが、先程よりも明らかに言葉数が少なく、また表情も固いというか、感情の起伏が減っていくのがわかります。

 物凄く他所行きの言葉遣いになっていきましたし。


 取り巻きの連中も一目でいけ好かないのがわかる顔付きです。

 日頃から思いっきり親の権力を鼻にかけてるんだろうな~。


 長々と馴れ馴れしく、貴族同士の噂話から、また自分達の一派がいかに優れているかとか、そういうつまらないような話を延々としています。

 どうやら、この低脳はどこかの侯爵様の御子息だそうで、姫様と結婚したがっているらしいです。


 そのうえ相手は誰でもいいらしいしね。

 おまけにもうすぐ三十才。

 さすがにこれはないわ~。


 御取り巻きも似たような年格好です。

 これは姫様でなくてもうんざりしますわ。


 はあ、仕方が無いな。

 私はスマホを取り出して緊急コールを送りました。

 次の瞬間、奴らの後ろにアル御兄ちゃんが召喚されたのです。


「エリ、どうした!」


 そう言いながら、すでに侯爵子息の顔を片手で掴み、ぐいぐいと高く持ち上げていきました。


 御兄ちゃんは何故か既に戦闘装備でした。

 その背中に描かれた超有名なエンブレムを目にして、取り巻き連中が震えあがりました。


 そして姫様達ったら、とっても悪い笑顔を浮かべています。


「グランバースト侯爵様。

 さっきからその人達がエリちゃんに……」


 すると何かが軋むというか、軽く砕けるというのに近いような、とても嫌な音が平和なサロンに響き渡りました。


 いつの間にか、他にサロンで御茶をされていたはずの方々の御姿が一人も見えません。

 飲みかけの御茶の入ったティーカップが優雅に湯気を立ち上らせているだけです。

 アル御兄ちゃんの名誉のために言っておくならば、あの連中が来た時点で彼らの数は既に半減していたのですが。


 まあ、それでもまだ半分くらいは残っていましたわね。

 あははは。


「ほお。

 それについての御話を是非聞かせてもらいたいもんだな」


 素晴らしい迫力のある笑顔で御兄ちゃんがそう言いました。

 なんというか、初見の相手にしてみれば非常に怖い笑顔である事でしょう。

 それは、ただの若者に出来るような年輪のない笑顔ではありません。

 御兄ちゃんは見かけ通りの年齢の人ではないので。


 私はもう何度もそういう光景を見ていますので見慣れてしまいましたが。

 侯爵子息の御取り巻き連中は、もう影も形も見えません。


 まさか、彼らから見て眼中にもなかったこの私が、そんな危険人物を召喚可能な要注意人物だったとは思ってもいなかったんでしょうね。

 私って、世界でもっとも危険な召還魔法の持ち主かもしれない。

 そして姫様ったら。


「エリちゃんに、エリちゃんに……えーと、なんっだったかしら?」

「は?」


 それを聞いて、御兄ちゃんは凄く変な顔をしました。

 なんというか、ドラゴンが出たと言われて大慌てですっとんできたら、子供達が小さな蜥蜴を棒で突いていたみたいな感じでしょうか。


 そして少し困惑したかのような表情で首を傾げながらも、侯爵子息に向かって脅し文句をプレゼントしています。


「おい小僧、二度とうちの子にちょっかいをかけるな。

 今度そんな場面に出会ったら……わかっているよな。

 とっとと失せろ」


 そう言って御兄ちゃんは、『それ』を十メートルほど先に放り投げたのです。


 そいつはベチャっという感じに、何かこう潰れた蛙のように床に這いつくばってピクピクしてたのですが、いきなり飛び起きるや否や素晴らしい速度で走って逃げ去りました。


 御兄ちゃんは「王宮なのに警備が甘いな」とか、「事案発生」とかブツブツ言っていました。


「ごめん、御兄ちゃん。

 さっきから、あの人達が姫様にしつこくて困っていらしたから」


「そうなのか、まあ特に問題ないよ。

 ごたごたはもう片付いたから」


 ごたごた……。


「何があったか、ちょっと聞いてもいい?」


「ああ、あのバイトン公爵親子がうちのファルに手を出そうとして、精霊の大神官が超激怒してなあ。

 アルバトロス王国滅亡の危機だった」


 姫様達も予想外の凄まじい展開に息を飲んでいました。


「あ、あのグランバースト卿、それでどうなったのですか?」


 ベルベット様がおそるおそる訊いていました。


「ああ、連中は騎士団がとっつかまえて、国王陛下の下に連行したよ。

 そこで修道院で幽閉という情けをいただいたのに、逃亡して帝国に寝返ろうとしたらしくて。

 思えば、あの逃走を手助けした者も帝国の手先だったのかもな。


 国王陛下からバイトン公爵殺害の許可も貰ったのだが、結局俺がとっつかまえて陛下の下へ突き出した。

 陛下も果断に御決断なさって、結局奴らは明日の朝には処刑される事になったよ。

 本来なら俺なんかの手にかかるより、その方がずっといい」


 姫様方もみんな、うわあというような、とても公式の場では見せられないような御顔になってしまっていました。


「ついにですかあ。

 いつかはと思っていましたが。

 昔、息子の方のキルミスがミレーヌ姉様にも悪さをしようとして、冒険者装束の御母様に自分の部屋まで乗り込まれていた事がありましたしね」


 シルベスター様が嫌悪に顔を歪めながらそう仰いました。

 うわあ、とんでもない御仁だったようですね。


「まあ同情はしません。

 今までどれだけの人が酷い目に遭わされてきた事か。

 王国の恥と名高い人物でしたし」


 ベルベット様も淡々とそのように仰います。

 本当の王国の恥とはアントニオさんの家の事ではなく、あの人達の事だったわけですね。


「私、あの親子大嫌い。

 いつも私の事じろじろと舐め回すみたいに見るの」


 まだ幼いハミル様まで心底嫌そうに。

 いや、そいつって姫様方からも滅茶苦茶に嫌われているなあ。

 まあ無理もないけど。


 御兄ちゃんも苦笑して、こう言ってくれました。


「俺も後はもう帰るだけだから、そのうちエリに電話を入れようと思っていたところさ」


 そこへハミル様がこう仰ってくださって。


「せっかくだから、帰るのは王宮の御風呂に入ってからにいたしませんか?

 エリちゃんと一緒に御風呂で遊びたいです」


「そうか、風呂も悪くないな。

 ここの風呂は最高だ。

 今日は結婚式だけのつもりで来たのに要らん捕り物で汗をかいちまったし、俺も風呂に入っていこう。


 あ、そうだ。

 エリ、風呂へ行くんならファルも連れていってやってくれ。

 他のチビ達はもう帰ったから」


 そういやこの御兄ちゃんは、王国で手柄を立てた見返りに『王宮の御風呂入り放題の権利』を獲得した人なのでした。

 普段は幼稚園のチビ達を御風呂に入れているから来ないらしいけど。


「さあて。御風呂、御風呂」


 御兄ちゃんは、そう言いながらファルちゃんを迎えに転移魔法で消えていきました。


 久し振りに、感想を見にいったら、100話おめでとうの書き込みがたくさんあって嬉しかったです。

 23日目ですから結構なペースで上げてましたね。

 普通は1週間もすると1日1話になるもんですが。


 ちょっとダレてましたので気合が入りました。


 始めの頃の文章がくどいので直してという意見がありましたが、更新の方が止まってしまいそうなんで、あえて放置してあります。


 手直しにちょっと時間かかるイメージなのと、手直し分をうまい事当て嵌めていけるかよくわからなくて。

 スカスカになった分は他の書き込みで埋めていかないと。


 どこかで書き直しも考えてるのですが、未定です。

 とりあえず、今は勢いよく書き上げてしまおうと思っています。


 すぐ書きなおすと、勢いが落ちてしまってどうしようもなくなる可能性も指摘されてましたので。



追記 2021年2月9日


 当初はこのような事を書いていたのですね。

 大正解でした。

 連載の途中では、ところどころ直していたのですが、毎日更新と書籍化作業に追われて直し切れる量ではなく。


 結局、連載終了後に一年以上経過してから思い立って直したのですが、全話回っても直り切っていないので、ただいま手直しは二周目に突入しました。


 本を二十冊まとめて書籍化作業しているようなものなので、二周目を回っても全部直りきらない気がしています。


 コミックスはまだ発行されていますし、連載終了後一年経ってもまだ読んでくれている方がいるようなので、もう少しコツコツと頑張ります。

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[一言] 姫様に取ってファルとの入浴はご褒美だからな! 神聖エリオン様との入浴は王女の特権かもね? 偉い喜びかもね?
[一言] < とても嫌な音が平和なサロンに響きアw足りました。 多分「響き渡りました」の打ち損じかと。
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