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146-3 幸せの公爵

「ぼかあ、幸せだなあ」


 そんな事を言いながらケモミミ園を視察というか、ふらふらと歩いているアルフォンス。


「あ、園長先生~。

 やだ、昼間からまたそんなにふらふらするほど飲んで。

 もう、子供達が見ていま……」


 呼び止めた副園長先生は途中で言葉を区切った。

 彼の顔を見てしまったからだ。


「う……わあ、園長……先生。

 あ、あなた」


『ちょっとこの顔は見たくなかったな』


 彼を見慣れた真理をしてそう思わせるほどの、これまた見事なタコっぷりであった。


「やあ、親愛なる真理ちゃんじゃないですかあ。

 僕、今凄く幸せなんです。

 これ、どうやったら大切な仲間である君にも分けてあげられるのかなあ」


「あ、えーと、結構です。

 ま、間に合ってますから」


「そう、初代国王の毎度のタコっぷりでね」と心の中で唱える真理。


「そうかあ、そいつはとっても残念だなあ」


 心の底から残念そうにしながら、またくるりっと向こう側を向いて、ふらふらと歩きだす園長先生。


「ヤバいなあ。

 まさかの園長先生発病かあ」


「そうなんだよ」

「わあ、びっくりしたあ」


 いきなり転移魔法でバックを取ったミハエルに真理は驚いた。

 なんというか、そのやつれたような気配に。

 これが敵なら内蔵の魔法センサーが警告を出すのだが、そうではない上にひょろひょろになっている状態なので。


「ミ、ミハエル殿下。

 どうされたんですか?

 そんなになって」


「あ、いや。

 この前のプリティドッグの一件と、今はあの男の監視でね。

  一体どうしたものやら」


「うわあ。ご、御愁傷様です」


 真理は、「この人、今年も危なそうだな」と思いつつ、自分も園長先生の後を追うつもりだった。

 今の状態では何をしでかすものか、わかったものではないからだ。


 そして歩き出した園長先生は声をかけた。

 可愛いネコミミ付きの愛娘に。


「やあ、俺の可愛い愛娘レミじゃないか。

 君は今、幸せかい」


「うん! とっても。

 パパは?」


「とおおっても、とおおおおおっても、幸せさ~。

 そうかー、レミちゃんは幸せなのかあ。

 この俺の幸せを、愛する君に分けてあげられなくて非常に残念だなー」


 その父親の、いつもとは少し違う趣のおかしな挙動に、彼女も可愛らしく小首を傾げたのだが、まあいつもとそう変わらないかなと思い直し、可愛くバイバイして見送るレミちゃん。

 後で本人が聞いたら泣くかもしれない。


「うーん、完全にいっちゃっていますねー」


 他人事のように呟く副園長先生。


「それよりも、『幸せじゃない』と言った相手に対して、どういう行動を起こすのかが気になる。

 何か胸騒ぎがするな」


 他人事どころではない第二王子が眉を顰める。


「あっはっはっは、それは言えていますねー。

 初代国王はそこまで酷くなかったけどなあ。

 あの人はこの世界に来るまでは、結構幸せだった人でしたから。


 園長先生は無法なブラック企業の罠に嵌まりゴミのように社会から排撃されて、世の中の隅っこで世捨て人みたいな暮らしをしていたそうですから、おそらく幸せという物に対して物凄く執着があると思うんですよね。

 こんな時に、ほぼ自分の裏側にある部分が剥き出しになった時に一体何をしでかすのかしら。

 あたしも、ちょっと興味があるわあ」


 それを聞いて、またゲッソリ感が増した苦労人の王子。

 彼も苦労は人生の友としてきたのだが、大国の王子として不幸には縁が無い人生だった。

 アルフォンスのように不幸な人生を歩いてきた人間が、こういう時に何をしでかすまではよくわからないのだ。


 教室というか、ケモミミ園の大広間でそれらのやり取りを見ていた元冒険者である古参の職員は(かぶり)を振った。

 彼女は、このケモミミ園創設期から全てを(つぶさ)に見てきた人物であったので、どういう事態なのか完全に把握出来ているのだ。


「せんぱーい。

 何か面白い事になっていますねー」


 後輩のかなり年下の職員が御気楽に話しかけてくる。


「馬鹿ねー、豪い事になっているわよ。

 まさか、あの園長先生が発病したとはねえ。

 まあ園長先生の事だから、子供達へ特に危害が加わるような事はないと思うんだけど。

 絶対に予想の斜め上の事態になるのに決まっているんだから」


「先輩、だから御祭りなんじゃないですか。

 あの王妃様がこの事態を放っておくとでも?」


 楽し気に答える後輩ちゃん。

 彼女は『祭り』の大ファンなのだ。

 それを積極的に執り行ってくれる、先輩冒険者でもある王妃様の事も心の底から崇めている。


「そうだった!

 それがあったなー。

 普通は国王陛下が発病しないなら踏ん張るものなんだけど」


「踏ん張るどころか、火に油を注ぐんじゃないですか」


「そうなのよねえ。

 今年は陛下も発病はなさらない見込みだったのに。

 またとんでもないブラックスワンがいたものね~」


 このケモミミ園では、主が稀人なので、このような園長先生がよく引き合いに出す稀人式の表現が日常化していた。

 きっとそのブラックスワンは、黒い笑みを浮かべた魔王白鳥なのに違いない。


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