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142-6 暴れん坊王子 メリドまかり通る

 俺の繰り出す技に興奮していた子供達も落ち着いたようなので、ゆっくりと花見会場を回る俺達。

 会場も、いつのまにか集まった『異世界屋台』に埋められており、地元の市民も集まってきた。

 俺の知り合いが、その中のどこかにいるかもしれないな。

 そう思って思わず顔を綻ばせる。


 いつものアドロスのイベントではない。

 生まれ育ったこの街で、市民の人達が俺の主催するイベントに集まってくれている。

 本来なら絶対に有り得ないような話だ。


 俺はメリド王子を片手に抱えて、もう一方の手にレミを繋いで、のんびりと歩く。

 ここは俺が慣れ親しんだ、半世紀以上も暮らした生まれ故郷の街なのだ。


 子供の頃は、親に連れられてこんな河川敷の花見会場へ来たりはしなかった。

 親父は仕事が忙しくて、お袋は病気がちだったからな。

 近所の小さなショッピングセンターの駐車場でやる御祭が精一杯だった。


 今はそのひなびたショッピングセンターすらも数十年も前に無くなってしまって、跡地は歯科医院になっていた。

 もう一つ御祭りをやっていたショッピングセンターもあったが、そっちは駐車場になっていた。


 あの頃も医療関係は上級職として輝いていた。

 そんな風に不景気業種跡に意気揚々と自分の城を構える事も余裕で出来ていた。

 でも今はお医者さん達も様々な事情から、お金はそれなりに貰えてもブラックな環境の中で青息吐息の生活だ。

 歯医者さんなんかは、まだマシな方じゃないのか。


 河川敷の祭りに行くようになったのは大人になってからなのだが、今では異世界はおろか、こうして日本で異世界の子供を連れてイベント三昧である。


 だが今なら言おう。

 みんな、結婚して子供を作っておくといいよと。

 家族はいいもんだ。

 独り身で、いい歳になってしまうと初めて気付くのだ。

 家族というものの良さに。


 そういう事も五十歳くらいを超えないとわからないものらしい。

 その手の話はいろんな人から聞いていたが、 やはりそういう話だった。

 実際に人生の黄昏を迎えて、俺もやっぱりそう思った。


 若いくせにDVなんかしている連中もいるが、馬鹿な奴らだ。

 留置所の中で思い知れよ。

 自分の力で望んで掴み取り、その手の中にあったはずの幸せを、自ら手放した自分の馬鹿さ加減を。

 連中にも自分の言い分はあるのかもしれないけれど、少なくとも法と世間は認めてくれないだろう。


 ちょっと自分の境遇が思い通りにならかったからって、大切な家族に当たり散らすだと。

 今なら何かあれば近所からすぐ通報していただけるから、運が悪ければ何もかも失って刑務所行きさ。


 異世界なんて魔物との殺し合いで、あるいは簡単な病気なんかでも全てが奪われちまう。

 どんなに生きたくても、この世の全てを愛していたとしても、一瞬にして抵抗も出来ずに終わる。

 現地の人では太刀打ちできない、日本とかなら簡易過ぎる疾病の僅かな流行でも終わる。

 村ごと焼き払うような盗賊団がやってきて、あるいは悪徳貴族の我儘で、強大な魔物の襲撃で、その全てが終わるのだ。


 愛はいつも命懸けなのだ。

 動物などの世界のように。


 そんな事を考えながら歩いていたのだが、なんか小さな子供を抱いた女性を、泥酔したような若い男が殴りつけ、怒鳴りつけながら蹴っている場面に出くわした。


 女性は蹲り、必死で赤ん坊を庇っていた。

 誰も止めない、警察も来ない。

 関わると面倒だから一一〇番も通報されない。

 この街の警察は駄目警察なのが市民に知れ渡っているからな。

 通報するとまるで犯罪者扱いで、かなり嫌な思いをさせられるので関わるのを避けているのだ。

 野次馬も囲まない。


 この日本で、しかも俺の街でだと⁉

 この俺が開いたイベントで!


「おいおい、てめえ。

『この俺の縄張り』で何を」


 だが、俺を差し置いてグイっと前に進み出たものがいる。

 それはまだ生後間もないメリド王子だった。

 他の二人の仲間はそれを生暖かく見守る構えだ。

 あのねえ。


「えー。

 今から大人過ぎやしないか、お前達」


「何を言っているのさ、園長先生。

 僕らの住む異世界はあれこれと厳しいんだから。

 あの子は一国の王になるために今から頑張らないと!」


 うーん、そこまで言われてはなあ。

 瑠衣も、うんうんと真剣な表情で頷いている。


 はいはい、わかった、わかりましたよ。

 という訳で、傍らで腕組みして静観する俺と、頭を振る王子の保護者であるアレーデ。


「バブー!」


 おい!

 いきなりパンチ一発かよ。

 見事に仰け反って転がるDV男。

 すぐ傍に居る事にすら気付いていなかった誰かから、心構えも無しに食らう強烈なパンチは効いたろう。


 まさか宙に浮かんだ赤ん坊に殴られたとは思わないだろうから、誰にやられたかすら理解出来ていまい。


 ああ!

 違った。


「バブバブバブバブバブー!」


 一発じゃあない。

 魔道王子様の容赦ないオラオラパンチの嵐だった。

 待機モードからコールされて、一瞬で起動された魔道鎧を纏っての、圧倒的なフルコンタクト制だな。

 さすがは次期国王の貫禄だ。


 って、おいおい、ちっとやり過ぎじゃねえ?

 そいつ死んじゃうよ。

 魔道パンチは半端じゃない威力なのだから。

 子供は本当に容赦ねえなあ。

 いやまだ赤ん坊なのだけれども。


 普通の乳幼児の子でも、力加減を考えない容赦のない突撃を食らって、親が骨折したりする事も稀ではないらしい。


 そして蹲って「止めてくれ、赦してくれ」と泣き喚き許しを請う奴の前に、件の女の人が飛び出して庇った。


「ごめんなさい、もう許してあげて。

 この人も根は悪い人じゃないの」


「ばぶう」


 やれやれ。

 犬も食わないイベントに当たっちまったな。

 生憎な事に、その寸劇を観覧していた異世界の犬どもは笑い転げていたのだが。


 空中に浮かんだまま、ちーと困った顔をしたメリド王子を俺は笑って抱き上げ、後は身内同士のやり取りに任せる事にした。


おっさんリメイク5巻は、東京なら早いところは今日明日から並びだすのではないでしょうか。

うちの近所の店では、もう3~4日しないと来ないのではと思っています。

田舎は辛いな~。






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