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142-5 ファンタジー3ならではのお花見(良い子は絶対に真似しないでください)

 そして、あいつら(ファンタジー3)がやってきた。

 引率はアレーデと葵ちゃんが担当しているようだ。

 山本さんは現場で御菓子関係を仕切ってくれている。


 当然、アントニオのところのレオンは野放しだ。

 まあ、あいつは赤ん坊の頃からやりたい放題なのだから仕方がない。


 普段はルイが保護者みたいなものだが、あいつも今は瑠衣の姿に戻って葵ちゃんに抱かれている。

 もうあの子は子供体形のままでも元気に走り回っているんだがな。

 葵ちゃんの子供だから、よく喋る子だし。


「あれ、シド達は?」

「ああ、会議があるので遅くなりますと」


 アレーデが一緒に連れている女性は乳母さんらしい。

 さすがのメリド王子も、御飯はまだおっぱいだろうし。


 メリーヌ王妃も会議でシドと一緒なのかな。

 あの国だと何の会議だろう。

 漁獲高とかを決める奴とか、あるいは新航路決定とかかな。


「来たー」

「来たよ~」

「バブー、バブバブバブバブ、ブ~」


『メリド殿下は御機嫌』

 思わず、そんなタイトルで短編を一本書きたくなるくらい、御機嫌に手を振り回すメリド王子。

 そして抱えていたアレーデの顎を直撃する小さな拳。

 赤ん坊のものだから可愛いものだけれど、この子って只の赤ん坊じゃないから痛いだろうな。


「あ、痛い痛い。

 メリド殿下~、暴れないでくださいな~」


「バッブー!」


 あはは。

 こいつはまた御機嫌さんだな。

 生まれてすぐに体験する御花見が、かなり心の琴線に触れたとみえる。


 しかし、なんと魔道鎧が待機モードになっているじゃないか。

 なかなか小器用だな。

 この子は父親似で上手に魔法を使いそうだ。

 母親も魔法一本の御方だし。


 それは当たったら痛いわ。

 敵と見做されているわけではないので、そうたいした被害はないのだけど。


「王子はちょっと俺が預かろうか、アレーデ」


「は、はい。

 お願いします」


 涙目で乳母さんから回復魔法をかけてもらっているアレーデ。

 なるほど、赤ん坊の王子に何かあるといけないから、回復魔法持ちが乳母なのか。

 おっぱいの出だけで決められているわけではないのね。


 俺は、さっそく使い慣れた子守りスキルを発揮し、じゃらし始めた。

 俺って多分、魔道鎧持ちの赤ん坊をじゃらすスキルの使い手としてなら世界一じゃないかと思うの。


『必殺・魔道鎧反発大回転』


 魔道鎧の動きを赤ん坊のそれと反発させながらも、どこかへ打ち出してしまったりはせずに円運動に変えてしまう、まるでモーターのような働きをする技だ。


 しかも回っているのは回転軸ではなく、赤ん坊が周りを回るだけなのだ。

 スピードも自在だ。

 レオンでたっぷりと練習したから、いきなりでも安全運転できる。


「バババ・ババンブー!」


 またしても超御機嫌モードのメリド王子。

 やはり並みの赤ん坊ではない。


 様子を見ながらやっているのだが、実を言うとアポロの宇宙飛行士の訓練並みにGがかかっているのだ。

 あの人間を括り付けてグルグルと回し、遠心力で七G以上を叩きだす訓練機械はごつかったよな。


 某有名映画の中ではあれも20Gくらいまで出せて、そこまで行くと人間は死ぬとかいう設定になっていたが、普通その前に死んじゃうって。


 鍛え上げられた肉体を持つプロレスラーでもないと耐えられそうにない。

 確か昔の宇宙飛行士は全員軍人の佐官クラスだったからなあ。

 あの訓練機械って民間人が宇宙へ行くようになった今でもNASAで使っているのかねえ。

 まあ普通に考えたら耐用年数が過ぎてしまっているわな。


 魔道鎧の持ち主はこういうものも余裕でこなす。

 俺は自分が開発した宇宙船に乗せられる人間の宇宙飛行士に選抜できるのは、とりあえず魔道鎧の持ち主だけと決めている。

 まあ、御客さんなら話は別なのだが。


 皮肉な事に、事あるごとに大人をきりきり舞いさせる、このファンタジー3なら連れていっても全然大丈夫だろうと思っているのだ。


 そして自分も混ざって一緒に回るレオン。

 瑠衣が混ざりたそうにしているが、この子は無理。


 瑠衣は今のままでは魔道鎧を発動させられないが、ルイに変身すると母親並みに体がでかくなり過ぎるから定員オーバーだ。

 だからレオンだけは混ぜてやった。


「ようしっ、次はスピントンネルだ!」


 お次は七Gで回りながら体をくるくる回転させていくモードだ。

 これは普通の人間には耐えられるようなものではない。

 歴戦の宇宙飛行士だろうが、あるいは軍人だろうがプロレスラーだろうが、決して耐えられるものではない。


 巨大スーパーロボットを平気で操れる化け物のようなパイロットでもゲロを吐くレベルなのだが、こいつらは平気の平左だ。


 人を越えし祝福の子ら。

 ちょっと楽しいよな。

 異世界ならではの子供達だ。

 一人は完全に地球人同士の子供なんだけれど、それはまあ今更だった。


「いやあ、凄い御花見だったー!」

「バッブー!」


 結構余裕あるな、こいつらって。

 あの7Gがかかる空中大回転の最中にも、ちゃんと御花見をしていたのか。


「えー、やっぱり、あたしも混ざる~」


 それを聞いた瑠衣が思いっきり駄々を捏ねている。

 他の子がドヤ顔をしているので超羨ましくなったみたいだ。


「しょうがないな、じゃあ変身しな。

 その代わり、かなり軌道を大きく取るからな」


「やった~」

「よかったね、瑠衣」

「バブ~」


 そして広い場所に移動し、大きくなったルイを含めて三人入れても大丈夫な軌道でやれるスペースを確保した。

 俺も魔道鎧を発動して浮かび上がる。


「そおら、お前ら。

 スペシャルで行くぞ」


「どんと来い」

「がっつり行こうよ」

「バブウ~」


 そして、まずは最初のノーマル大回転モードから。

 次にスピンモードへ移行し、ルイの歓声が沸き上がる。


 そして、(とど)めのトルネードモードだ。

 今回は上下にも空間を確保したので、縦横無尽に回転しまくるのだ。


 自身が回転し、さらに俺の周りを回転するのだから、自転しながらの公転だな。

 俺が太陽の役割りだ。

 チビ惑星どもが自由自在に乱回転中だけどね。


 通常ならば、どんなタフガイでもゲロ吐きまくりで屍同然となるこの状況で、奴らはとびきりの空中大回転花見を楽しんでいた。

 これをNASAの人間が見たら何と言うだろうか。

 うちの王国騎士団並みに『新訓練』のメニューが開発されるのかもしれないな。 


「すんげ~」


「ワンダフル!

 桜がきれーい」


「バンブー!」


 それを見たアレーデは溜息をついた。


「やれやれ、グランバースト公爵。

 王子をあんまり腕白に育てないでくださいね。

 こっちの身が持ちませんので」


「ははは、回復魔法なら教えてやるよ。

 いや、俺が作った転移機能付きである魔法の腕輪をやろう。

 どうやら君も回復魔法を使えた方がいい按排のようだしな」


 それにこの飛行能力持ちである腕白王子の御守をするとなると、転移魔法くらいは使えた方がいいだろう。


「はあ、それではありがたく頂戴しておきますか。

 まだまだ先が思いやられますので」


うちの近所のお花見は、昨日からようやく七分咲きのようです。

小学校の入学式も満開ではないでしょうか。


おっさんリメイク5巻も、今回は表紙でお花見できます。

いつもの感じであれば明日明後日の土日あたり、早いところでは書店様に並びだす頃かもしれません。


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