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142-4 魔法のお団子

 とりあえず女子高生には戻ってきたプリティドッグの子犬を与え、通報しないように懐柔しておいた。


「可愛いよねー、この子達」

「すっごく手触りがいいし」

「もう、この顔のなんちゅう可愛さか~」


 傍に控えている犬王妃様と南の犬公爵様が、うんうんと頷いていた。


 ドライアドどもは何事もなかったかのように、しゃらっとした感じに元の位置に植わっていた。

 一旦植わったら、連中も木から抜け出して出てこられるのだが。


 その木から出てきたピンク頭の集団に彼女達も呆れていたようだったが、すぐに慣れて一緒におやつなどを食べている。

 若い奴らって本当に順応性が高いよな。

 そういや葵ちゃんもそうだったな。


 女子高生が十人にプラス二人(犬王妃及び犬公爵)で、プリティドッグの子犬は一人一匹当ているな。


 ラブラブな両親は子犬の子守りを異世界の他人に任せて、エルフさんの花見弁当(肉抜きバージョン)を堪能している。


 段々と人も集まってきていたが、さほど異変に気付かれたような気配はない。

 せいぜい、河川敷の真ん中に桜が大量に生えているのを不思議がるくらいのもので。


 それよりも、もうとっくに無くなってしまったはずの屋台がズラリと並んでいるので、そっちの方に気を取られているようだ。


「へー、今日は屋台が安いのね」

「ク、クラーケン焼き⁇」


「あー、これはイカ焼きみたいなもんで。

 どっちかというとタコですかね。

 ちょっと歯ごたえありますが、香ばしいし味に深みがあって美味しいですよ」


「へー、食べてみようかな」


「こっちの串はドラゴンです」


「あははは、いいわね。

 素材は何なのかしら」


 一応、本物のドラゴンなんだけどな。

 ちょっと日本の屋台とは異なる食材も混ざっているが、是非御賞味あれ。

 ドラゴンもクラーケンも、本来ならこんな屋台で出すような物じゃない高級食材なんだから美味いぜ。


 織原達も呼んでやったので、こっちへやって来た。


「ヤッホー、園長先生~。

 御招きどうもー」


「うちんとこも今年は早いですよ。

 もう咲き出してます。

 うちは大体四月の上旬から下旬あたり、遅い所は五月まで咲いている場所もありますしね」


 そういや、こいつらは雪国の住人なんだった。


「さすがは雪国だな。

 うちはもう咲き終わっていてな。

 そうか、そっちへ行く手もあったのか」


「あはは、向こうじゃ場所がね。

 うちのところじゃあ、この大人数は難しいですよ。

 いいじゃないですか。

 桜にだけは事欠かないんですから」


 そして笑顔の親方から声がかかる。


「おう、織原。

 来たか。

 今ドワーフ団子が出来上がったところよ」


 次々と、発砲スチロール製の皿に乗って渡されてくるそいつ。

 既にレミとファルは齧り付いている。


「へえ、大きな団子だな」


 だが、それほど奇天烈な物ではなさそうだ。

 わざわざ魔法鍛冶炉なんかで作っていたから、特別素材なのかと思っていたら。


「何これ。凄く美味しいよ」

「物凄く滋味が染み渡る感じでいいな」

「なんなんだろう、この味は」


 なんだと⁉

 女子高生にも人気だな。

 見れば、うちの子も恍惚とした様子で夢中で齧りついていた。

 かぐわしい香りにプリティドッグどもも我慢しかねたとみえて、ポンっと人化した。


「ありゃあ、この犬達、人間の子供になった~」

「ええーっ」


 驚くプリティドッグ初心者達に笑顔を返す、我らが犬王妃様。


「ほほほ、可愛いでしょう。

 そこのマニスが、うちの子よー」


 呼ばれたと思ったか、じゃれにいくマニス。


「ねえ、ロッテママ。

 ドワーフの御団子が美味しいの」


「そうねー。

 祭りにはやっぱりドワーフ飯がなくっちゃね」


 うちのおばはんも、差し出された団子を一口齧ってみて、目を見開いて夢中で食べていた。

 そして次々と焼かれてくる団子達。


「ふむ」


 俺も一口食ったが、こいつは美味い!

 これは確かに米の粉のような物で作られているな。

 周りには、みたらし団子のようなタレがかかっているのだ。

 なんというか、醤油系なのだが特別な何かが入っている感じだな。


 おそらくは植物系の素材で、体には害は無いが、そこに含まれる滋養強壮で人を大変引き付けるものなのだ。

 それにしても、何故こいつの調理にかなりの高温を発する魔法鍛冶炉を使っているのだろう。


「親方、こいつは一体何なんだい」


「ああ、こいつは『天界の苗』と呼ばれる特別な作物を使っておる。

 それは普通の火力では、お前らのいうところのアルファ化が出来ん代物なのよ。

 まあ一種の魔物植物だな。

 とりあえず魔法鍛冶炉の高温で『討伐処理』をしないと食える物にはならん。

 しかも、かなり魔法抵抗も強いので、魔法鍛冶炉をもってしても調理に時間がかかる。

 こやつらはそのせいで、収納すら出来んくらいなのだから。


 だがまあ、食えば御覧の通りの美味さよ。

 まあドワーフ鍋ほど時間がかかるものではないのだがな。

 タレに使っているのは、お前らの世界で言うところの化学調味料のようなものだが、素材から自然な旨味を引き出すものなので、化学調味料のように味覚を麻痺させてしまうような事はない」


「そいつぁ、また豪く難儀な代物だな」


 そういや俺もドライアドなんかの植物精霊には馴染みが深いが、魔物植物ってあまり縁がないな。

 よく知っているのは木材としてのジャイアントトレントくらいか。

 案外と魔物植物なんて、向こうの世界の市場なんかで普通に売っていそうだけどな。


 魔法の調味料か。

 興味あるなあ。

 俺も今度挑戦してみようか。

 いや、山本さんに御願いするか。


「ふふ、親方よ。

 しかも、そいつを最初に作っておけば、汗をかいて後の酒が美味くなるっていう寸法だな」


「うむ。知れたことよ」


 他のドワーフ達も全員、裸エプロンのままで満面の笑みを作っていた。

 ある意味、これがこの花見で一番凄い見ものなんだけどな!


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