第99話 真実を告白してみた⑧
僕の提案を聞いたメイソウは沈黙する。
数秒後に発言したのは会長のアビスだった。
「交、渉決裂、で、すね……では予、定通り、に進……めましょ、う」
その言葉に僕は軽く身構える。
殺し合いだろうか。
いくらなんでも戦力的に厳しいのだが、向こうがその気ならやるしかない。
死なない自信だけはあるので、全力でぶつかることだけを考えよう。
ところが、アビスは攻撃を仕掛けてこなかった。
アビスが手を打ち鳴らすと、湿った音が空間内に反響する。
千波が下がり、代わりに進み出た者がいた。
ビキニ姿でマフラーを巻いた美女だ。
グラビアアイドルのようにメリハリのある肢体で、透き通るような金髪と深海のような色合いの目を持つ。
総じて芸術的な美貌だった。
そんな美女はハイテンションで踊る。
「こんにちはー! メイソウ期待の新人ことハルカ・ランドルフでーす! よろしくお願いしまーす! ここからは私が担当しまーす!」
「つまりあなたを殺せばいいのですかね」
「違いまーす! ハズレでーす! あなたにはメイソウの発表を黙って見守ってもらいまーす!」
水着美女のハルカがいきなり僕を指差す。
すると、身体が一切動かせなくなった。
物理的に拘束されているのではない。
見えない糸を何重にも巻きつけられているような感覚だった。
(相手に縛りを課すスキルか)
たぶん動作か言葉が能力発動の鍵になっていた。
無理やり破ることもできそうだが、メイソウがどんな発表をするのか気になる。
ここは大人しく従うことにした。
巨大スクリーンにカメラ目線のハルカの顔がアップで映る。
ハルカはお手本みたいな笑顔で宣言した。
「では今から佐藤キツネに関する暴露配信をしまーす!」
『おお!!』
『へー、まじか』
『完全に意趣返しだわな』
『それよりハルカちゃんのスリーサイズを暴露して』
多種多様な言語が使われるコメント欄の一部に注目すると、いつも通りのノリで安心した。
どれだけが規模が大きくなろうが変わらないものはあるわけだ。
いや、それよりも暴露配信だ。
ハルカは台本らしきものを掲げて大声で読み始める。
「佐藤キツネの本名はバート・スミスでーす! アメリカ出身の元傭兵でーす! 特殊部隊やゲリラ兵として紛争地を渡り歩いていましたー! 捕虜になった後に脱走して、整形してから日本に入国してまーす!」
その後もハルカは僕のプロフィールや細かなエピソードを披露していく。
僕がデビュー前に配信設定で苦戦したことや、刺身定食が少し苦手なこと、好きなテレビ番組も正確に知られていた。
日本の領土に入ってからの事象は、メイソウに網羅されていたらしい。
これは僕の暴露配信という建前ながらも、実際はメイソウの情報収集能力のアピールも含まれているのだろう。




