第92話 真実を告白してみた①
迷宮人間に関する話が終わったところで、リスナーから新たな質問が来た。
『佐藤さんはこれからどうするの?』
「虹田さんの所属組織にお邪魔するつもりです。せっかく向こうから会いに来てくれたのですからねえ。お礼をしないといけないでしょう」
『お礼とは』
『復讐パーティーだ』
『い つ も 通 り』
『たのしみー』
大多数が僕の意図を察している。
もちろん大当たりだ。
この判断が最も盛り上がることを知っている。
ならばそれを実現するのがライバーの役目だろう。
『虹田って公安の上司なんだっけ』
『佐藤は正体とか行き先を知ってるの?』
『迷いがないし、たぶん把握してそう』
『情報網が強すぎる』
『出任せかもよ』
『じゃあお前が教えてくれ』
周囲の風景が住宅街からビル群に変わった。
ぼんやりしていると激突しそうなので、ハンドルを左右に回して回避していく。
衝撃波が発生しているようで、通り過ぎる際に近くのビルの窓が粉々になっていた。
それらの被害を横目に、僕は世間話のように語る。
「ご存じの方も多いと思いますが、僕の配信をきっかけに公安警察と政治家の癒着が発覚しました。常里さんの他にも、武器や人員の貸し出しを受ける政治家は大勢いました。機密情報の共有や政敵の暗殺もあったらしいですね。現在、公安警察は権力者の奴隷という揶揄が浸透しています」
『一時期かなり話題になってた』
『最近は落ち着いたけどね』
『マジで自業自得』
『ネットじゃ未だに議論されてるよ』
『公安最大のスキャンダルだってさ』
『クレームの嵐で責任者が辞任したっけ』
『あの件で公安警察は勢力縮小した。今も組織の正常化とイメージ改善に努めている』
リスナー達は次々と事実を羅列していく。
いずれもこれまでに起きた出来事だ。
さすがにあそこまで派手な問題となると、無視するわけにもいかないだろう。
余談だが、常里さんの件についてテレビはほとんど触れない。
公安警察も言及されず、ネットで取り上げられるくらいだった。
僕が番組をジャックしたことが発端だったというのに、報道されるのは必要以上に削られた話だけだ。
ネットに触れていない人間は、僕の配信映像を何かの映画やドラマと勘違いしているのではないか。
あまりにも不自然なので、おそらく情報統制が敷かれているのだろう。
もっとも、現代でそれをやるには限界がある。
ネットでは様々な憶測が飛び交っているし、証拠や告発も続出していた。
まあ、そういった出来事も時の流れで風化しつつあった。
新たな話題に国民は食いついていくものなのだ。




