第9話 ダンジョンのヤクザと対決してみた②
僕はブランコに乗り移り、前後にゆらゆらと漕ぐ。
その弾みでポケットからスマホが滑り落ちた。
スマホを拾った僕は、それをリスナー達に見せて説明する。
「前回の配信で、闇バイトのリーダーからスマホを貰いましてね。知人にデータ解析を頼んだところ、ヤクザとの繋がりが発覚しました」
僕はシーソーからジャンプして、ひらりと鉄柵に着地する。
そのままバランスを取って仁王立ちとなり、両手を広げたオーバーリアクションで叫ぶ。
「つまり闇バイトのグループは、ヤクザの下請けで薬物の栽培と運搬を行っていたのです!」
『ほうほう』
『黒幕がいたわけか』
『闇が深いな』
『怖くなってきた』
不安がっていたコメント欄の空気が変わり始める。
ドラマチックな陰謀が見えてきたことで乗り気になってきたようだ。
実に素直でやりやすい。
前回以上の盛り上がりを目指しているのだから、序盤から暗くなられては困る。
鉄柵から飛び降りた僕は気分よく本題を進めていく。
「ということで、闇バイトを仕切るヤクザを殺しに行こうと思います」
『また一人でやるの?』
『さすがに無理じゃね』
『多勢に無勢!』
『警察に通報した方がいい』
軌道修正できたと思いきや、やはりネガティブな意見が多い。
ニュースなんかでダンジョン内のヤクザの危険性がよく報道されているからだろう。
配信に対する好奇心はあるものの、その前に良識が働いてしまうらしい。
リスナーの心を掴む難しさを実感しつつ、僕はベンチ裏に隠していたスポーツバッグを引き上げた。
「ご安心ください。この配信のために、闇バイトのダンジョンから武器を持ってきました。せっかくなので紹介しましょう」
僕はスポーツバッグのジッパーを開いて逆さまにする。
そこから出てきたのは大量の銃火器だった。
予備弾の他にも手榴弾や刃物も混ざっており、それらが積み上がる光景はだいぶ物々しい。
僕は銃を手にとって苦笑する。
「ダンジョン発生で銃規制が緩和されたといっても、これはやりすぎですねえ。ただの闇バイトがこの装備を揃えられないという点も、ヤクザとの癒着を示しています」
『うわ』
『すげー』
『戦争でもする気か?』
『魔術武器もあるね』
目ざといリスナーがいたようなので、僕は武器の中から一振りの日本刀を掴み取った。
鞘から少し引き抜いて刃を覗かせる。
「この刀は魔術武器です。鑑定してもらったら、炎属性と防御貫通が付与されていました。アタリですね」
『いいじゃん』
『二種付与か。しかも汎用性が高い』
『レアアイテム?』
『そこまで珍しくないけど便利っちゃ便利』
『最低でも二百万円くらい』
『高すぎ』
魔術武器とは特殊効果を持つアイテムだ。
大半の効果が物理法則を超越しており、使い方次第では格上の敵でも倒せる力を秘める。
ダンジョンで見つけ出すのが主な入手方法だが、スキル持ちが何らかの手段で作製することもできる。
総じて高額な代物であり、世界中に専門のコレクターがいる。
魔術武器のオークションでは億単位の金が動くのも日常茶飯だった。




