第112話 殺戮決戦を始めてみた①
鈴木とアビスが見つめ合う。
両者の威圧感が音を立てて空気を引き絞っていく。
肌にピリピリとした殺意を感じた。
(不味いな。面倒なことになりそうだ)
僕はアビスのもとへ踏み出そうとして、そのまま転倒した。
立ち上がろうとするも、なぜか動けない。
別に重力が増したり、何らかの拘束を受けているわけではなかった。
どれだけ力を込めても微々たるスピードしか出せないのだ。
(殺される前にも食らった技だな……)
僕が困っていると、ハルカがこれ見よがしに歩み寄ってきた。
彼女はビキニに包まれた胸と尻を揺らしながら嘲笑する。
「あなたの周囲の空間を引き延ばしたー! 残念ながら動けませーん! あなたに対する攻撃ではないので耐性や再生能力も無意味でーす!」
「そうですか。じゃあ休んでますね」
僕は抵抗をやめて脱力する。
ダラッっとしているのに身体が一向に倒れないのが面白い。
横になるまでに何時間かかるのだろうか。
それにしても、さすがはメイソウの一員だ。
アップデートした僕にさっそく対応して能力を使ってくるとは。
おかしな格好でムカつく言動をしていても、才能や能力は超一流というわけである。
別にここから逃れる手がないことはないのだが、せっかくなので見守ることにしよう。
鈴木とアビスの直接対決を傍観するのも一興だ。
こうなったらとことん滅茶苦茶にしてもらおうじゃないか。
「この世界にダンジョンマスターは不要です。あなたには死んでもらいます」
そう宣言したアビスが巨大スクリーンに向けた手をゆっくりと握り込む。
次の瞬間、鈴木の頭が破裂した。
タヌキの仮面が血みどろになり、鈴木はぐったりと仰け反ってしまう。
身体は小刻みに痙攣していた。
『死んだ?』
『やったか!?』
『それ生き返るフラグ』
『復活するに三万円』
『じゃあ俺は一億ルピー』
鈴木が無造作に起き上がった。
彼はどこからともなく取り出したタオルで顔を拭うと、愉快そうに笑った。
その際、画面に血飛沫が飛んだ。
『いやー、さすがはメイソウ会長。組織の創設メンバーであり、世界でも五指に入る魔術師というのも伊達じゃないですねえ。まさかこの状況で反撃されるとは思いませんでした。しかも僕のハッキングが届きません。複数の系統でガチガチに対策してますね? いやはや、噂通りの用心深さです』
「…………」
無言のアビスは何度も指を開閉させたり、特定の仕草を繰り返す。
そのたびに鈴木が血反吐を噴き、首がねじ曲がり、内側から融解しているが、まったく苦しそうな様子がない。
凄惨な姿になりながらも、鈴木は嬉しそうにアビスを称賛し続けた。




