96:おれ以外の男の名を口にするのは禁止
幻ではない。確かにここにいる。
「もしかして今日、卒業式だから、一時的に天界へ戻ってきたの……?」
「違う! アリエル。おれは復権したんだよ。天界に戻ってきた!」
その瞬間、ウリエルの背に美しく強靭な白い翼が広げられた。周囲にいた天使が眩しそうにその翼を見ている。
私も驚きで目を見開いた。
「ミカエルがわざわざ神の家までやってきた。そして『大天使としての復権を認める。ウリエル』って言われてさ。それで、今日がアリエルの卒業式だと教えてくれた。でもひどいんだよ。もう終わる時間が近いって。着替えている時間なんてなかった。だから地上の服のまま、天界へ戻った」
「そう、なんだ……!」
服なんてどうでもよかった。復権できた。
その事実で胸がいっぱいになった。
「おかえり、ウリエル」
私はその喜びをただ伝えたくて、思いっきりその体に抱きつく。
「ただいま、アリエル」
ウリエルはそんな私を強く抱きしめた。
◇
「アリエルのそのマントは、おれの瞳に合わせて仕立てたのか?」
風を受けはためくマントを見て、ウリエルはサファイアブルーの瞳を嬉しそうに細めている。
「うん。ウリエルは卒業式には来られないと思っていたから。天界に戻ったら、このマントで卒業式に出たんだよ、って見せるつもりだったの」
「そうか。でもちゃんと間に合った」
「ギリギリだったけどね」
そこで言葉を切り、私はミカエル様のことを思い出す。
「エルサがね、記念に絵を描いてもらおうって提案してくれたの。ガブリエルのお抱え画家に頼んで。それで昨日、ガブリエルの宮殿に行ったのね。そこでこのマントと花冠をつけて、画家はそれをスケッチして。それが終わった時、たまたまミカエル様に会えたの」
「それで」
「ミカエル様に突然、こう言われたの。『間もなく刻限だ、アリエル』って。なんのこと分からなかったけど、ウリエルが復権することを教えてくれていたのかな」
ウリエルは綺麗な笑顔を浮かべた。
「その通りだよ、アリエル。ミカエルはおれの復権のタイミングが分かっていた。だからアリエルに教えてくれた。でもそんな機密事項、そう簡単に話していいことではない。だからそんなふわっとした言い方になったのだろうな」
「そっか……。ミカエル様、優しいね」
するとウリエルは少し膨れた顔をしている。
「アリエル、今日一日はおれ以外の男の名前を口にするな。それに本当に優しいなら、卒業式が始まる前に復権させるはずだ」
「もう、ウリエルってば」
その後はアクラシエルや柚乃の卒業後の進路、私は香油のお店の店員の『役割』を担うことになったと話した。
「そうか。三人とも学校を卒業したのに、神官にもならなければ、大天使の宮殿への宮仕えも担わないとはな。学校運営に問題があったか? しかも三人揃って、大天使と婚姻関係を結ぶとは。まるで花嫁花婿養成学校だな」
「……ウリエル、私は婚儀まだだよ。それにアクラシエルもまだ婚約しただけだよ」
「もう結んだも同然だろう、おれ達は。だって神殿はすぐそこだから」
ウリエルはそう言うなり高度を落とす。
「ほら、アリエル、早く」
「ちょ、待ってウリエル」
私はウリエルを追って高度を下げた。
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次回更新タイトルは「遂に、キスを……してしまった!」です。
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