94:まだまだ新婚気分冷めやらぬ
この日、私は明日の卒業式に備え、手に入れたばかりのマントを手に、ガブリエルの宮殿を訪れていた。
卒業式の日は、マントを着用し、頭に女性の天使はローズマリーの花冠を、男性の天使はオリーブの葉の冠をかぶる。
今日は柚乃と二人、マントと花冠をつけ、その姿を画家にスケッチしてもらうことになっていた。
「カナ、こっち」
柚乃に手招かれ、初めてサロンのある建物の中に入った。
広い部屋では、画家が思い思いの場所でキャンバスに向かっている。作家は巨大なテーブルに距離をあけて座り、一心不乱に羽ペンを走らせていた。
私達の方に手を振る画家の元へ向かうと、柚乃と私はそれぞれマントをつける。
柚乃のマントは、ガブリエルの瞳と同じ、美しいエメラルドグリーン。
私のマントは……いつか天界に戻ったウリエルに見せようと思い、サファイアブルーの生地で仕立ててもらっている。
ローズマリーの花冠をつけ、柚乃は用意されていた椅子に座り、私はそのそばに立つ。
途中で休憩などを挟みながら、みっちり四時間、画家のスケッチに付き合った。それを終え、帰宅しようと建物を出たところで、ガブリエルと回廊を歩く、ミカエル様を見つけた。
「ガブリエル!」
柚乃が声をあげると、ガブリエルはすぐに振り返り、あの優美な笑顔を柚乃に向ける。足早に駆け寄る柚乃に答えるように、ガブリエルも走り出す。
二人は回廊に取り囲まれた芝の上で、熱く抱き合った。熱い抱擁と口づけをする様子は、まだまだ新婚気分冷めやらぬ、という感じだ。
「アリエル」
不意に穏やかで優しい声で名前を呼ばれ、振り返るとミカエル様がいた。
「明日は卒業式か。早いものだね」
「はい。おかげさまで、ミカエル様」
「卒業後の『役割』は、決まっているのかい?」
私は静かに頷いて答える。
「街にある、香油の専門店の店員の『役割』を、担うことになりました」
今日の私は、自分の意志で話すことができていた。
「そうか。神官にはならないのだね」
「……いつかは神官の『役割』を担うこともあるかもしれませんが、当面は……」
ミカエル様は「そうか」と頷くと、あの宇宙を思わせる瞳で私を見る。
「間もなく刻限だ、アリエル」
それだけ言うと、不意にその姿が消えてしまった。
「アリエル!」
柚乃に呼ばれ、私は声の方を振り返る。
「ガブリエルも一緒に送ってくれるって」
「あ、うん、分かった」
ミカエル様が言っていた刻限って……。
私は首を傾げつつ、柚乃の方へ歩いて行った。
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次回更新タイトルは「卒業式」です。
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