74:あまりにも衝撃的な情報
トイレから戻り、30分ぐらいすると、柚乃が動いた。
ガブリエルに何か耳打ちをする。
するとガブリエルはミカエル様に「ちょっと席をはずす」と言い、エルサを伴い、席を立つ。
二人が席を立った直後は、控えていた天使がミカエル様の飲み物を注いだり、空になった皿を下げたりで、間がもっていった。
だがそれもほんの一瞬のことで、すぐに間がもたなくなる。
何か話さないとウリエルの件について聞かれると分かったが、ミカエル様を前にすると、気軽に口を開くなんてできなかった。
緊張とは違う。
気持ちは不思議なことに、とても落ち着いている。
その時だった。
「アリエル」
とても穏やかで優しい声で名前を呼ばれ、胸がキュンとした。
だがそのキュンはすぐに収まり、私は冷静に「はい」と返事をしている。
「ウリエルの件を、聞かせてもらっていいか?」
「もちろんです」
「ウリエルは君と一緒にいる時に堕天したのかい?」
「はい」
「ウリエルがなぜ、何をして堕天することになったのか、アリエル、君は知っているのだね?」
「はい」
もう口が勝手に受け答えをしている感じだ。
その後も問われるままに答えている。
「なるほど。ではウリエルは君の香油を使ったもみほぐしというものに満足し、代わりに何か願いを叶えると申し出たわけか。そこで君は自分に前世の記憶があることを打ち明け、マティアスとソフィアという天使が前世と同じように結ばれることを願い、二人に前世の記憶を見せるよう、ウリエルに頼んだのだね。そしてウリエルは、二人に前世の記憶を見せることが禁忌の力を使うことだと分かっていた。だが地上で沢山の女性と快楽を楽しむから、堕天することを厭わないと言っていたのか」
「はい。その通りです、ミカエル様」
もはや自分が受け答えをしているとは思えない。
言葉が私の意志とは無関係に、紡がれている。
「まったく、ウリエルはなぜそんなことを君に言ったのだろうね」
ミカエル様がため息をつく。
私はミカエル様の「なぜ」が、何に対するなぜか分からず、首を傾げる。
するとミカエル様が私を見た。
その瞬間、自然と口が開く。
「ミカエル様のなぜが、何に対するなぜか分からないのですが」
質問に答えるだけでなく、質問さえも、私の意志とは無関係に口から発せられている。
「それはウリエルが『地上で女性と快楽を楽しむ』なんて言ったことと、『堕天することを厭わない』と言ったことだよ」
「……ウリエルは過去に堕天したことがあり、地上に沢山の女性の知り合いがいますよね? ウリエルは女性経験が豊富ですよね?」
ミカエル様は、じっと私をみて尋ねる。
「君の前世の記憶では、ウリエルはそんなことになっているのかい?」
「はい」
「どうやら君は、どこか別の世界からこの天界に召されたのかもしれないね。まあ、そういうこともあるのだろう。……アリエル、この世界にいるウリエルは、女性に対し、ふしだらではない。ウリエルは婚姻関係を結んだ相手はいない。それに過去に一度も堕天なんてしたことがない」
それは驚きだったので、「そうなのですか?」と思わず声を出してしまう。
明確に、自分の意思で発した言葉だ。
ミカエル様はしばらく黙り込み、ゆっくり話し出す。
「……ウリエルは君の願いを叶えたいと思った。だがそれを叶えれば、自分が堕天することは分かっていた。そして自分が堕天すると分かれば、君が責任を感じ、申し訳ないと思うと考えたのかもしれない。君に罪悪感を覚えさせないよう、あえて堕天することも厭わないという態度をとった。堕天し、地上で楽しむつもりであると思いこませた」
それはあまりにも衝撃的な情報で、私は頭の中が真っ白になった。
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次回更新タイトルは「唐突にあの時の感情がよみがえった」です。
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